マイクロソフトが提供する最新のサーバOSである「Windows Server 2012」は、最初にリリースされたサーバOSのバージョンから20年が経過し、どのような進化を遂げたのだろうか。本稿では、Winnows Server 2012の特徴を紹介すると同時に、これまでのWindows Serverと比べ、さらに改善、性能向上した部分を紹介する。導入から運用までのフェーズ、そして将来にわたって、今まで以上に“安心して使えるサーバOS”として確実に進化していることを確認してほしい。(author:国井傑/ソフィアネットワーク、Microsoft MVP for Directory Service)
Windows Server 2003、Windows XPのサポート終了迫る
Windows Server 2012で最新のセキュリティ対策を
多くの企業ではActive Directoryによるユーザー管理を始め、使い勝手の良いファイルサーバ、プリントサーバを中心として、昔からWindows Serverを活用していることだろう。そして、現在もWindows Server 2003/2003 R2といった、古いOSを問題なく利用している企業も多い。
しかし、気がつけば、Windows Server 2003の延長サポートの終了が「2015年7月」と、迫ってきていることを忘れてはならない(Windows XPは「2014年4月」延長サポート終了)。延長サポートが終了すると、それ以降、セキュリティ更新プログラムは提供されなくなるため、新たな脆弱性が見つかっても対処できないのである。これでは、安心してサーバを使い続けることはできない。
また、システムの入れ替えや更新、OSのアップグレードは数日や数週間でできるほど単純ものではない。もし、現在Windows Server 2003を利用しているのであれば、今すぐにでも新しいOS、Windows Server 2012への移行を検討しなければならない時期にきているのだ。
サポート終了までのあいだに、新しいOSで実現できることや、理想とするIT基盤をどこまで構築できるかを十分に調査・検討し、綿密な移行プランを練る。そして、余裕を持って検証作業を行うことで、将来にわたって安心できるITインフラを構築できるのだ。そして、そうしたITインフラ構築を強力に支援するのが、マイクロソフトの最新サーバOSとなるWindows Server 2012になる。
以降、3つのトピックでWindows Server 2012を導入するメリットを紹介していく。
[Topic 1]サーバとしての基本性能が大幅に向上--企業のニーズに合わせて“成長”するOSに
近年のクラウド・コンピューティングの流行により、社内システム(オンプレミス)をクラウドに移行するようなプロジェクトが花盛りである。自社ハードウェア不要、低コスト、柔軟性、高可用性、運用の簡素化といったクラウド特性は、企業にとって魅力的だ。しかし、セキュリティや各種法令への対応、移行にかかわるコストなどの問題から、オンプレミスに引き続きサーバを配置するケースもあるだろう。
こうした現状においては「クラウドか、オンプレミスか」という二者択一ではなく、それぞれの企業における商慣行や利用する機能などに応じて、クラウドとオンプレミスを自社に最適なかたちで使い分けていくケースが増えてくることが考えられる。
Windows Server 2012は、こうしたクラウド/オンプレミスの選択肢をうまく使い分けた運用を可能にする、初めての、かつ唯一のサーバOSとなる。加えて、Windows Server 2012では、これまでのサーバOSと比べて「かゆいところに手が届く」扱いやすさも備えており、導入・構築はもちろん、導入後の運用管理フェーズにおいても、その扱いやすさを実感できる。
以上を踏まえて、まずはWindows Server 2012を支える、強化・向上したポイントについて確認しよう。
【ポイント1】スケーラビリティ&パフォーマンスの向上
Windows Server 2012では、64ソケット、最大640個の論理プロセッサと最大4TBの大容量メモリをサポートする。Windows Server 2008 R2では最大256個の論理プロセッサと最大2TBメモリのサポートだったので、スケーラビリティは2倍以上だ。また、SMB(Server Message Block)は最新バージョン「3.0」になったことで、ファイル共有のパフォーマンスと信頼性、可用性を強化する。
インストール直後のWindows Server 2012は、サーバOSとしての最低限の機能だけが入っているが、目的とする役割や機能があれば、オンデマンドでいつでも簡単に追加できる。また、追加した機能は後述するバックアッププログラムに代表されるように、クラウド(Windows Azure)との連携によってコストを抑えた運用も可能だ。
企業の成長に合わせてサーバに求められる役割も異なってくるが、Windows Server 2012は必要なタイミングで役割や機能を追加していくことで、いっしょに「成長」していくことが可能なサーバOSである。
【ポイント2】安定性の向上
Windows Server 2012はこれまでのWindows Serverと同様、企業のビジネスを止めないために、安定稼働の実現にも重点を置いて開発されてきた。特にハードウェアベンダーとの事前の共同検証作業や、早期導入のプロジェクトが積極的に進められてきたことによって、前バージョン(Windows Server 2008 R2)以上の安定性を確保できたという。
そして、Windows Server 2012はサーバ単体での安定稼働はもちろん、多くの役割や機能で複数台のサーバによる安定運用も実現可能である。このことは、従業員増加に伴う多数のアクセスへの対応だけでなく、バックアップ目的のサーバとしての使い方にも活用できるため、企業内での安定的な運用に大きく寄与する。
【ポイント3】操作性の向上
Windows Server 2012のユーザーインタフェースは、最新のクライアントOSであるWindows 8と統一されている。そのため、Windows 8に慣れているユーザーであれば、ある日突然サーバ管理者に任命されても、苦手意識を持つこともない。また、サーバ管理の基本となるツール「サーバマネージャー」を始め、各種GUI(Graphical User Interface)ツールもさらに充実、洗練されているので、コマンドラインが苦手な管理者でもきめ細かい管理を行うことができる。
特に、サーバマネージャーがリモートサーバの管理にも対応したことは、管理者にとってうれしいはずだ。これにより、複数のサーバをロールベースで同時に管理できるようになるうえ、サーバの稼働状況やイベント、パフォーマンスを統合的に一元管理できるようになるからだ。
【ポイント4】導入も導入後も安心
Windows Server 2012では多くのハードウェアベンダーから、あらかじめOS(Standard Edition)がインストールされた「プリインストールモデル」が提供されている。プリインストールモデルはハードウェアベンダーによる事前の動作検証済みのサーバハードウェアと一体で販売されるため、トラブルをほとんど心配せずにスムーズな導入を行えることが大きなメリットになる。また、充実したサポートがワンストップで受けられるなど、障害発生時の対応も安心だ。