EADs活用で得られる3つのメリット
EADsを活用することのメリットは豊富だが、第1に挙げられるのはサービスの高速化だろう。
「例えばインターネットトレードなどの用途では、参照系アプリケーションにアクセスが集中すると画面表示が遅くなるので、データベースの参照処理をEADsに分離することでアプリケーションのボトルネックを大幅に解消できます」と梅田氏。
メリットの第2はサービスの無停止化だ。オンラインショッピングなどのシステムではちょっとしたサービス停止も大きな問題となるが、EADsを活用することでデータの分散配置やN多重化が可能。特定のコンポーネントの異常でシステム全体が障害に陥ってしまうSPOF(Single Point of Failure)を回避して、サービスの継続性が強化される。また、データベースの再編成やメンテナンスなどによる計画運用停止を、サービスに全く影響を与えず実施できるのも強みだ。
そして第3のメリットはデータ転送の効率化。「今後は地域端末(電力やガスのスマートメーターなど)が急増することで情報収集の量も爆発的に増加するため、アプリケーションとRDBの間にEADsを置くことによって、多数のデータをキャッシュに溜めてまとめて転送するケースが増えると考えています」と述べる杉本氏。
利用者の増加に合わせてKVSをスケールアウトさせていけば、システム負荷を平準化することができ、データの欠落防止など信頼性を高めることも可能だという。
EADsの適用例。RFIDやスマートメーターなどの多様・大量なデータを扱う通信路となることで、新たなデータ活用を推進
工程別に導入成功に導くミドルウェア活用ソリューション
また、日立製作所ではEADsをはじめとしたミドルウェアの供給だけではなく有効活用を促進し、確実に成功に導くサービスメニューも必要だと考えている。
そのため、対象システムの工程別にミドルウェア活用ソリューションを用意。まず“企画”段階では「ミドルウェア活用企画サービス」をする。漠然とした次期システムの構想や課題をヒアリングし、ミドルウェアの適用イメージを策定する。ここでは、現場業務支援モデルや運用手順効率化モデルなど、さまざまなモデル化したユースケースも準備している。
また、“計画~要件定義”段階では「ミドルウェア活用スタータサービス」をサポート。製品の実機を使って約1ヶ月でシステム開発のトライアルを実施し、実証検証、性能測定、工数算出などを支援することで、実現性の見極めや計画・進捗の精度向上を測る。
そして、“設計~構築~テスト~本番”のフェーズでは「ミドルウェア活用テクニカルサービス」を用意。案件豊富な日立製作所のベテラン技術者が設計から開発までバックアップするとともに、製品教育やQ&A対応、ツールを使った実行状況解析などを行う。こちらも支援可能な内容をメニュー化している。
ビッグデータ時代に必要なミドルウェア製品に期待
杉本氏は、「今後性能が要求される分野ではインメモリ処理や並列処理が当たり前の状況になるでしょう。そうした処理に必要な技術を使ってさらに新しい製品・サービスを提供していくつもりです」と語る。
日立ではEADsのように並列で分散処理をする製品以外にも、リアルタイム処理を行うストリームデータ処理基盤「uCosminexus Stream Data Platform」や、2012年6月7日より販売開始する超高速DB「Hitachi Advanced Data Binder プラットフォーム」などの製品を取り揃えている。これら製品を組み合わせることで、大量のデータをリアルタイムで処理・分析し、膨大に蓄積されたデータから特定の情報を超高速に取り出すといった、ビッグデータならではのデータ活用が可能となる。