IoT関連のデバイスやソフトウェア、サービス環境が徐々に整いつつある。具体的な活用イメージが広がってくると同時に、目的や用途によっては欠けた“ピース”が存在していることが明らかになってきた。その穴を埋めようとする動きがみられる。
その一つが、エッジとサーバやクラウドを結ぶ通信プロトコルだ。IoTでは一般的に、HTTPSやMQTTといった既存プロトコルが用いられるが、通信の不安定さを懸念する声もある。例えば、IoTの応用品であるスマートメーターからのデータが転送できなかった場合、そのデータを利用した料金算定ができず「顧客に請求できない」という課題が考えられる。
転送そのものの信頼性の高さに加え運用自動化などの効果でコストを低減
こうしたミッションクリティカルな通信ニーズに応えて、セゾン情報システムズがリリースしたのが「HULFT IoT」だ。HULFT IoTは、長年にわたる豊富な実績を誇る高信頼ファイル転送ミドルウェアであるHULFTをIoT向けの製品となっている。
HULFT IoTは、HULFT譲りのセキュリティや圧縮、データ整合性検証、そして転送前後のジョブ連携など、トランザクション全体をカバーする数々の機能を備えている。IoTにそこまでの高度な機能が必要かと思う読者もいるかもしれない。しかし前述のように、転送失敗などでデータが失われると大きな損失が生じかねない用途では、これらの機能が大いに役立つ。
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もちろんHTTPSやMQTTプロトコルを使っても、信頼性の高い転送を実現することは可能だ。ただし、デバイス側とサーバ/クラウド側の両方に、転送エラーを識別して再送するといった仕組みを作り込む必要がある。また、データ改ざん防止などの機能も、それぞれ必要なら作り込まなければならない。HULFT IoTは、それらの作り込みを一切不要にし、より短期間で高信頼の通信を可能にする。
また、単なる通信プロトコルでしかないHTTPSやMQTTとは異なり、HULFT IoTは通信をつかさどるミドルウェアのような存在だ。そのためトランザクション全体をカバーでき、転送前後に別のジョブを連携させることも容易に行える。例えばETLツール「DataSpider Servista」などを組み合わせることで、IoTデバイスから収集したデータをDWH/BIに投入してリアルタイムに分析したり、他のデータソースと突合させた上で業務DBに格納する、といった処理をノンプログラミングで構築できるようになる。
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IoTデバイスは、その特性上、機器が膨大な数になることも想定されるため、各デバイスの設定や監視といった管理においても、相当な負担が予想される。これに対しHULFT IoTはエージェントの管理機能を備えている。管理サーバから一元的に、かつ自動で管理することが可能だ。これにより運用負担を大幅に低減し、実用に耐えるIoT環境を実現する。
また、データ圧縮機能も、用途によっては重要だ。具体的なユースケースは後述するが、例えば携帯電話網を経由して転送する場合、データ量が通信コストに大きく響くため、データ圧縮により大幅なコスト削減が期待できるのである。
製造業をはじめ、多様な業界で想定できるミッションクリティカルな通信
セゾン情報システムズでは、HULFT IoTのユースケースとして、以下のような内容を挙げている。これらは、実際に同社へ相談があったケースだという。
- 製造業:予測保守、品質検査、遠隔業務
- 流通・小売:スマート決裁、消費者行動分析
- エネルギー:需要予測、スマートグリッド
- 輸送・物流:サプライチェーン、トレーサビリティ、燃費管理
- 公共:防犯・防災、安全対策
- ヘルスケア:患者モニタリング、遠隔医療
例えば、ある機械メーカーでは、客先に納入した機械の動作ログを収集し、予防保守などに役立てようとしているが、ログの容量が大きかいため通信コストが懸念されていた。HULFT IoTによって約10GBのログを0.5GBほどに圧縮でき、データ欠損が生じないことや、通信コストの削減効果を評価しているという。
今後IoTの利用が拡大する中で、本製品のような高信頼や自動管理が求められる場面は増えてくるはずだ。同社では、デバイスメーカーや、製造業の生産技術系インテグレータなどを中心に本製品を訴求していく計画で、OEMでの提供も推進している。信頼性の高い転送をつかさどる組込ソフトウェアコンポーネントとして、HULFT IoTを採用してもらおうというのだ。
グローバルに活躍する製造業は、日本の強みでもある。IoTが広まる中でHULFT IoTは、インフラの一部を担っていこうとしている。
※この記事は2016年10月に取材・制作したものです。