インタビュイー
・アクセンチュア 製造・流通本部 マネジング・ディレクター 澤田 陽 氏
・アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 シニア・マネジャー 小海 友和 氏
企業が SAP のプラットフォームとして
パブリック クラウドを選ぶ理由
SAP ERP の稼働環境(プラットフォーム)をパブリック クラウドに移行する動きが加速している。主に製造業のお客様を支援しているアクセンチュア 製造・流通本部 マネジング・ディレクターの澤田陽氏は、この動きの背景には、いわゆる “SAP 2027年問題” のほかに「データ活用への意識の高まり」があると説明する。
「製造業のお客様においては、基幹システムとして SAP が採用されるケースが多いのは以前から変わりありませんが、さらに最近はより柔軟かつ高度にデータ活用を可能とする基盤が求められており、特に EC サイトを持つ企業や、B2B2C への業態変容を求められる企業がリードする形で、クラウド サービスも活用したハイブリッドなプラットフォームを構築しようという機運が高まっていると感じます」(澤田氏)
そうした中で、特に先進的な企業では、「自社のビジネスでやりたいことを 100% 実現するために、例えばマルチクラウドを前提にシステム環境を整えていくべきか、アプリケーションの組み合わせはどうすべきか」といったことに関して本格的な検討を進める動きが見られる状況だという。
また、テクノロジー コンサルティング本部で SAP 導入の支援などに当たっている小海友和氏は、パブリッククラウドに対するユーザー企業の意識の変化も移行を後押ししていると話す。
アクセンチュア
テクノロジー コンサルティング本部 シニア・マネジャー
小海 友和 氏
「以前は『SAP をクラウドに移して大丈夫か?』と心配する企業もありましたが、今日ではクラウドの信頼性や安定性、セキュリティに対する理解も広まり、どのようにクラウドを利用することで目的を達成できるかのベスト プラクティスも浸透しています。SAP に関しては、S/4HANA への移行、あるいはハードウェアの保守切れに伴う移行を検討した結果、パブリック クラウドに移すことで多くのメリットを享受できると判断されるケースが多く、プラットフォームとしてパブリック クラウドを前提とすることが主流になりつつあります」(小海氏)
実際に以前は「IT インフラコストの削減」「運用保守負担の軽減」などを理由にパブリック クラウドへの移行を目指すケースが多かったが、今日ではオンプレミスでなければ実現できないと思われていた金融機関の基幹システムや製造業の SCM システムなどのクリティカルなシステムについても、「自前でインフラを持つ必要はない」「むしろオンプレミスよりパフォーマンスが高い」「立ち上げがスピーディに行える」といった理由からパブリック クラウドを選択する企業が増えている。
※1 SAP ERP 6.0 の標準保守期限が 2027 年末までに設定されたことから、多くの企業がそれまでに後継製品の SAP S/4HANA に移行するか、延長保守を受けるか、別の手段を選ぶかの選択を迫られている問題。
なぜ企業は Google Cloud を SAP のプラットフォームに選ぶのか?
それでは、SAP のプラットフォームとなるパブリック クラウドは、どのような観点で選択すればよいのか? ポイントの 1 つは、アプリケーションの特性や要件に応じて選ぶということだ。
「例えば、SAP に格納されたデータを活用するためのサービスが充実しているか、マルチクラウドの活用を前提に、クラウド間連携を容易にするサービスが揃っているかといった観点があります。それらを踏まえて、包括的な付き合いのできるクラウドベンダーを選ぶことになるでしょう」(澤田氏)
その SAP のプラットフォームとして特徴的に利用が進んでいるのが Google Cloud だ。澤田氏は、「Google Cloud を SAP 基盤として利用する企業には特徴がある」と話す。
「SAP に蓄えたデータを先進的なデータ分析サービスで活用したいというご要望がある場合、BigQuery をはじめとする優れたデータ活用サービスが用意された Google Cloud で、SAP も含めたすべての環境を運用することが解の 1 つになります」(澤田氏)
一方で、「単一のクラウドベンダーに過度に依存しない」という方針を掲げる企業も増えている。たとえ大手クラウドベンダーのサービスであっても、SLA の規定内で可用性が低下したり、システム停止に至るような大規模障害が起きたりする場合があることは周知のとおりだ。そこで、事前にそうした事態も想定し、BCP の一環として複数のクラウドサービスを組み合わせて使うマルチクラウドを指向する企業が増えているのだ。その際の選択肢としても、Google Cloud は有力な候補になると澤田氏は説明する。
「Google Cloud はマルチクラウドを指向する企業のニーズに応えるためのサービス開発にも早くから力を入れています。具体的には『Anthos』や『Apigee』など、次世代のシステム基盤となるコンテナ環境をマルチクラウド及びハイブリッド クラウド上で組み合わせ、全体として 1 つのアーキテクチャとして動かせるサービスが用意されていることは、他のクラウドに対する大きな優位性となるでしょう」(澤田氏)
また、技術的な観点では、高い安定性と信頼性を備えた、ユニークなデータ関連サービスに特徴があり、ふくおかフィナンシャルグループのデジタルバンク「みんなの銀行」の基幹システムプラットフォームとしてもこの点が評価されて Google Cloud が採用されている。加えて、強力なグローバルネットワーク網を持つことから、グローバルに展開する事業で SAP 等の基幹システムを稼働させデータ活用を目指す企業にとっても Google Cloud は非常に魅力的な選択肢となるはずだ。