DXが加速し、この数年で企業における業務プロセスのデジタル化、基幹システムの刷新が進んでいる。ただその中で、死角となっているのが企業間(BtoB)の受発注業務領域である。この領域では、日本特有の商習慣の壁に阻まれて電子商取引(EDI=電子データ交換)化が進まず、顧客接点・情報系のシステムと基幹系システムの狭間にあることも相まって整備が遅れている状況だ。しかしDXという観点で業務全体を捉え直せば、受注システムは単なる処理のシステムという位置付けから、顧客接点から基幹システムまでのプロセスを繋げた「BtoB EC」に昇華させ、売上を増やしていく仕組みに変革できる領域と考えられないだろうか。
そこに気付いている企業はすでにBtoB ECに投資をし、実際に変革に伴う成果も出ている。BtoB ECシステムを整備する必要性とメリット、プロセスをDXする際に意識すべきポイント、さらに企業の成功事例について、中堅・大手市場向けECサイト構築製品として17年連続市場シェアトップクラス(※1)を維持する「ecbeing」の製品開発責任者である、ecbeing 上席執行役員 製品第1本部 本部長 五戸建氏に聞いた。
※1:2008~2024年度、EC サイト構築(カスタマイズ型、SaaS/PaaS)市場占有率。
(2022年度までは富士キメラ総研の過去の調査結果より、2023年度以降は富士キメラ総研「ソフトウエアビジネス新市場」より)
人手が多く介在し、デジタル化の余地が残るB2B取引領域
――現在、営業やマーケティングという営業支援の領域では、CRMやSFA、MAなどのデジタルツールの活用が進んでいます。一方で対顧客との受注や取引の領域では、いまだ日本ではEDIも普及しきらず、アナログなやり取りが多く残っているのが実情です。そこでまず、国内の法人間取引におけるIT活用の現状と、ecbeingが考える目指すべき将来像についてお話しください。
五戸氏:国内のBtoB取引はオンライン化が遅れ、依然として人手に依存した業務が多いです。日本の良さでもあるのですが、営業活動から取引先・得意先の対応までがきめ細やかで、FAXによる受発注、営業担当への電話連絡、部品交換や修理に関する個別対応など、取引のあらゆる場面で属人的な対応が残り、それらが非効率性を生んでいます。ただ日本ではデジタル化が進んだとしても、そのやり方を壊して全部オンラインで発注してもらうという形にはならないでしょう。そこで国内BtoB取引の将来像を考えた場合、FAXや電話、エクセルで注文してきたものを自然の流れで1つのシステムにデータとして流して、分析も含めてその先のビジネスの発展に生せる形にするのが理想であると我々は捉えています。
一方で社内IT活用の視点では、これまでにIT化が進み、ERPやSFA、グループウェアなどが業務を効率化してきました。ただそれらはあくまで裏側で入力するための仕組みであって、実際多くの営業現場がどうなっているかというと、いまだに担当者がWordやExcelで見積を作り、それを直接やり取りし、受注できたらその結果を各システムに手入力しています。このようにデジタル化されていない業務プロセスが残っているので、そこを全部つなげてデジタル化するのが将来のあるべき形です。そういう状況なので、私たちが考えるだけではなく、各企業の中で自然とオンライン化やBtoB ECを導入していこうという機運が高まりつつあるように感じています。

株式会社ecbeing 上席執行役員 製品第1本部 本部長 五戸 建氏
B2B ECのDXはECとERPの棲み分けで考える
――ただしその必要性に気付けていなかったり、気付いても従来の複雑なプロセスをどのようにシステムに乗せていけばよいのかわからないという企業も多いと思われます。
五戸氏:経済産業省のデータによると、BtoB取引のEC化率は進んでいる食品業界でも8割で、製造業は4-5割、少ない業界だと2割程度です。私は以前BtoC EC製品のお客様への導入支援を担当し、5年前に製品開発の責任者になったのですが、その際にBtoB領域ではBtoCの10年前の話をしているような印象を受けたほど、これからの市場という印象を受けました。ただDXの普及やコロナ禍で一気にBtoC ECが普及したこともあり、ここ2,3年でBtoB取引のオンライン化に対する企業の興味が急速に高まってきたと感じています。
BtoB取引では、得意先ごとに異なる価格や掛け取引など、基幹システムとの連携が必須です。そこでシステム化を検討する際には、まず情報システムの担当者が付き合いのあるSIerやERPベンダーに相談をするのですが、ERP製品が持つWeb受注システムで日本の複雑な取引を実現するためには、大きな開発・改修コストが発生してしまいます。他方で、最新のクラウドSFA製品にもWeb受注機能があるという事で話を聞くと、非常に高いライセンス料が発生して手が出せないと。それらの理由から、あきらめてしまうというケースも多いようです。
――そこで検討が止まってしまうと。
五戸氏:真に変革の必要性を感じている企業からは、EC専業の当社にもアプローチが来ます。その際の商談の場に、情報システム担当者に加えてDX推進担当者や営業部門の人たちが同席されるようになっています。つまり、BtoB取引のオンライン化は、ECを含めたDXの話であるという本質を理解されている企業が増えているということです。
ただB2B EC構築は新規の話が多いので、多くの企業が戸惑いを抱え、自分たちがECをやったとしても、得意先がついてきてくれるのかという不安を感じている場合がほとんどです。ただ、当社のソリューションはBtoB ECの構築ではなく「ECも含めた受注業務全般のDXソリューション」なので、「FAXと電話をやめる必要はありません。我々の仕組みを使えばそれらを全部取り込めます」とお伝えすると、みなさま目の色が変わります。
――受注・取引業務のDXとは、ERP・基幹業務システムとしてではなく、EC領域の話として考えなければならないということでしょうか。
五戸氏:どちらがどうというのではなく、役割を分けて考えることが大切という事です。ERPには業務管理、ECには営業活動の効率化・高度化というように、それぞれ重要な役割があります。ECはインターネットに公開され、外部と接続する仕組みである以上、セキュリティや可用性の観点でもERPとは性質が異なります。UI/UXやセキュリティの話も出てきますし、業務の在り方もどんどん変わっていくので、流動的にシステムを変えていけるフットワークの軽さも求められます。一方でERPは、会計や与信、得意先管理、商品マスタなど、企業活動の「正」となるデータを一元管理するのに適しており、システムの特性としても変えないことが求められます。
そのため、システムの責任を分離し、適切に連携させる設計が重要になります。ECシステムで受注しキャンセル対応などの処理も行い、その先で出荷や会計という領域になったら基幹システムに連携させるという形です。きちんと連携させることで、基幹が持っている商品のマスタデータをEC側がもらい、そこに画像データを付与して説明文を付けることで販売データや商材資料を簡単に作ることもできます。実際に当社のお客様は、ほぼ双方が連携する形でBtoB ECを構築しています。
BtoBtoB機能からAIの実装、ERP連携までの総合力
――ecbeingが提供するBtoB ECプラットフォームの概要と、他社にはない強みとは?
五戸氏:当社では、「ecbeing」というプラットフォーム製品を展開していますが、その際にお客様ごとにプラットフォームをベースとした個別開発を可能にしている部分が特徴です。1:1のEC取引を作りたいだけならSaaS型のECサービスで十分かもしれませんが、前述のように国内B2B取引は複雑で、それを1つの共通プラットフォームで実現することは難しいので、我々はプラットフォームにカスタマイズをするというモデルを展開し、100%お客様の要求に応えられる形を採っています。
機能面では、製造業や流通業では、メーカー、商社・卸、小売といった3社以上が関与する商流に対応できる「BtoBtoB機能」、メーカーに部材や周辺商品を供給するサプライヤ向けの「サプライヤポータル機能」など、取引関係者ごとに異なる役割を実装する機能をあらかじめ備えています。
さらに、営業担当者が見積や値引き、商品提案など顧客とのやり取りをWeb上で集約する「Webセールスオフィス」、FAX注文をAI-OCRでデータ化し、ECへ取り込み、さらにERPへ連携する「AI-OCR連携サービス」、導入済み製品の管理や部品交換、修理依頼を受け付ける「カスタマーポータル」などをモジュールで提供し、受注前後のプロセス全体をカバーしているのが特長です。
ほかにも、検索やレビューなどの埋め込み型だと陳腐化が懸念される領域に関しては「マイクロサービス」という形で自社開発のクラウド連携サービスを提供し、常に最新のものを活用できるようになっています。
もう1つの強みが、プラットフォーム開発からクライアント支援までの技術力です。我々は製品開発からお客様との要件定義、ERPとの連携も含めたシステム導入まで、開発体制650名以上、マーケティング支援体制300名以上の安心なバックアップ体制で対応しています。またBtoC ECも手掛けているので、「売る」ことに長けたメンバーも多いです。
AIについてもAI駆動開発体制を採用し、製品開発からお客様のサイト構築までのプロセスで劇的に生産性を高めています。ecbeing製品でも、先般「ecbeing AI+」という連携可能な機能群のサービスを発表しました。売上に貢献する接客支援機能、ルーティンワークを代行する業務効率化機能、戦略を支援する分析機能など、AIがECの収益化のところから受注、サポートまでの一連の流れの中で使えるようになっていて、今後もさらに機能を実装していく計画です。

ecbeingとERP、その他システム連携によるBtoB ECの仕組み
ecbeingで売上アップや電子取引の標準化を実現した事例が多数
――ecbeingを導入してDXに成功した企業の事例を紹介してください。
五戸氏:コニカミノルタ様では、最初に複合機ユーザーからの修理依頼や消耗品の依頼を受けるクローズ型のポータルサイトを構築して営業担当者の業務効率化を実現され、その後自社が販売されている豊富なソリューションを購入可能なオープン型のサイトを構築し、先のポータルサイトと連動させました。このような形で段階的にB2B ECサイトを整備したことで、営業担当者の業務効率化や既存ユーザーのサポートだけでなく、ソリューションの販売、新規開拓、売上アップも実現しています。
電設資材の専門商社である因幡電機産業様では、BtoBtoB型のECサイトを構築し、多数の電材店を巻き込んだオンライン型のビジネスモデルを実現されました。人の移動が激しい建築業の現場で、上流のメーカー、因幡電機産業様、電材店、工事業者の取引の流れを標準化し、業務効率化と取引先との関係性強化を実現されています。
ほかにも、製造、繊維、医療、食品、日用品、インテリアなど、様々な業種のお客様のECサイトを構築させて頂いております。
――最後にBtoB取引領域のDXにチャレンジする企業にメッセージをお願いします。
五戸氏:今、多くの中堅・大手企業でBtoB ECの導入が急速に進んでいます。みなさまがDXを進めたいと考えるなかで、この領域はどうデジタル化すればよいか迷われていると思いますが、BtoB ECはERPの代替ではなく、ビジネスを前に進めるためのフロントエンドと捉えるべきです。「ecbeingに相談して、1年かけて考えるようなことをあっという間にショートカットできた」というお客様もいらっしゃいました。検討を開始する際には、ERPベンダーやパートナーのSI会社だけでなく、私たちにもぜひご相談ください。
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