ARとIoTを加えることでフィジカルとデジタルの融合が進む
設計・製造のみならずサポートやセールスも巻き込むテクノロジー群
PTCは近年、ARやIoTといった、フィジカル(物理的存在)に関わるデジタル技術を積極的に推進している。そもそも同社のビジネスの中核がフィジカルな品物に深く関わるCAD/PLMソリューションなのだから当然ではあるのだが、最近ではその範囲が設計・製造のみならずサポートサービスや販売・マーケティングなどの業務にも及ぶようになってきた。
例えば、ARアプリケーション「Vuforia Chalk」は、AppleのiOS 11やGoogleのAndroidで導入されたAR機能を用いてスマートフォンから利用できるようになっており、様々な場所のユーザーが手軽に参加することが可能だ。具体的な利用イメージとしては、製品のサポート現場にいるエンジニアに対し、別の場所にいるエキスパートがARコミュニケーションを通じて支援するといった形が想定されている。製品名にも含まれる「チョーク」で、AR環境内にマーキングや注釈などを描いて様々な情報を伝えることが可能だ。うまく活用することで、サービス品質向上や業務効率化、スキルアップなどの効果が期待できることだろう。
Vuforia Chalkの利用イメージ。左側の操作パネル前にいる人物に対し、右側のベテランエンジニアが使い方を指導している様子
IoTセンサー搭載自転車のデモ。写真奥にある自転車を操作するとセンサーからの情報がシステムに伝わり、画面上の数値が変わっていく
AR技術が効果を発揮するのは、こうしたサポート現場だけにとどまらない。営業やマーケティングの現場においては、その場に実物がなくても実際の品物を顧客がより具体的にイメージできるなどのメリットが期待できる。PTCのARソリューションは、すでにそういった方向性での実績も豊富にあり、製造業における様々な現場で「フィジカルとデジタルの融合」を可能にしている。
一方のIoTに関しても、PTCは以前から取り組みを進めており、「ThingWorx」などの製品群に取り入れられている。産業用IoTプラットフォームのイメージを掴みやすいよう、ブースでは自転車にIoTセンサーを取り付けたデモを展示した。製品に活用して納入後の状況をリモートで把握することによりサポート品質を向上させたり、はたまた自社の製造設備に活用して稼働率やメンテナンス性を向上させるなど、様々な応用が期待できる技術だ。
CADにも触らず設計者も煩わせず間違いのない設計・見積もりを迅速に作成 AIを活用しカスタム製品の設計を自動化するアドオンも登場
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パートナーシップも積極的なPTC、最近の新たなパートナーであるTacton Systemsも、ブースの一角に展示スペースを設けていた。同社はスウェーデンに本社を置くソフトウェア会社で、いわゆるCPQ(Configure Price Quote)ソリューションを作っており、最近その同社の製品がCreoのアドインとして統合できるようになったという。今回のPTCブースには、同社および日本の販売代理店となっている構造計画研究所のスタッフも参加し、来場者への説明を行っていた。
Tactonのソフトウェアは、受注設計製品の設計・販売のためのAI(人工知能)技術を基盤とした自動化ツール。
「営業担当者はCADに触れたり設計者に頼み込む必要がなく、Webベースの画面から顧客と商談しながら要件に合わせて顧客のニーズやパラメータ等の仕様を設定していくだけで、設計や見積もりを完成することが可能となります」と、Tacton Systems 地域担当マネージャーの加藤晴子氏は説明する。
本ソフトウェアでは詳細な設計/規制ルールを設定することができ、これに基づいて長さを変更すれば必要な補強部材が追加されたり、要求仕様の変更に合わせて装備が自動で変更されるなど、たとえ知識を持たぬ担当者が操作しても間違いのない設計を実現するという。逆に設計者も、商談のたびに営業担当者から呼び出されるようなことがなくなり、より競争力を高めるための基本設計に専念できるというわけだ。
構造計画研究所 SBD営業部 設計ソリューション室の大川瑞葉氏は、「日本では30社ほどがTactonのソリューションを使っています。グローバルにビジネスを展開している企業が多いですね」と説明している。こういった企業では設計と営業の距離感が遠くなりがちのため、本製品のようなソリューションがより効果を発揮するということだろう。
一方、こうした自動化を可能にするための製品仕様の設定や設計/規制ルールなどは、CADと連携したソフトウェアから登録・管理する仕組みになっている。Creoのアドインとして使えるようになっている上に、デバッグツールなども搭載しており、設計自動化を効率的に実施することができるとのことだ。
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