物流効率化/コスト削減の鍵は “ラストワンマイル” にあり
人の移動や外出が制限される状況が続く現在、世界的に物流需要が大きく拡大している。それに伴い「物流の効率化やコスト削減」が重要な経営テーマとなる中、改めて注目を集めているのが “ラストワンマイル物流” だとアクセンチュアの小海友和氏(テクノロジー コンサルティング本部 シニア・マネジャー)は説明する。
アクセンチュア テクノロジー
コンサルティング本部
シニア・マネジャー
小海友和氏
「ラストワンマイルとは、地域配送センターなど物流の最終拠点から届け先までの区間を指します。この区間の配送にかかるコストが物流コスト全体の半分以上を占めるという指摘もあり、ラストワンマイルの配送効率をいかに高め、コストを削減するかが、物流にかかわるあらゆる業界で大きな経営課題となっているのです」(小海氏)
もちろん、この課題の解決は容易ではない。例えば、ラストワンマイルの配送を効率的に行うための配送計画は極めて複雑なものとなり、人手による計画策定には多くの手間と時間がかかる。
また、ラストワンマイルの配送では、再配送やキャンセルの発生などにより配送途中にも配送計画の変更が頻繁に生じる。
「その際に変更後の最適ルートを高速に求める手段を持っていない場合、最適化されていない非効率的なルートで配送を続けることになります。配送ルートの全体最適を図るなかで、ルート変更を行うタイミングはケースバイケースですが、高速に配送ルートを作成できることが重要です。」(小海氏)
さらに、多くの現場では配送計画の立案を熟練のドライバーや計画担当者の属人化したナレッジに頼って行っている。そのため、常にドライバーや計画担当者の退職/異動による計画立案力の低下というリスクにさらされているのだ。
あらゆる業界のラストワンマイル配送を最適化する Route Now
この課題を解決すべく、Google Cloud の最新技術を用いて開発された配送ルート最適化ソリューションが Route Nowだ。「Route Now はアクセンチュアとグーグルの協業によって実現したソリューションであり、企業内や企業間〔B2B〕から宅配便などの B2C まで、あらゆる業界の配送業務を対象にしています」とアクセンチュアの青柳雅之氏(テクノロジーコンサルティング本部 データグループ シニア・マネジャー兼AGBGソリューションアーキテクト)は説明する。
Route Now では、次に挙げるようなさまざまなパラメータ(制約条件)を基にして最適な配送ルートを計算することができる。
- 配送拠点の住所
- 配送先住所
- 配送に使う車両の情報(各車両の積載容量や積載重量の上限/下限などの車両情報のほか、担当ドライバーの労働時間や休憩時間などの情報)
- 配送先に到着した後の作業にかかる時間/コスト
- 各配送物の配達期限日時
- 配送先の順序指定
交通情報などのリアルタイムな情報も利用できるほか、ルート計算速度が非常に高速であることから、必要なタイミングでルート計算を行うことも可能だ。
「また、管理者用の画面で配達状況をリアルタイムに確認したり、各車両がそれぞれ何件の配達を行い、どれだけの距離を走行したかを一覧で確認したりといったことも可能です」(青柳氏)
Google Cloud の AI、データ処理&アプリ基盤を駆使して実装
Route Now には、さまざまな業界の配送業務に精通したアクセンチュアの知見とシステム化のノウハウに基づき、Google Cloud のサービスを使って下記のような複雑な条件を考慮したルート最適化処理が実装されている。
- 複雑なルーティング:複数の物流拠点、車両/注文ごとの容量、集荷/配送注文タイプなど
- ルートの制約:配送サービス提供時間の上限、ルート長の上限など
- 労働時間のルール:労働時間、休憩時間のルールなど
- 積載ルール:積み込み、積み下ろし(LIFO / FIFO)の制約、ピックアップ、配送タスクの順番など
- イテレーション:条件を変えての最適化の繰り返しなど
これらの処理を実装した Route Now のシステム構成は下図のとおりだ。
Route Now では、上図左に記した注文管理システム(ERP Based Order Managem System)から取得した注文情報を、いったん図右下の Storage に格納する。Storage は、RDB(Cloud SQL)やオブジェクトストレージ(Cloud Storage)、NoSQL データベース(Firestore)、データ・ウェアハウス(BigQuery)などから成る。
アクセンチュア
テクノロジーコンサルティング本部
データグループ シニア・マネジャー兼
AGBGソリューションアーキテクト
青柳雅之氏
Route Now は、Web 画面などのプレゼンテーション層(図中の Presentation & Application)でユーザーによるルート最適化の要求を受け付けると、それを Backend のコンテナ基盤(GKE)で稼働するアプリケーションに渡す。すると、アプリケーションはAPI に用意されたルート最適化やマップなどの機能を利用してルート最適化処理を実行する。
「API 部分を構成する Root Optimization API や Google Maps API がルート最適化処理に関する中核的な機能であり、処理結果として条件に最適なルートの座標値を返します。こ情報を使うことで、マップ上に最適なルートを表示できるのです」(青柳氏)
ルート計画画面とドライバー向けナビゲーション機能が一体化されておらず、ドライバーの体験向上が難しいソリューションもあるが Route Now はドライバー向けのアプリケーションまで一気通貫したソリューションを提供可能だ。
また、半製品としてのソリューションである Route Now は既存システムへの組み込みや要件に応じたカスタマイズも可能であり、ドライバーからの着車位置のフィードバックを学習する等のユーザー固有の要件の取り込みも可能になっている。