※本メディアアラートは、2026年7月16日にオーストリア・プレムシュテッテンおよびドイツ・ミュンヘンで発表したブログの抄訳版です。
ヒューマノイドロボットが人間のような視覚・触覚を実現
ヒューマノイドロボットの時代が、到来した。
そう断言できるのは、大手テクノロジー企業がSNS向けにロボットを踊らせたり、人間の動きを真似させたりするデモンストレーションを披露しているからではない。そうした映像は話題性を狙った演出に過ぎない。実際には、ヒューマノイドロボットが現実の社会で果たす役割やその進化の姿は、はるかに興味深く、大きな可能性を秘めている。
ヒューマノイドロボットへの関心が世界的に高まっている理由は、AIによって初めて実現されたロボットの技術能力(※1)と、機械ではなく人間を前提に設計された環境における自動化(※2)ニーズとの間に、新たな接点が生まれたためである。
ヒューマノイドロボットとして機能するためには、新しいロボットは人間の持つ多くの特性を備える必要がある。
もちろん、そのためには人間に近い骨格構造を持ち、二足歩行ができることが必要である。しかし、それだけでは十分ではない。真に実用的なヒューマノイドロボットには、人間のように振る舞い、人間に近い触覚や視覚を備え、人と同じように環境の中を移動できる能力が求められる。さらに、人との感情的なつながりを築くことも重要な要素となる。
そして、人間のような感覚をヒューマノイドロボットに持たせるという点において、ams OSRAMのデジタルフォトニクス技術が重要な役割を果たす。Yole Groupの「2026 Market and Technology Trends」レポートによると、この“感覚の覚醒(sensory awakening)”は、ヒューマノイドロボット市場の成長を支える重要な要因の一つとされている。同市場は、2025年の6億ドル規模から、2035年には510億ドル規模へと拡大すると予測されている。同レポートによれば、ヒューマノイドロボットの導入が最も早く進んでいるのは産業および物流分野である。また、店舗での案内業務などのプロフェッショナルサービス分野や、原子力発電所の点検といった危険な環境においても活用が始まっている。一方で、一般消費者向けの用途は、ロボットにとって最後のフロンティアになるとみられており、Yole Groupは、「人とロボットの高度な相互作用が求められる場面では、ヒューマノイドロボットが安定的かつ予測可能に動作する能力を、さらに向上させる必要がある」と指摘している。そのため、人間と自然に関わりながら安全かつ円滑に行動するための高度な知覚能力やセンシング技術が、今後のヒューマノイドロボットの普及を左右する重要な鍵となる。
人間ならではの強み:器用さ、機動力、そして感覚能力
ロボットによる自動化は、工場、倉庫、農場などの分野において、生産性と効率性の大幅な向上をもたらしてきた。こうした環境は、自動搬送車(AGV)に代表される移動型ロボットの運用に適している。床面は平坦で、作業エリアは人とロボットで明確に区分されており、自動化の対象もロボットに特化して設計された作業に限定されている。
しかし、この従来型のロボット技術は、人間の活動領域の多くに浸透できていない。その理由は、住宅や病院をはじめとする多くの空間が、人間の利用を前提に設計されており、車輪で移動する機械向けには作られていないためである。こうした空間で自動化を実現するには、ロボットは次のような能力を備える必要がある。
● 階段や段差を安全に昇降できること。
● 人や家具など多くの物体が存在する環境の中を、安全に移動できること。例えば、人のすぐ隣に立つ際に相手へ不快感を与えない適切な距離を保つことや、人に触れる際に強すぎず弱すぎない力加減を判断することは、ロボットにとって極めて高度な課題となる。
● 人間向けに設計された工具や物品を扱えること。例えば、引き出しを開けるという一見単純な動作であっても、高度なセンシング能力と精密な運動制御能力の組み合わせが求められる。
ヒューマノイドロボットのビジョンは、このような本質的に人間のために作られた空間の中で活動し、清掃、介護・ケア、資材運搬などの分野において、自動化のメリットを提供することにある。
AIと機械学習の進歩により、このビジョンはいま現実のものになりつつある。ヒューマノイドロボットは初めて、物体を認識し、複雑な作業に関する指示を理解して実行し、自然言語によるコミュニケーションに対応できる認知能力を獲得しつつある。
つまり、AIはヒューマノイドロボットに人間のような「知能」を与える。一方で、光学技術はロボットが人間の環境の中で効果的に機能し、人々に受け入れられる自然な形で行動することを可能にする。
高度なセンシングとコミュニケーションを実現するデジタルフォトニクス
ヒューマノイドロボットの移動性能(※3)については、ダンスを披露するロボットの動画が示すように、すでに大きな進歩を遂げている。しかし、ヒューマノイドロボットには、単に何もないステージ上を動き回る能力だけでは十分ではない。実際に社会の中で役立つ仕事を担うためには、人と共存する混雑した環境で安全に行動し、人間にとっては自然で簡単な作業をこなせなければならない。例えば、キッチンテーブルの上に置かれた卵を割ることなく持ち上げるといった動作である。こうした作業は人間にとっては容易だが、機械にとっては高度な技術的課題(※4)となる。
そのため、ヒューマノイドロボットには次のような能力が求められる。
● 移動・ナビゲーション
● 感じること
● 見ること
● コミュニケーションをとること
● 行動すること
こうした課題の解決において重要な役割を果たすのが、ams OSRAMが強みとするデジタルフォトニクス技術を搭載したインテリジェント光学チップである。これらのチップは、従来のビデオカメラやディスプレイスクリーンといった一般的なコンポーネントでは実現できない独自の機能を提供するとともに、既存のシステムの性能を補完・強化する役割も担う。
ヒューマノイドロボットの自律移動(ナビゲーション)においては、直接飛行時間測定方式(dToF:Direct Time-of-Flight)の赤外線(IR)測距センサが、周囲の物体までの距離を高精度に測定し、人や障害物との衝突回避を可能にする。最新のTMF8829 dToFセンサ(※5)は、48×32ピクセルの距離情報データを生成し、ロボット周辺空間の“画像”を作成する。この解像度は、椅子やテーブル、人などの一般的な対象物を識別するのに十分な性能を備えている。
さらに、この測距技術の最新活用事例では、dToFセンサから得られる距離情報をビジョンカメラの映像に重ね合わせ、そのデータをAIが解析する。AIは可視画像内の物体を認識できるため、ロボットは周囲環境の3Dマップを生成し、存在する物体を識別しながら、人やペットとの適切な距離を保って安全に移動することができる。
また、dToFセンサは、ロボットによる安全な物体操作の実現にも貢献する。dToFセンサはビジョンカメラに比べて低コストであるため、ロボットの手や指の複数箇所に配置することが可能である。これにより、対象物や人との距離をリアルタイムで測定し、強力な電動モーターで駆動される腕や手が人や周囲の物体に接触・衝突することを防ぐ。
触覚は、人間の体験を構成する極めて重要な要素の一つである。ヒューマノイドロボットにおいては、触覚センシングによって、人間の感覚を超えるレベルの認識能力と応答性を実現できる可能性がある。
将来のヒューマノイドロボットが担うと期待される多くの自動化作業には、対象物に対して力を精密に制御しながら加える能力が求められる。例えば食品の調理や取り扱いでは、力が強すぎても弱すぎても適切な作業はできない。こうした用途に向けて、新しい光学式フォースセンサは小型かつ堅牢なソリューションを提供する。超小型の完全統合型センサモジュールをロボットの「皮膚」に相当する表面の直下に配置することで、わずか1ミクロン程度の微細な変形も検出でき、加えられた力を高精度に測定する。この光学式フォースセンサは、十分な変形量が得られ、近赤外線(NIR)を反射する素材であれば、金属を含むさまざまな表面材料に適用することが可能である。
さらに、一部のプラスチックなど半透明の素材の裏側に設置した場合には、最大30cm離れた位置にある物体の接近や簡単なジェスチャーを認識することもできる。力の測定方法として一般的な抵抗式、静電容量式、圧電式の技術と比較しても、光学方式はより高い堅牢性と信頼性を備え、システムへの組み込みも容易である。
また、センサと表面材料との間に電気的接続を必要としないため、安全性にも優れている。電磁干渉(EMI)や静電気放電(ESD)の影響を受けにくく、安定した動作を実現する。光学式フォースセンサは小型で拡張性にも優れていることから、例えばヒューマノイドロボットのすべての指に組み込むことが可能である。これにより、触覚センシング性能が大幅に向上し、より繊細で安全な物体操作を実現できる。
さらに、ロボットメーカーはこうしたセンサを活用することで、ボタンなどの操作インターフェースに革新的で洗練されたデザインを採用することも可能になる。光学式の測定原理により、表面を容易に衛生管理できるほか、過酷な環境下や手袋を装着した状態でも確実に操作できるため、高い実用性を発揮する。
視覚は、視覚を持つ人間が世界を認識するうえで最も重要な感覚である。ヒューマノイドロボットにおいても同様に、「見る」能力に加え、「見られる」能力も重要になる。
ロボットが周囲の世界を認識するための視覚機能は主にカメラによって実現されるが、その性能を最大限に引き出すためには適切な照明が欠かせない。フォトニクス分野のリーディングカンパニーであるams OSRAMは、可視光領域において業界屈指の幅広いLEDポートフォリオを提供しており、白色LEDからカラーLEDまで、多様な波長とパッケージオプションを取り揃えている。さらに、周囲の明るさを検知する環境光センサにより、カメラの動作を現場の照明条件に最適化することが可能である。
このように、ヒューマノイドロボットの視覚システムは、人間の視覚と類似した仕組みで機能する。しかし、特殊な赤外線(IR)LEDを活用することで、その視覚能力は人間の目を超えるレベルへと拡張できる。例えば、構造化光(Structured Light)(※6)は、対象物にドットパターンを投影し、その形状や輪郭を高精度に把握する。この技術により、ロボットは床面などのごくわずかな凹凸や変形まで検知することができる。こうした情報は、二足歩行ロボットが不整地や段差のある場所でもバランスを維持しながら安全に移動するために役立つ。
また、ヒューマノイドロボットは、人間には見えない情報を認識する能力も備えることができる。ams OSRAMのアクティブ分光センシング技術(※7)は、低コストの発光素子と受光素子を組み合わせることで、用途に応じた高度なスペクトル解析を実現する。
スペクトルセンシングとは、可視光や赤外光を照射した際に材料ごとに異なる光の反射特性を分析し、その物質を識別する技術である。例えば、ヒューマノイドロボットは布地などの素材構成を分析したり、人間の目には見えない空気中の有害ガスや汚染物質を検出したりすることが可能になる。
しかし、視覚の力はロボット自身のためだけに使われるものではない。ロボットの周囲にいる人々に対しても重要な役割を果たす。このため、ams OSRAMの幅広いLED製品群はヒューマノイドロボット市場において大きな価値を提供する。白色およびカラーLEDを活用することで、ロボットは作業状況を示す情報表示や、立ち入り禁止エリアを知らせる警告表示など、多様な視覚シグナルを発信することができる。こうした光学シグナルの統合制御を実現するのが、オープンシステムプロトコル(Open System Protocol(OSP))(※8)である。OSPは複数のLEDや各種デバイスを接続・制御するための標準インターフェースであり、対応LEDドライバーと組み合わせることで柔軟なシステム構築を可能にする。
さらに、最新のALIYOS(TM)技術(※9)によって、光学シグナルをヒューマノイドロボットの“皮膚”そのものに組み込むこともできる。この「Light Out of Nowhere(どこからともなく現れる光)」と呼ばれる超薄型LEDフィルム技術では、発光素子をロボット表面と一体化させ、ロボットの外装そのものを発光面として機能させることが可能となる。
可視光LEDは、ロボットが周囲を認識したり、人から認識されたりするためだけのものではない。ヒューマノイドロボットにとって重要なコミュニケーション手段としても機能する。最もシンプルな例としては、床面に色付きの光の帯を投影し、ロボットがこれから進む経路を周囲の人々に知らせることが挙げられる。
さらに、最新のマイクロLED技術は、光によるコミュニケーションの可能性を大きく広げる。EVIYOS(TM)プラットフォーム(※10)は、数千個に及ぶマイクロLEDを個別に制御できるシステムである。マイクロLEDの各ピクセルを活用することで、ロボットは近くの床面や壁面に文字、アイコン、画像、各種シンボルなどを投影し、人々に対してより豊かな情報を伝達できるようになる。
また、カラーLEDは言葉を使わないノンバーバルコミュニケーションにも活用される。例えば、ロボットがミスをした際に顔部分を赤く発光させることで、「恥ずかしさ」や「申し訳なさ」といった感情を表現することが可能となる。ヒューマノイドロボットの普及における重要な課題の一つは、人々が家庭や職場でロボットを自然に受け入れられるようにすることである。そのためには、実用性や経済的メリットだけでなく、人とロボットの間に親近感や信頼感といった感情的なつながりを生み出せるかどうかも重要な要素になると考えられる。
人間らしさを追求するヒューマノイドロボット
ヒューマノイドロボットの普及を左右するのは、工場やオフィス、家庭において人の作業を代替・補完する自動化能力である。しかし、その導入の成否は機能面だけで決まるものではない。人間の習慣や価値観に寄り添いながら移動し、行動し、コミュニケーションできるかどうかが、ヒューマノイドロボットが社会に広く受け入れられるための重要な鍵となる。
光学センシングおよび光学シグナリング技術は、ヒューマノイドロボットの社会的受容性を高めるうえで大きな役割を果たす。これまでのロボット自動化の導入では、「仕事を奪われるのではないか」という不安や反発から、人がロボットとの協働を拒んだり、その稼働を妨げたりする事例も報告されている。こうした反応の背景には、人とのつながりを感じられない無機質な機械に対する心理的な抵抗感がある。
ヒューマノイドロボットは、その設計に人間らしい要素を取り入れることで、この課題を克服できる可能性がある。特に、光によって伝えられる情報や感情表現は、人とロボットの距離を縮め、両者の間に自然な信頼関係を築くうえで重要な役割を担う。
ams OSRAMは、光を高度かつ知的に制御するデジタルフォトニクス技術を通じて、ヒューマノイドロボットメーカーを支援する。ams OSRAMのソリューションは、ロボットの認識・判断・コミュニケーション能力を向上させるだけでなく、人々に受け入れられやすい、人間中心のデザインの実現にも貢献する。
(※1) (リンク »)
(※2) (リンク »)
(※3) (リンク »)
(※4) (リンク »)
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(※6) (リンク »)
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(※8) (リンク »)
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ams OSRAMについて
ams OSRAM Group(SIX:AMS)は、革新的な光とセンサソリューションのグローバルリーダーです。デジタルフォトニクスのスペシャリストとして、優れたエンジニアリング能力と最先端のグローバルな製造能力を兼ね備え、お客様にデジタル照明やセンシングテクノロジーの多彩なポートフォリオを提供しています。
「光の力を感じよう」-当社の成功は、光が持つ可能性に対する深い理解を基盤としてきました。120年にわたり、自動車、工業生産、医療、コンシューマー向け電子機器などの市場に変革をもたらすイノベーションを創出してきました。OSRAMブランドの記念となる本年には、世界で約18,500人の従業員が、スマートモビリティ、人工知能、拡張現実、スマートヘルス、ロボティクスといった社会のメガトレンドに沿った先駆的なソリューションの開発に注力しています。これは、約12,000件の特許の取得・出願に反映されています。オーストリアのプレムシュテッテン/グラーツに本社を置き、ドイツ・ミュンヘンに共同の本社を設置しています。当グループは2025年に33億ユーロの収益を達成しており、ams-OSRAM AGは、スイス証券取引所に上場しています(ISIN:AT0000A3EPA4)。
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amsとOSRAMは、ams-OSRAM AGの登録商標です。また、当社製品およびサービスの多くはams OSRAM Groupの商標または登録商標です。ここで記載されるその他全ての企業名および製品名は、各所有者の商標または登録商標である場合があります。
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