中堅・中小企業の業務システム購入先のサービス/サポート評価調査報告
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
株式会社ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター1705:代表伊嶋謙ニ03-5244-6691 URL:http//www.norkresearch.co.jp)は、2013年の中堅・中小企業における業務システム購入先のサービス/サポートに関する最新の評価調査結果を発表した。本リリースは『2013年版 中堅・中小企業の業務システム購入先のサービス/サポート評価レポート』のダイジェストである。
バージョンアップ負担などに留意しつつ、個別要件対応と商材拡大を進めることが重要
▼業務システム購入先シェアは大塚商会が首位を堅持、4位以下は僅差の順位変動が続く
▼購入対象となるIT商材は徐々に変化、年商帯による細かい傾向差を踏まえることが重要
▼システム構築評価では個別カスタマイズへの満足度が高い一方で維持コスト負担が増加
▼バージョンアップ時の負担に関するユーザ評価差は販社/SIerの業態だけでは決まらない
▼委託先/購入先が急に分散する兆候はないが、今後の中長期的な推移には留意が必要
対象企業: 日本全国/全業種の500億円未満の中堅・中小企業
対象職責: 以下のいずれかの権限を持つ社員
「情報システムの導入や運用/管理の作業を担当している」
「情報システムに関する製品/サービスの選定または決裁の権限を有している」
調査実施時期: 2013年7月
有効回答件数: 1400社(有効回答件数)
※調査対象の詳しい情報については右記URLを参照 (リンク »)
▼業務システム購入先シェアは大塚商会が首位を堅持、4位以下は僅差の順位変動が続く
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、『過去三年以内に業務システムの委託/購入を行った販社/SIer」(複数回答可)』を尋ねた結果のうち、回答数が多かった販社/SIerに関する回答割合をプロットしたものである。
※全ての販社/SIer選択肢については本リリース末尾の【備考1】を参照
2012年の調査では大塚商会、NTTデータ、リコー、富士ゼロックス、オービック、富士通、日本IBM、富士通マーケティング、キヤノンマーケティングジャパン、日立システムズが上位10社に挙げられていた。2013年は大塚商会、NTTデータ、リコー、富士ゼロックス、オービック、富士通システムズ・イースト、富士通マーケティング、日本IBM、富士通、キヤノンマーケティングジャパンが上位10社として挙げられている。大塚商会は2012年に続いて唯一10%を超えるシェアで首位を堅持しており、NTTデータとリコーが2位、3位で続く状況に変化はない。
NTTデータは大企業向けのシステムインテグレーションが主な収益だが、中小企業向けの各種サービスなども展開しており、社数ベースの委託先/購入先においてはシェア2位となっている。
リコーは複合機販売を通じて獲得してきた顧客に対し「NETBegin BBパック」などの多様なサービスを提供することでシェア3位の位置に付けている。
4位以下については2012年と2013年で順位が大きく変動しているが、シェア数値自体が僅差である点に注意する必要がある。
▼購入対象となるIT商材は徐々に変化、年商帯による細かい傾向差を踏まえることが重要
本リリースの元となる調査レポートでは『年商500億円未満の中堅・中小企業が業務システムの委託先/購入先からどのような種類のIT商材を多く購入しているのか?』またそれらの経年変化がどうなっているのか?についても詳細な集計/分析を行っている。
調査レポート内では年商500億円未満の中堅・中小企業を7つの年商区分に分けて集計/分析を行っているが、以下ではそのうちの年商10億円以上~20億円未満および年商20億円以上~50億円における経年変化をサンプルとして掲載している。
※IT商材の詳細な区分としてどのようなものがあるかについては本リリース末尾の【備考2】を参照
購入対象となるIT商材は徐々に変化、年商帯による細かい傾向差を踏まえることが重要
以下のグラフは年商10億円以上~20億円未満の企業において『最も主要な業務システムの委託先/購入先からどのような種類のIT商材を多く購入しているのか?』の経年変化をプロットしたものである。
2012年~2013年の変化を見ると、「運用管理系システム」「ハウジング/ホスティング」「IT運用/保守アウトソーシング」といった項目において増加が見られる。この年商帯では年商10億円未満と比べると管理/運用すべきIT資産が多い一方で、その作業を担う人材が不足している。それを補うために主要な委託先/購入先から購入したIT商材を対象に、同じく主要な委託先/購入先が提供するハウジング/ホスティングやIT運用/保守アウトソーシングを活用するケースがあると考えられる。
以下のグラフは年商20億円以上~50億円未満の企業において『最も主要な業務システムの委託先/購入先からどのような種類のIT商材を多く購入しているのか?』の経年変化をプロットしたものである。
2012年~2013年の変化を見ると、「運用管理系システム」以外はいずれも減少している。最も主要な委託先/購入先は重要な業務システムの提供元といった観点では有利な立場にあるが、一方で既存IT資産の現状を維持する役割を担う相手として位置づけられてしまうという面もある。そのため新たなIT活用の提案を行わない限り、現状維持のみでは更新サイクルだけが伸びていき、中長期的には縮小傾向を示すことになる。増加が見られる「運用管理系システム」を切り口として現状システムの課題をIT運用管理レベルから業務レベルまで引き上げて新たな提案につなげるなどの工夫が必要と考えられる。
このように同じ中堅・中小企業であっても、隣接する年商帯によって業務システムの委託先/購入先に求めるIT商材は大きく異なってくる。これらの傾向差を理解した上で、企業規模に即したIT活用提案を行っていくことが重要となってくる。
▼システム構築評価では個別カスタマイズへの満足度が高い一方で維持コスト負担が増加
本リリースの元となる調査レポートでは『提案/販売時の活動』『金額提示』『システム構築力』『保守/サポート』といった業務システムの活用訴求における様々な場面について、ユーザ企業の視点から見た評価結果を集計/分析している。
※上記の4つの視点において、それぞれ具体的にどのような評価項目があるかについては本リリース末尾の【備考3】を参照
4つの視点それぞれにおいて、評価項目を「満足度が高い事柄」と「不満度が高い事柄」の2つのグループに分け、それぞれについて年商別での傾向差があるか?2012年~2013年にかけての変化はどうなっているか?などを分析している。
以下では『システム構築力』に関し、最も主要な委託先/購入先に対するユーザ企業による評価結果の一部をサンプルとして掲載している。(「満足度が高い事柄」については年商別傾向、「不満度が高い事柄」については経年変化を例示している)以下のグラフは「システム構築力」について満足度が高い事柄を尋ねた結果を年商別に集計したものである。
「自社が望む機能については個別カスタマイズで柔軟かつ迅速に対応してくれる」という項目の回答割合は年商50億円以上~100億円未満の中堅下位企業層で最も高い。基幹系パッケージなどの個別カスタマイズは中堅下位企業層でも実は多く、販社/SIerがそれに積極的に対処している状況がうかがえる。しかし、パッケージを個別カスタマイズすることは維持/管理のコストを押し上げている大きな要因の一つでもある。販社/SIerとしては初期の要件充足だけでなく、パッケージのバージョンアップ時に発生するコストも含めた個別カスタマイズ提案を行っていくことが重要である。
以下のグラフは「システム構築力」について不満度が高い事柄を尋ねた結果について、2012年~2013年にかけての変化を表したものである。
「自社が望む機能を個別カスタマイズで実現しようとしても制限が多く、時間もかかる」という項目の回答割合が減少している一方で、「個別のカスタマイズ費用については他社や他製品と比べると割高である」および「製品がバージョンアップした時に個別カスタマイズの反映に費用がかかる」といった項目の回答割合は増加している。
個別カスタマイズの質については不満度が改善しているが、その一方で費用やバージョンアップ時の負担に関する不満度は高まっていることになる。先に述べたように要件の充足だけでなく、バージョンアップなど先々のコスト負担も考慮した提案の重要性があらためて確認できる。
▼バージョンアップ時の負担に関するユーザ評価差は販社/SIerの業態だけでは決まらない
以下のグラフは「システム構築力」に関する評価のうち、「個別カスタマイズとバージョンアップの関係」といった観点について最も主要な委託先/購入先として多く挙げられた販社/SIer別の集計結果を表したものである。(ただし、対象サンプル件数が少ない場合には参考値となる点に注意する必要がある)この観点は満足度が高い事柄においては「製品がバージョンアップした時でも個別カスタマイズ部分はそのまま流用できる」といった項目として選択肢に組み込まれており、不満度が高い事柄においては「製品がバージョンアップした時は個別カスタマイズ部分に対応作業が必要となる」という項目の選択肢として組み込まれている。 満足度が高い事柄の回答割合が高く(=青色の帯が長く)、不満度が高い事柄の回答割合が低い(=赤色の帯が短い)といった状態が理想的といえる。
システムインテグレーションを主体とする同じ業態であっても評価が分かれていることから、この結果を「ハードウェアなどの販売を主体とする販社系か、それともシステム構築を主体とするシステムインテグレーション系か」などといった業態の違いだけで説明することは難しい。また、複数のパッケージを組み合わせた場合はそれぞれが個別のバージョンアップサイクルを持つため、この観点での評価がさらに厳しくなりやすい。バージョンアップ時の負担も考慮した個別カスタマイズの提案が重要であることは既に述べた通りだが、その点でのユーザ評価はシェア上位の販社/SIerの間でも違いがあることがわかる。
このようにユーザ企業による評価結果を俯瞰する際には販社/SIerの業態だけでなく、主要な顧客となるユーザ企業の規模や業種、システムの種別など様々な観点を考慮に入れておく必要がある。
▼委託先/購入先が急に分散する兆候はないが、今後の中長期的な推移には留意が必要
クラウドやスマートデバイスといった新たなIT商材が登場したことによって、今後はIT商材の委託先/購入先が分散化する可能性も考えられる。そのため、『現在の最も主要な委託先/購入先に今後も集約していくのか、それとも他の販社/SIerに分散していくのか』の傾向を知っておくことも重要なポイントとなってくる。
少なくとも現時点では販社/SIerの分散化が大きく進む兆候は見られていない。だが、個別の販社/SIer別に見てみると多少の違いが確認できる。以下のグラフは上記に挙げた観点での集計結果を「最も主要な委託先/購入先として比較的多く挙げられた販社/SIer別にプロットしたものである。 (ただし、対象サンプル件数が少ない場合には参考値となる点に注意する必要がある)「今後も利用するが、委託先/購入先は他へと分散する」および「今後は他の委託先/購入先へと切り替える」という回答の合計割合が比較的高い販社/SIerもあれば、逆に「今後も利用を続け、委託先/購入先を主要な業者へとさらに集約する」という回答の割合が比較的高いものもある。
前者においては既存顧客が他社へ流出する可能性に注意しておく必要がある。一方、後者については総合的なシステムインテグレータのみが有利になるとは限らないことも以下のグラフから読み取れる。単に商材の幅を広げるだけではなく、既存顧客が自社に何を求めているか?を把握した上でクラウドやスマートデバイスといった新たなIT商材への取り組みを検討することが重要と考えられる。
※本リリースの元となる調査レポートでは「今後は他の委託先/購入先へと切り替える」といった場合に具体的にどのような販社/SIerの名称が挙げられているのか?を現時点での最も主要な委託先/購入先ごとに集計したデータも含まれている。
【備考1】 『過去三年以内に業務システムの委託/購入を行った販社/SIer』を尋ねた設問における選択肢
大塚商会
野村総合研究所(NRI)
ITホールディングスグループ(TIS、インテック、ユーフィット、ソランなどを含む)
日本ユニシス(ユニアデックス、ネットマークスなどを含む)
CTC(系列企業を含む)
富士ソフト
新日鉄住金ソリューションズ(旧:新日鉄ソリューションズ)
SCSK(旧:住商情報システム、旧:CSKシステムズなどを含む)内田洋行グループ(ウチダ***、***ユーザックなどを含む)
電通国際情報サービス(ISID)
アイ・ティ・フロンティア
兼松エレクトロニクス
JBISホールディングスグループ(日本電子計算、JBISなどを含む)
日商エレクトロニクス
オービック
SRAホールディングスグループ(SRAその他の系列企業を含む)
日本システムディベロップメント(NSD)(系列企業を含む)
JFEシステムズ
日本システムウェア
東洋ビジネスエンジニアリング
両毛システムズ
ミロク情報サービス
TKC
日本デジタル研究所(JDL)
NECネクサソリューションズ
NECソフト(NECソフトウェア***を含む)
NECネッツエスアイ
NECフィールディング
NEC(関連会社や子会社を除く)
その他のNEC系企業
日本事務器
JBCCホールディングスグループ(系列企業も含む)
日本オフィス・システム
トッパンエムアンドアイ
日本IBM(関連会社や子会社を除く)
その他の日本IBM系企業
日立システムズ(日立情報システムズ、日立電子サービスを含む)
日立ソリューションズ(日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービス)
日立製作所(関連会社や子会社は除く)
その他の日立系企業
ニッセイコム
東芝ソリューション(東芝情報システム、東芝ITサービス、東芝情報機器、日本システムなどを含む)
三菱電機グループ(三菱電機インフォメーションテクノロジー、三菱電機インフォメーションシステムズ、三菱電機ビジネスシステムなどを含む)
リコー(系列企業を含む)
富士ゼロックス(系列企業を含む)
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンITソリューションズなどを含む)
沖電気(系列企業を含む)
NTTデータ(系列企業を含む)
その他のNTT系企業
富士通マーケティング(旧:富士通ビジネスシステム)
富士通システムズ・イースト(旧:富士通システムソリューションズ)
富士通ビー・エス・シー
富士通エフ・アイ・ピー
富士通エフサス
富士通(関連会社や子会社を除く)
その他の富士通系企業
さくらケーシーエス
大興電子通信
扶桑電通
都築電気
ソレキア
ミツイワ
PFU
【備考2】 業務システムの委託先/購入先から購入しているIT商材の詳細な区分選択肢
<基幹系システム>
ERP
生産管理
会計管理
販売管理
仕入・在庫管理
給与管理
人事管理
勤怠・就業管理
<情報系システム>
ワークフロー
グループウェア
メール
文書管理/ファイル管理
<運用管理系システム>
運用管理/資産管理
セキュリティ
バックアップ
<分析/出力系システム>
DWH/BI
帳票
<顧客管理系システム>
CRM
<ハードウェア(サーバ/PC/ストレージ/ネットワーク)>
サーバ機器
クライアントPC
ストレージ機器
ネットワーク機器
<事務機器>
複合機
<インターネット接続サービス>
インターネット接続サービス
<ハウジング/ホスティング>
サーバのハウジングまたはホスティング
<IT運用/保守アウトソーシング>
業務システムの運用/保守に関するアウトソーシング
<業務アウトソーシング>
実業務に関するアウトソーシング(コールセンタ業務など)
<クラウド(IaaS/PaaS/SaaS) >
IaaS(ハードウェアやネットワークをサービスとして提供するクラウド形態)
PaaS(システムの開発/運用を行う環境をサービスとして提供するクラウド形態)
SaaS(アプリケーションをサービスとして提供するクラウド形態)
<その他>
その他
【備考3】 業務システムの委託先/購入先に対するユーザ企業の評価項目
主要な委託先/購入先の「提案/販売時の活動」「満足度が高い事柄」の評価項目の例は以下の通り
・中長期的な経営視点を持った戦略立案のコンサルティングをしてくれる
・顔見知りの営業やSEが定期的に自社を訪問するなどして、自社の課題や要件を良く理解してくれている
・どの営業やSEが来ても自社に関する情報が共有されており、自社の課題や要件を良く理解してくれている
※その他、全10項目
「不満度が高い事柄」の評価項目の例は以下の通り
・提案がシステム構築/運用に留まっており、経営視点でのコンサルティングは期待できない
・自社を担当する営業やSEが常に決まっているため、担当者が変わった時のことを考えると不安が残る
・自社に関する情報が共有されておらず、営業やSEが交代すると最初から説明をし直さないといけない
※その他、全10項目
主要な委託先/購入先の「金額提示」について「満足度が高い事柄」の評価項目の例は以下の通り
・見積金額の提示が迅速で正確である
・自社の求めに応じて大幅な値引きといった柔軟な対応をしてくれることもある
※その他、全6項目
「不満度が高い事柄」の評価項目の例は以下の通り
・見積金額の提示に時間がかかり、内容も不正確である
・大幅な値引きといったことには応じてくれず、リストプライスを堅持する傾向がある
※その他、全6項目
主要な委託先/購入先の「システム構築力」「満足度が高い事柄」の評価項目の例は以下の通り
・個別カスタマイズをしない標準状態でも豊富な機能を揃えている
・業種/業態に即したテンプレートが充実しており、個別カスタマイズの必要があまりない
・自社が望む機能については個別カスタマイズで柔軟かつ迅速に対応してくれる
※その他、全11項目
「不満度が高い事柄」の評価項目の例は以下の通り
・個別カスタマイズをしない標準状態では機能が不足している
・業種/業態に向けたテンプレートは簡易なものであり、実際は個別カスタマイズが多い
・自社が望む機能を個別カスタマイズで実現しようとしても制限が多く、時間もかかる
※その他、全11項
主要な委託先/購入先の「保守/サポート」「満足度が高い事柄」の評価項目の例は以下の通り
・取り扱える商材が広いため、保守/サポートの窓口も一元化できる
・提案時の営業やSEが運用/サポート段階でも引き続いて自社を担当してくれる
※その他、全7項目
「不満度が高い事柄」の評価項目の例は以下の通り
・取り扱える商材が狭いため、複数の業者と保守/サポート契約を結ぶ必要がある
・提案時と運用/サポート段階とで担当者が変わってしまうため、情報の伝達が円滑でない
※その他、全7項目
本リリースの元となっている「2013年版中堅・中小企業の業務システム購入先のサービス/サポート評価レポート」
の詳細は右記のURLを参照 (リンク »)
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