ノークリサーチQuarterly Report 2012年春版(Vol 018)

株式会社ノークリサーチでは中堅・中小市場における第18回目のIT投資実態調査を行った。

株式会社ノークリサーチ 2012年06月13日

DI値は回復するものの、安定的な収益改善の実現にはIT活用提案に一層の工夫が必要 ▼経常利益DI、IT投資DIいずれも2012年2月時点より改善し、徐々に回復基調へと向かう ▼年商5億円未満だけでなく、年商5億円以上~50億円未満でも人材不足がIT活用の障壁 ▼大半の業種で経常利益DIは改善、ただし今後は人件費削減に頼らない収益改善が必要 ▼IT活用提案の壁は「現状維持志向」、現行業務の問題点を具体的に指摘することが有効

PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2012年6月13日

ノークリサーチQuarterly Report 2012年春版(Vol 018)

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


2012年春の中堅・中小企業のIT投資指標


株式会社ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター1705:代表伊嶋謙ニ03-5244-6691URL:http//www.norkresearch.co.jp)では中堅・中小市場における第18回目のIT投資実態調査を行った。本リリースはその結果速報をまとめたものである。


調査対象企業: 年商500億円未満の国内民間企業1000社の経営層および管理職
調査対象地域: 日本全国
調査対象業種: 組立製造業/加工製造業/建設業/流通業/卸売業/小売業/IT関連サービス業/一般サービス業/その他
調査実施時期: 2012年6月初旬


DI値は回復するものの、安定的な収益改善の実現にはIT活用提案に一層の工夫が必要
▼経常利益DI、IT投資DIいずれも2012年2月時点より改善し、徐々に回復基調へと向かう
▼年商5億円未満だけでなく、年商5億円以上~50億円未満でも人材不足がIT活用の障壁
▼大半の業種で経常利益DIは改善、ただし今後は人件費削減に頼らない収益改善が必要
▼IT活用提案の壁は「現状維持志向」、現行業務の問題点を具体的に指摘することが有効


▼経常利益DI、IT投資DIいずれも2012年2月時点より改善し、徐々に回復基調へと向かう

以下のグラフはIT投資DIと経常利益DIの変化をプロットしたものである。2012年2月と2012年5月を比較すると、経常利益DIは9.4ポイント、IT投資DIは3.0ポイントといずれも改善が見られた。次頁以降では年商別および業種別に各DI値の傾向を詳しく見ていくことにする。
[IT投資DIの定義]
今四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを尋ね、「増える」と「減る」の差によって算出した「IT投資意欲指数」
[経常利益DIの定義]
前回調査時点と今回調査時点を比較した場合の経常利益変化を尋ね、「増えた」と「減った」の差によって算出した「経常利益増減指数」


▼年商5億円未満だけでなく、年商5億円以上~50億円未満でも人材不足がIT活用の障壁

以下のグラフは経常利益DIおよびIT投資DIの変化を年商別にプロットしたものである。
経常利益DIについては、いずれの年商帯においても改善が見られた。年商50億円以上~100億円未満ではほぼ横ばいに近い微増だが、それ以外の年商帯については7.0~16.5ポイントの大幅な改善となっている。
「経常利益が増加した」と回答した企業にその理由を尋ねた結果では、「自社の販売や受注における数量が増加してきている」が最も多く挙げられた。経常利益DIの改善幅が大きい年商5億円未満と年商5億円以上~50億円未満ではこの理由を挙げる割合が6割に達している。その一方、「経常利益が減少した」と回答した企業にその理由を尋ねた結果では、「日本国内の需要はまだ回復していない」という慎重な見方も目立つ。経常利益DIの回復幅が小さい年商50億円以上~100億円未満では、この理由を挙げる割合が4割弱と最も高い。また経常利益が増加した理由として、「人件費などの固定資産削減施策の成果が出てきている」という回答も全年商帯の平均で2割に達しており、今回の経常利益改善の全てが売上増に起因するものではない点に注意が必要である。
IT投資DIについては年商5億円以上~50億円未満で7.5ポイントの下落となったものの、それ以外の年商帯では2.0~7.5ポイント程度の改善となっている。
「IT投資を増やす」と回答した企業にその理由を尋ねた結果では、「業務効率を改善し、収益を向上させるためのシステム投資が必要」が最も多く、いずれの年商帯においても「現状を維持するため、ハードウェアやソフトウェアの更新が必要」を上回っている。
だが、IT投資DIが下落した年商5億円以上~50億円未満においては「IT投資を減らす」理由として、「IT投資の必要性は感じているが、管理/運用をする人材がいない」が他の年商帯と比べて多くなっている。年商5億円未満の小規模企業においてはIT管理を担う人材が不在であることが十分認知されているが、年商5億円以上~50億円未満においてもIT管理担当人材に関する悩みを抱える企業は多い。費用面だけではなく、限られた人材でも導入や運用が可能なソリューションの提案が一層求められているといえる。


▼大半の業種で経常利益DIは改善、ただし今後は人件費削減に頼らない収益改善が必要

次頁のグラフは経常利益DIの変化を業種別にプロットしたものである。業種毎の傾向は以下の通り。
組立製造業:
前回との比較では0.7ポイントとほぼ横ばいの状況となっている。経常利益増加要因では「自社の販売や受注における数量が増加している」「海外向けの需要が回復してきている」が挙げられる一方、経常利益減少要因では「自社の販売や受注における数量が減少または横ばい状態である」「自社の販売や受注における単価が下降または横ばい状態である」「日本国内の需要はまだ回復していない」といった回答が多く挙げられている。今後は欧州金融不安に起因する円高の進行やエコカー補助金終了後の新車販売台数の急落といったマイナス要因が懸念される。
加工製造業:
前回との比較では19.3ポイントと大幅な改善となっている。経常利益増加要因としては「自社の販売や受注における数量が増加している」「日本国内の需要が回復してきている」に加えて、「売れる/売れない商材の取捨選択を適切に行っている」という回答が目立つ。海外企業でも行える簡易な処理ではなく、高度な技術を要する処理に注力することで収益改善に繋げるなどの取り組みが考えられる。
流通業(運輸業):
前回との比較では5.5ポイントの改善となっている。経常利益増加要因では「自社の販売や受注における数量が増加している」「海外向けの需要が回復してきている」が多く挙げられている一方で、「人件費などの固定費削減施策の成果が出てきている」も同程度の割合となっている。「原材料や燃料/電力の調達において工夫をしている」という回答割合が少ないことからも、流通業においては主要なコスト要因の一つである原油価格の影響を回避することが難しい。そのため、収益確保の手段として人件費などの他の固定費が削減対象となりやすいと考えられる。
建設業:
前回との比較では10.8ポイントの改善となっている。経常利益増加要因では「自社の販売や受注における数量が増加している」「自社の販売や受注における単価が上昇してきている」に加えて、「東日本大震災やタイ洪水などの自然災害による影響」が多く挙げられている。東日本大震災直後には資材や人材の不足によって中堅・中小の建設業が逆に案件を取りづらくなってしまう面も見られたが、震災から一年以上が経過した段階でようやく復興需要の端緒が見られてきた状況がうかがえる。
卸売業:
前回との比較では-2.8ポイントの下落となっている。経常利益減少要因では「自社の販売や受注における数量が減少または横ばい状態である」が7割弱と全業種の中でも最も高い割合となっている。ただし、同じ卸売業でも状況は異なり、「各種商品卸売業(総合商社)」「機械器具卸売業」「その他卸売業」の経常利益DIがマイナスであるのに対し、「繊維・衣服など卸売業」「飲食料品卸売業」「建築材料、鉱物・金属材料など卸売業」の経常利益DIはプラスとなっている。一般消費者向け、建設関連、加工製造関連が改善しているのに対し、組立製造関連が依然として厳しい状況にあると考えられる。
小売業:
前回との比較では11.9ポイントと大幅な改善となっている。経常利益増加要因では「自社の販売や受注における数量が増加している」が最も多いものの、「人件費などの固定費削減施策の成果が出てきている」という回答割合も約3割に達している。小売業においては、正社員を減らしパートの割合を増やすといった人件費削減が短期的な収益改善策として取られがちだ。しかし、それによって顧客満足度や業務効率の低下を引き起こしてしまいやすい。ITを活用し、商品の調達や陳列において工夫を凝らすなどといった中長期的に持続可能な施策を講じる必要がある。
IT関連サービス業:
前回との比較では4.8ポイントの改善となっている。経常利益増加要因では「自社の販売や受注における数量が増加している」に加え、「人件費などの固定費削減施策の成果が出てきている」が多く挙げられてる。IT関連サービス業においてはコストに占める人件費の割合が高く、人的リソースの最適化によって収益率を改善できる余地が大きい。一方で、経常利益減少要因では「日本国内の需要はまだ回復していない」が最も多く挙げられており、他業種の経常利益DI改善がIT投資に反映されるにはまだ時間を要するものと推測される。
サービス業:
前回との比較では11.7ポイントと大幅な改善となっている。経常利益増加要因では「自社の販売や受注における数量が増加している」が最も多いが、「人件費などの固定費削減施策の成果が出てきている」という回答割合も約3割に達している。小売業と同様に人件費の削減による安易な収益改善は中長期的にはサービス品質の低下を引き起こす要因となりうる。ITを活用した業務効率の改善などによって、品質を落とさずに提供価格を可能な限り下げることでデフレ状況を耐え抜くといった取り組みが必要となってくる。


▼IT活用提案の壁は「現状維持志向」、現行業務の問題点を具体的に指摘することが有効

以下はIT投資DIの業種別傾向について記述したものである。IT投資DIに関するグラフは前頁の下段に掲載している。
組立製造業:
前回との比較では8.7ポイントの改善となっている。IT投資増加要因としては「業務効率を改善し、収益を向上させるためのシステム投資が必要」「中長期視点でITコストを削減するため、現システムの変更が必要」が多く挙げられている。一方で、IT投資減少要因としては「IT投資の必要性は感じているが、それだけの資金余力がない」「予定/計画しているIT投資はあるが、景気が不明瞭なため延期中である」といった回答が多い。IT活用ニーズはあるものの、厳しい経済環境の中で実行に移すことが難しい状況であることがうかがえる。円高の進行などによっては再度IT投資DIが落ち込む可能性もあるため、ITを提供する側としては初期投資を極力抑え、短期間で導入および効果確認のできる比較的を絞ったソリューションを検討することが有効と考えられる。
加工製造業:
前回との比較では-2.3ポイントの下落となっている。IT投資減少要因としては「現状を維持する以外、特にITに対して投資をする必要はない」が最も多く挙げられている。だが、その一方でIT投資増加要因として「取引先や顧客のニーズ変化に追随するためのシステム投資が必要」という回答も3割弱に達しており、組立製造業と比べても高い割合となっている。これは経常利益増加要因として挙げられた、「売れる/売れない商材の取捨選択を適切に行っている」に対応した取り組みと考えられる。今回はIT投資DIが微減となったものの、経常利益DIでは改善が見られるため、今後はIT投資DIも改善する可能性がある。ITを提供する側としては少量多品種の生産プロセスへの対応などを通じ、ニーズ変化に常に対応できる基盤作りを支援する取り組みが有効と考えられる。
流通業(運輸業):
前回との比較では-11.7ポイントと大幅な下落となっている。経常利益DIでは改善が見られたものの、既に述べたように人件費などの固定費削減に負うところが少なくない。そのため、IT投資減少要因を尋ねた結果でも「予定/計画しているIT投資はあるが、景気が不透明なため延期中である」「予定/計画しているIT投資があったが、景気が不透明なため中止をした」といった回答が目立つ。
スマートデバイスとクラウドを組み合わせて従来よりも安価に導入できる配車管理システムを提案するなど、人件費削減に頼らない収益改善策の提案が求められている。
建設業:
前回との比較では-0.3ポイントとわずかに下落している。IT投資増加要因では「業務効率を改善し、収益を向上させるためのシステム投資が必要」「取引先や顧客のニーズ変化に追随するためのシステム投資が必要」が多く挙げられている。工事案件別に原価管理による不採算案件発生の防止や、資材/部材の迅速で正確な発注管理による工期の短縮といった取り組みが該当するものと考えられる。経常利益DI は改善しているものの、IT 投資減少要因では「現状を維持する以外、特にITに対して投資をする必要はない」という回答が依然として最も多い。経済環境の変動に耐えられる体質を作るためにも、IT活用の有効性を広い裾野に訴えていく取り組みが引き続き必要となっている。
卸売業:
前回との比較では10.1ポイントと大幅な改善となっている。ただし、IT投資増加要因としては「現状を維持するため、ハードウェアやソフトウェアの更新が必要」が5割と他業種と比べて高く、IT投資減少要因においても「現状を維持する以外、特にITに対して投資をする必要はない」が5割を越えている。このように現状維持志向が強いため、ITを提供する側としては現行業務の問題点(小売業者との受発注プロセスでの非効率性など)を具体的に指摘し、問題意識を持たせる段階から取り組む必要があると考えられる。
小売業:
前回との比較では-5.4ポイントの下落となっている。卸売業と同様にIT投資増加要因では「現状を維持するため、ハードウェアやソフトウェアの更新が必要」が多く、IT投資減少要因では「現状を維持する以外、特にITに対して投資をする必要はない」が多い。しかし、IT投資減少要因においては「予定/計画しているIT投資はあるが、景気が不透明なため延期中である」という回答も2~3割存在しており、今回見られた経常利益の改善が持続すればIT投資DIも上向く可能性がある。ただし、その際にも現状維持志向をクリアするための業務改善提案が必要となってくる。
IT関連サービス業:
前回との比較では3.7ポイントの改善となっている。IT投資増加要因では「業務効率を改善し、収益を向上させるためのシステム投資が必要」が最も多い一方、IT投資減少要因では「IT投資の必要性を感じているが、それだけの資金余力がない」が最も多い。
顧客のシステムを預かることのできる体制構築を進める中で、先行投資の負担が大きくなりつつある状況がうかがえる。
サービス業:
前回との比較では-0.3ポイントの微減となっている。IT投資増加要因では「業務効率を改善し、収益を向上させるためのシステム投資が必要」が最も多いが、一方のIT投資減少要因では「現状を維持する以外、特にITに対して投資をする必要はない」が最も多い。個別の業態に即したIT活用提案を行い、現状維持志向をクリアする工夫が引き続き必要になると考えられる。


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株式会社ノークリサーチ調査設計、分析、執筆:岩上由高
東京都足立区千住1-4-1東京芸術センター1705
TEL 03-5244-6691 FAX 03-5244-6692
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用語解説

[IT投資DIの定義]
今四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを尋ね、「増える」と「減る」の差によって算出した「IT投資意欲指数」
[経常利益DIの定義]
前回調査時点と今回調査時点を比較した場合の経常利益変化を尋ね、「増えた」と「減った」の差によって算出した「経常利益増減指数」

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