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進化するエッジコンピューティングはクラウドサービスをどう変えるのか――「HCL CTO Straight Talk2018」から読み解く

ZDNet Japan Ad Special

2019-02-28 11:00

[PR]エンジニアリングR&Dサービスを中心に事業を展開するHCLが、10月に東京で「HCL CTO Straight Talk2018」を開催。「エッジコンピューティング」の進化は、いったい何を変えていくのか。同イベントで登壇した2人の方の話から読み解く。

エンジニアリングR&Dサービスを中心にグローバルで事業を展開するHCLが、10月に東京で「HCL CTO Straight Talk2018」を開催した。このイベントのメインテーマは「エッジコンピューティング」。自動運転技術をはじめとする新しいクラウドサービスの開発に大きく影響を及ぼすといわれるこの技術は、ITベンダーだけでなく、さまざまな製造業企業からも注目されている。では、「エッジコンピューティング」の進化は、いったい何を変えていくのか。同イベントで登壇した2人の方の話から読み解いていく。

 「エッジコンピューティング」のエッジとは、現場の端末に近い場所を指す。IoTでいえば、各センサーからクラウドにデータが送信され蓄積・分析が行われるが、「エッジコンピューティング」では、クラウドにデータを送る前に、現場の端末に近い場所にある機器で、一定のデータ処理を行う。これにより、クラウドにデータ転送するための通信コストが低減され、リアルタイムに近い処理スピードが実現する。またエッジでデータ処理していれば、クラウド側の処理能力を維持するために、コストをかけて高いスペックの環境を用意する負担も軽減される。

 「HCL CTO Straight Talk2018」の基調講演に登壇した、HCLテクノロジーズのエンジニアリングR&Dサービス エグゼクティブ・ヴァイスプレジデントのRajiv Shesh氏は、「データの価値」について次のように話す。

HCLテクノロジーズ エンジニアリングR&Dサービス エグゼクティブ・ヴァイスプレジデント Rajiv Shesh氏
HCLテクノロジーズ
エンジニアリングR&Dサービス
エグゼクティブ・ヴァイスプレジデント
Rajiv Shesh氏

 「現在、世界中で生成されるデータの7割は、データセンターの外で生成されています。しかしこれらのデータのほとんどは利用されず捨てられており、逆に言えば、ここに大きなビジネスチャンスが眠っているということです。エッジコンピューティングは、こうした捨てられているデータに価値を与える上で、大きな役割を果たします。だからこそ、世界中で、エッジコンピューティングテクノロジーに関するスタートアップ企業が急激に数を増やしているのです」

 Shesh氏は、エッジコンピューティングはスタートアップ企業だけでなく、既存の企業にも大きなビジネスチャンスをもたらすと話す。

 「エッジコンピューティングでは、スマートデバイスを活用できますが、コモディティ化したハードウェアも利用できます。また、これまで多くのデータを利用しきれずにいた企業にもチャンスがあります。エッジコンピューティングは、リアルタイム解析を提供できるからです。ロールスロイスは、既存資産である自社のエンジンにセンサーを付け、データ処理を行うことで、新しいビジネスモデルを構築しました。エッジコンピューティングの技術が進化していくということは、同じように既存資産・データを活用しながら、低コストで迅速に処理を行い、新しいビジネスモデルを作ることが可能になるということなのです」

エッジ側とクラウド側のパワーをどうバランスさせるか

 とはいえ、現在のエッジコンピューティングには課題もある。Shesh氏は、その課題を「プロセス」「遅延」「拡張性」の3つを挙げて説明する。

 「まずプロセスですが、どういうパラメーターを使うのか定義されていないため、まだ各社が試行錯誤している状態です。この点で標準的なルールが確立されれば、各機器やサービスのコネクティビティが容易になり、より使いやすいものとなるはずです。また遅延も大きな問題です。大きなアプリケーションを使うことで処理が遅れると、できるだけ迅速な対処が求められるサービス、例えばコネクテッドヘルスケアなどの分野では役に立ちません。そして、拡張性も担保できなくてはなりません。50ぐらいのデバイスにつながっているエッジのシステムが数百、数千のデバイスに接続した場合でも、問題なく稼働できるかどうかもユーザーは重視します」

 こうした課題に共通しているのは、「エッジ側とクラウド側のパワーをどうバランスさせるか」にあるとShesh氏は話す。ガートナーは「現在のエッジコンピューティングでは、エッジはデータの合算やフィルタリングしかしていない」としている。このことから考えると、エッジ側とクラウド側をバランスさせるにあたっては、エッジ側にアナリティクスの能力を持たせるなど、エッジにとっての得意分野をさらに担わせることが重要になる。

 Shesh氏は、各種サービスのパーソナライズ化が主流となることで、流通するデータの量は今後飛躍的に増加するはずだと話す。ヘルスケア関連のサービスなどは、データの秘匿性も確保しなくてはならないため、データ量の増加とともに、エッジ側の処理能力をさらに高めていく必要があるとした。また、遠隔地の工場をデータ分析によって適切に稼働させるといった場合などでも、リアルタイム性が求められるため、エッジ側が「データの合算とフィルタリング」といった機能だけでなく、さらに多くの能力を持たざるを得ないとし、エッジ側で、あるレベルまでの解析をやってしまうということが今後求められていくとした。

 「HCLでは、すでに、さまざまなお客様のエッジコンピューティングによる価値創造をお手伝いをしています。皆さん、既存のハードウェア資産を持ったお客様です。複合印刷機、滅菌機器など、自社製品をエッジコンピューティングと接続して、数百億ドル単位の利益を生み出しています。またエッジ側にAIや深層学習の機能を持たせ、低コストかつ迅速にデータ分析をして、ビジネスモデルを変えていく取り組みがすでに進行中です。今後、さらにエッジとクラウドのバランスに関するノウハウや技術が進展することで、既存資産を生かした新しいビジネスモデルへの挑戦がより拡大していくでしょう」

高度な顔認証AIをエッジコンピューティングでサービス化

 続いて登壇したのは、NEC デジタルプラットフォーム事業部 技術部長の岡山義光氏だ。岡山氏は、同社のエッジコンピューティング関連の技術・サービス開発全般を担う立場にある。

 同社は、「NeoFace Cloud」サービスを2017年10月に提供開始した。このサービスは世界No.1の認証精度を誇る顔認証AIエンジン「NeoFace」をクラウド対応に用途拡大したもので、月額料金5,265円(端末1台、対象者1人あたり)から利用できる。このサービスに、エッジコンピューティングが活用されている。

NEC デジタルプラットフォーム事業部 技術部長 岡山義光氏
NEC
デジタルプラットフォーム事業部
技術部長 岡山義光氏

 「NeoFaceのデータ処理には、カメラから得られた画像データを前処理して、検出し、特徴量を抽出してデータと顔照合し、照合結果を通知するというプロセスがあります。これらをすべてデータセンターにあるクラウドで処理しようとすると、GPUを利用した高機能の計算処理基盤が必要になる。そこで、会社に『エッジコンピューティングでやらせてくれ』と提案し、開発を始めました。エッジ側に判別モデルを組み込んで、顔照合は、クラウドでやるという仕組みに変えたのです。これによって、イニシャルコストも低減し、リアルタイムで4K映像を処理できるようになりました。クラウド側への転送は、数十メガBPSから数キロBPSに低減して、消費電力も従来の10分の1になったのです」

 岡山氏は、この事例をエッジコンピューティングによる新しいビジネスモデルの創造と位置づける。NECでは、エッジ側のアクセラレータを電柱に着けられるくらいの大きさ、耐久性にして、ほかのAIエンジンも含めて、FPGAで高速処理するプラットフォームを作ろうとしており、2019年までには目途がつくと話す。

 岡山氏は、エッジコンピューティングの将来について、「エッジコンピューティングの価値は、エッジとクラウド側の協調分散処理をどう最適化させるかにかかっている。現在でいえば、ただデータを吸い上げるだけの機器に推論機能や計算機能を担わせる『エッジヘビー』の形態になっていくでしょう。クラウドでやっていた、高度な処理をエッジに落としていくわけですね。ただし、ここで注意しなくてはいけないのは、エッジ側に既存のサーバを置く、という発想では、恐らく普及していかないということです。サーバを現場に置く形ではセキュリティリスクとコストが増大するだけだからです」と話す。

 では、エッジ側のマシンはどのようになるべきなのか。岡山氏は、「サーバの性能をルーターのようなお手軽さで、メンテナンスフリーで動かせる」ことが重要だという。高度なAI機能は持っているが、プライバシーに関わったり、盗まれてはいけない生のデータはすぐにクラウドに転送し、それ以外の判断や分析をエッジ側で担うということだろう。そのようにして、現場の「OT側」の機器ではセキュリティをできるだけ担保していくわけだ。

 5年ほど前、ビッグテータという言葉が盛んに使われるようになったころ、交通など多くの分野で、社会実験的な取り組みが実施された。端末を自動車などに取り付け、データを収集し分析していくわけだが、どうしてもリアルタイムに分析結果を把握するということは困難だった。もちろん理論上、不可能ではないが、実現しようとすれば、膨大な処理能力が必要なり、現実的ではなかった。また、IoTなどの分野でも、リアルタイム処理は多くの企業で課題となっている。データは分析することで大きな価値を生む可能性はあるが、できれば、「すぐに分析結果を出して最適なアクションを迅速に行いたい」というのがユーザーの希望だ。今回のイベントでの二人の話を聞き、そうした課題がエッジコンピューティングによって解決される、その道筋がはっきり見えてきたと感じる。また、その光明は、多くの企業が目指す「新しいビジネスモデルの創造」ということにもつながっており、デジタルトランスフォーメーションの具体例が、今後日本でも次々と登場する予感を抱かせる。

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