IaaS、従来のPaaSとの決定的な違い
Salesforce1 Platformは、確かに、モバイル・アプリケーションの開発工数を劇的に短縮することが可能だ。ただしそれは、このプラットフォームの1つの側面にすぎない。Salesforce1 Platformは、モバイル・アプリケーションを含むビジネス・システムの開発/更新のプロセスを、本当の意味で「アジャイル」なものへと変革するプラットフォーム・サービスと言えるのである。
サービス化されたプラットフォームという点では、Salesforce1 Platformは、一般的なIaaSやPaaSと似たところがある。しかし、これらのサービスとSalesforce1 Platformは、機能モジュールの構成も目指すところも異なる。
例えば、アマゾン「AWS」に代表されるIaaSでは、極論すれば、物理的なサーバとストレージのプールが、サービスとして提供されているにすぎない。データベースにせよ、アプリケーション・サーバにせよ、インフラより上のレイヤーのものはすべて利用者側が用意して保守・管理を行う。開発のプロセスについても特に従来から変化はなく、ハードウェアを資産として調達したり、キャパシティ・プラニングをしたりする手間は排除されるが、それで開発の工数が劇的に減るわけではない。
対する、Salesforce1 Platformでは開発に必要なリソースがすべてサービスとして提供されており、「クリック」ベース、あるいは、「ドラッグ&ドロップ」ベースで、さまざまなアプリケーションが開発ができる。つまり、IaaS/PaaSが、ITの調達や運用管理のオペレーションを合理化するだけのサービスとするならば、Salesforce1 Platformは、「ビジネス・アイデアをすばやくカタチにするためのプラットフォーム」(伊藤氏)というわけだ。
確かに、IT部門に本来期待されている役割は、ITでビジネスを効率化したり、強化したりすることであろう。その点で、ITの管理や保守に一切煩われずに、ビジネス・イノベーションに集中することが大切となる。
「Salesforce1 Platformはそれを実現するプラットフォーム。これがあれば、ビジネス現場の要求をすぐにカタチにすることができる。しかも、Salesforce1 Platformを用いれば、ITの専門家ではないビジネス現場のスタッフがアプリケーションにちょっとした変更や改良を加えることもできるし、その逆に、ITのプロが高度な機能をプログラミングして追加していくこともできる」と、セールスフォースのマーケティング本部ディベロッパープログラムマネージャーの岡本充洋氏は説く。
実際、PaaSの長所について市場の理解も着実に進んでいるようだ。ZDNet JapanがIDC Japanの分析結果として4月に報じた記事によれば、2013年上半期の国内PaaS市場規模は、前年同期比で56%あまりの伸張となった。この期間のベンダー別シェアは、セールスフォース・ドットコムが1位。アマゾンが2位だったという。