凸版印刷とHCC、電子カルテデータを用いた膵がんに関する論文を発表

凸版印刷株式会社

From: PR TIMES

2023-06-30 12:16

医療ビッグデータの利活用に向けた共同プロジェクトの成果を発表2023年7月より製薬会社などの個別ニーズに応じた解析・レポートサービスの提供も開始

 凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下 凸版印刷)と株式会社ケアネットのグループ会社で医療ビッグデータの分析により健康・医療に関わる課題解決に取り組む株式会社ヘルスケアコンサルティング(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小久保 欣哉、以下HCC)は2022年6月に業務提携を締結し、電子カルテデータに関する解析研究プロジェクトを共同で推進しています。
 この度、その成果として電子カルテデータを用いて膵がん早期診断の一助となる予測因子を解析した論文を2023年5月末日に共同発表しました。次世代医療基盤法(※1)において、認定匿名加工医療情報作成事業者である、一般財団法人日本医師会医療情報管理機構(J-MIMO)が保持する医療ビッグデータの臨床的意味を解析した初めての論文となります。
 また、凸版印刷とHCCは共同で、製薬会社向けの電子カルテデータを用いた解析・レポートサービスの提供を2023年7月より開始。今後も、高品質かつ効率的な研究開発を支援するサービスの展開により、健康寿命の延伸と持続可能な社会の実現に貢献していきます。




[画像1: (リンク ») ]

■ 論文について
タイトル : A Machine Learning Exploration of Factors Affecting Pancreatic Cancer
A Retrospective Cohort Study with Data from the Japanese Electronic Medical Record
Database
著者名 : Kinya Kokubo, Katsuhiko Iwasaki, Isuzu Matsushita, Katsutaka Ito, Koji Asakura
URL : (リンク »)
掲載誌 : Therapeutic Research vol. 44 no. 5 2023

■ 研究の背景
 アンメット・メディカル・ニーズ(※2)を満たす新薬開発を加速するためにはあらゆる疾患領域における治療実態の正確な把握が必要であり、そのためにもアウトカムと言われる治療や投薬の効果に基づく分析が重要です。しかしながらニーズの顕在化および治療実態の把握においては、大規模な臨床研究ではコストや時間、単一施設による小規模な臨床研究ではデータのバイアス、また、希少疾患の場合は十分なデータ数が集まらないなどの課題があります。
 そのような課題に対し、RWD(Real World Data)解析の利活用が注目されていますが、従来のレセプトデータ解析では、原則的には月単位の情報しか取得できず日単位の情報は完全ではありません。また、取得できる情報は主に診療報酬に関するものであり、臨床検査値などの定量的なアウトカムを解析することは困難です。一方で電子カルテデータベースは、診療イベント毎に診断、治療に関する情報を記録したデータベースであり、使用薬剤に加え、多くの臨床検査項目・検査値などの定量的な情報が取得可能であり、上記課題を克服できる可能性を秘めています。
 そこで、J-MIMO匿名加工医療情報提供審査委員会の審査を受け、医学研究等への利用可能性探索を行う中で、電子カルテデータベースを用いた分析としてどのようなことができるか、早期診断が難しいとされている膵がんを取り上げ、診断の一助となる示唆の探索研究を実施しました。
 凸版印刷は、2023年5月に発表した新中期経営計画(2023年4月~2026年3月)において「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトに、新事業分野ではヘルスケア事業を注力テーマの1つに掲げています。中でもDXによる新たな取り組みとしてヘルスビッグデータ領域においてカルテデータをベースとした分析サービスを核に事業を推進しています。今回の論文発表と、電子カルテデータを用いた解析・レポートサービスの提供により、ヘルスケア事業のさらなる推進を図ります。

■ 本論文の概要
 本論文では、早期の検出と診断が最も困難ながんの一つと考えられている膵がんにおいて、早期診断の予測因子として機能する可能性のある因子について機械学習モデル(ニューラルネットワーク)を用いて探索的に抽出することを目的として実施しました。
 膵がんおよびその他の消化器がんを対象として、凸版印刷が提供する医療情報提供サービス「DATuM IDEA(R)」(※3)の電子カルテデータベースのデータを使用し、膵がんの診断に影響を与える比較的重要な変数を抽出したうえで、膵がんの危険因子であるかどうかを評価しています。
 結論としては、急性扁桃炎、I型インスリン依存性糖尿病、女性生殖器がんおよびその他の呼吸器疾患などが関連要因として検出されました。ただし、これらの予測因子の臨床応用可能性は、今後の研究で検証される必要があります。

■ 電子カルテデータを用いた解析・レポートサービスの概要
 凸版印刷が持つ匿名加工された電子カルテデータのデータベースと、HCCの持つ医療ビッグデータの研究デザインノウハウを掛け合わせ、製薬会社の深いニーズであった時系列での患者の経過分析や疾患ごとに治療経過を把握するための診療フロー分析などに対応できる解析・レポートサービスです。電子カルテデータを用いた治療アウトカムを踏まえたより詳細な治療実態把握が可能となります。
「DATuM IDEA(R)」 サービスサイト: (リンク »)

・特長
1. オーダーメイド型の解析支援:匿名加工医療情報を分析しやすい形に整備した凸版印刷のデータを用いて、顧客のリサーチニーズを詳細に確認した上で、綿密なデータ調査と適切な要件定義から顧客ごとにカスタマイズされた解析を行います。
2. 適切な分析提案:HCCの専門の解析スタッフにより、市場分析からエビデンス創出まで幅広いリサーチニーズに応じた適切な分析およびアウトプットを提案します。

・想定される利用ニーズ
・様々な薬剤を使用する疾患診療におけるPatient Flow(薬剤治療パターンFlowの可視化)の作成
・薬剤使用とその効果を患者毎に時系列に表現するPatient Journey(患者個々の治療Flowの可視化)の作成
・様々な検査結果を用いた疾患重症度の分析
・治療アウトカムの予測、治療アウトカムに影響する因子の特定

・電子カルテデータ解析・レポートサービスでの解析例
解析例:腎性貧血未治療のCKD(慢性腎臓病)患者におけるGFR区分毎のヘモグロビン値に基づく貧血患者の割合
内容:CKD(慢性腎臓病)はしばしば腎性貧血を合併します。腎性貧血に対する薬剤による治療介入は患者のQoL(Quality of Life)向上のために有用であり、特にCKDが重症である程、腎性貧血が起こる可能性が高いと考えられ、積極的介入が望まれています。しかしながら、CKDに伴う腎性貧血の患者数やその治療実態は明らかになっていません。そこで電子カルテデータベースの情報を用いて、従来のレセプトデータ解析では、困難であった具体的な検査値(ヘモグロビン値)に基づくCKD患者における貧血患者の割合と重症度別のヘモグロビン値の分布を評価しました。
[画像2: (リンク ») ]

■ 今後の展開
 凸版印刷とHCCは、今後も電子カルテデータに関する解析研究を共同で推進し、新たなテーマにおける論文発表や解析・レポートサービスの製薬会社をはじめとするヘルスケア事業者への導入を進めます。今後も、高品質かつ効率的な研究開発を支援するサービスの展開により、健康寿命の延伸と持続可能な社会の実現に貢献していきます。

■ 株式会社ヘルスケアコンサルティングについて
本社:東京都千代田区富士見一丁目8番19号住友不動産千代田富士見ビル
事業開始:2021年11月
代表取締役:小久保 欣哉
事業概要:ヘルスケア領域のコンサルティング、医療関連情報のデータサイエンス、エビデンスによるマーケティングとROI検証等
公式ホームページ: (リンク »)


※1 次世代医療基盤法
 正式名「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」は、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関し、匿名加工医療情報作成事業を行う者の認定、医療情報及び匿名加工医療情報等の取扱いに関する規制等を定めています。

※2 アンメット・メディカル・ニーズ
 まだ治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズのこと。

※3 「DATuM IDEA(R)」 
次世代医療基盤法認定事業者との連携により収集された電子カルテデータを中心とした医療現場由来のリアルワールドデータをご提供する凸版印刷の医療情報提供サービスです。
「DATuM IDEA(R)」 サイト: (リンク »)


* 本ニュースリリースに記載された商品・サービス名は各社の商標または登録商標です。
* 本ニュースリリースに記載された内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。


以  上

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