独自のブロック型アーキテクチャーを採用する「Dell PowerEdge FX」用の新しいコンピューティング・モジュールとして、「Dell PowerEdge FC430」が追加された。FC430は、2ソケット・サーバーでありながら、PowerEdge FXに最大8台収容可能。HPC(High Performance Computing)など、計算能力を必要とする用途に適したモジュールだ。
2Uサイズのシャーシに2ソケット・サーバーを8台収容可能に
「Dell PowerEdge FX」(以下、PowerEdge FX))は、2Uサイズのシャーシに、コンピューティング・モジュールやストレージ・モジュール、スイッチ・モジュールなどを自由な構成で収容できる、ブロック型アーキテクチャーを特長とするコンバージド・インフラストラクチャーである。
2015年4月に追加された「Dell PowerEdge FC430」(以下、FC430)は、クォーター幅の小さな筐体に最大14コアのIntel Xeonプロセッサー E5-2600 v3を二基搭載できる2ソケット・サーバーで、PowerEdge FXに最大8台まで収容可能だ。2Uサイズに最大224コアを集積できる、高密度設計が特長のコンピューティング・モジュールである。
FC430の適用分野としては、アプリケーション・サーバーやHPCなど、計算能力主体の用途が想定されており、2つの1.8インチSSDが搭載可能なノードタイプ1と、1.8インチSSDを1つに減らして代わりにフロント側にInfinibandポートを備えたノードタイプ2の2モデルが用意されている。このInfinibandポートを備えたノードタイプ2は、HPC専用モデルと言ってもよい。高密度な分、ディスクスペースは限られているが、想定されている適用分野を考慮すれば特に問題になることはないだろう。なお、ノードタイプ1でもシャーシ側に用意されたPCIeスロットを利用すれば、Infinibandカードなどの各種インタフェースを増設することが可能だ。
Dell PowerEdge FC430(左:ノードタイプ1、右:ノードタイプ2)
コンサルティングから構築・運用までをまとめてサポートするHPCソリューションズ
株式会社HPCソリューションズ
代表取締役社長
河野 証氏
ここで、今回PowerEdge FXおよびFC430の評価を実施した株式会社HPCソリューションズについて紹介しておこう。2006年に創業した同社は、大学・研究機関や製造業を主な顧客として、HPC関連製品の販売からコンサルティング、システムの構築・保守までを提供するHPC専門のソリューション・プロバイダーである。システム構築では、ハードウェアの設置・配線から、OS、ファイルシステム構築、並列処理を行うためのミドルウェアや計算ライブラリといったソフトウェアのセットアップまでを行う。さらに、ユーザー・プログラムのチューニングや、HPCシステム用の電源・空調設備の設計といったサイトプランニングなど、HPCのことなら何でも相談できるワンストップ・サービスを展開している。
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同社代表取締役社長の河野 証氏は、HPC市場の現状について次のように語る。「30年前、科学技術計算と言えばベクトル・プロセッサを備えたスーパーコンピューターの独壇場でしたが、現在ではPCクラスタが主流です。コモディティ化された製品を組み合わせてシステムが構築できるようになったことで、今では研究室レベルで大規模なクラスタを構築することも少なくありません。しかし、コスト面のしきいが低くなった一方で、複数の製品を組み合わせるため、構築・運用のノウハウは高度化しています。HPCシステムの用途は、バイオ・インフォマティクス、計算科学、構造解析、流体解析、自然言語解析などさまざまで、お客様はそれぞれの分野の専門家ですが、必ずしもコンピュータの専門家ではありません。そこで我々のような専門のソリューション・プロバイダーが必要とされているのです。HPCシステムでは、設置スペースと電力が問題になることが多く、FC430のような高密度サーバーの登場はスペースの問題を緩和するものとして歓迎したいですね」
100ノードのクラスタを1ラックで実現、ケーブリングも容易に
株式会社HPCソリューションズ
事業推進室 室長
シニアコンサルタント
折戸 光太郎氏
PowerEdge FXおよびFC430の評価を担当したHPCソリューションズの折戸 光太郎氏は、FC430のスペース効率について、次のように補足する。
「HPCシステムでは、スペース効率を高めるために『Dell PowerEdge M1000e』のようなブレード・サーバーを利用することが多かったのですが、M1000eの場合、10Uのシャーシに実装できるサーバーは16台です。PowerEdge FXとFC430で置き換えると、同じ16ノードを2台のシャーシで実現できる。10Uが4Uに減らせるわけで、実装密度は2.5倍にもなります」
100ノードの中規模クラスタを組む場合、PowerEdge M1000eでは最低でも2ラックが必要になる。一方、PowerEdge FXとFC430の組み合わせなら、余裕で1ラックに収めることが可能だ。
ケーブルリングが楽になるのもPowerEdge FXのよいところだ。折戸氏によると、HPCシステムでは通常3つのネットワークが必要になるという。1つ目はMPIプログラム用のInfinibandネットワークで、これはノード間で計算結果をやり取りするために使う。2つ目はスケジューラーなどのミドルウェアが使うデータ同期用、3つ目は電源管理や障害検知などで使うノードの管理用で、これらはEthernetだ。
「PowerEdge FXでは、管理用を含むEthernet接続がシャーシ内で配線されるため、ノードごとに配線する必要がありません。ケーブルの量が8分の1に減り、作業も短時間で済みます。500ノードクラスの大規模システムでは、ケーブリングだけで複数人が数日掛けて行うこともありますが、PowerEdge FXならそうした人的コストも削減できるでしょう。Infinibandはノードごとに接続する必要がありますが、FC430にはInfinibandポートを備えたモデルも用意されているので、これを使えばカードを増設する手間が省けます」(折戸氏)
管理サーバーを立てずに20シャーシをまとめて管理
折戸氏がPowerEdge FXで特に高く評価しているのが、シャーシ管理ツールのCMCだ。CMCを利用することで、サーバーはもちろん、ストレージ、ネットワーク、電源ユニットといったシャーシ内のモジュールを単一コンソールで管理することができる。さらに最大20シャーシまでのCMCをまとめて管理することができるため、最大160台のサーバーシステムを、管理サーバーなしで管理することが可能だ。
「HPCクラスタは、計画停止を除けば常時電源を入れておくのが普通ですが、常にフル稼働しているわけではありません。学会準備などで忙しくなる時期を除けば、ピーク性能は必要ないというケースもよくあります。そこで電力・空調コストを削減するために、一部のノードを停止させて縮退運転させようということになるわけです。しかし、ノードを1台ずつ電源管理するのはとても面倒です。ここで複数ノードの電源をまとめて管理できるCMCが役立ちます」(折戸氏)
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最後に、PowerEdge FXとFC430がどのようなニーズに適しているのかを尋ねたところ、折戸氏からは次のような回答が得られた。
「まず考えられるのは、小規模なクラスタを必要としているお客様です。1シャーシで8ノードまで構成できるので、必要に応じてノードを追加していくのに適しています。また、CMCで一括管理できることから、100ノードクラスの中規模クラスタにも最適でしょう。もちろん、大規模クラスタでもPowerEdge FXとFC430のスペース効率の良さは有効だと思われますが、内蔵管理ツールだけで一元管理できる小・中規模のシステムには、特にお勧めできます」
最新のインテル® Xeon® プロセッサー E5-2600 v3 製品ファミリーは、新しいエンタープライズ・アプリケーション、科学技術計算、通信、ストレージ、クラウドなど、さまざまな用途に、性能、電力効率、仮想化、セキュリティーの面で大きなメリットを提供し、IT 部門の課題解決を支援します。CPUのコア数は最大18コアまで対応し、性能はAVX2により最大90%向上、又、メモリーの帯域幅は最大50%拡張しており、CPUコアごとの電力制御も可能になっております。
Intel、インテル、Intelロゴ、Xeon、Xeon Insideは、アメリカ合衆国および/またはその他の国におけるIntel Corporationの商標です。
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