AsiaNet 53794
共同JBN 0871 (2013.7.26)
【ロンドン2013年7月26日】英国立医療技術評価機構(NICE)は原発肝がん患者の治療にSIRT(選択的体内照射療法)の通常使用を支持する指針を公表した(1)。この決定は現在利用できる効果的な治療選択肢が少ない肝細胞がん(HCC)と呼ばれる最も一般的な形態の原発性肝がん患者にとってよいニュースである。
SIRTは手術不可能な肝臓腫瘍の治療に使われるもので、数百万個の小さな放射性微小球を肝動脈(血液供給)を通じて肝臓内に注入する方法である。微小球はイットリウム90と呼ばれるベータ線を放出する放射性同位元素がコーティングされている。この放射能が腫瘍細胞に局所治療を提供する一方で正常な幹細胞は保護する。SIRTの1形態であるSIRスフィア微小球は2002年に欧州で承認され、世界で3万5000回以上の治療が提供された。英国では約500人の患者がこの治療を受けた。2013年7月24日に公表されたNICEの指針は、HCC患者についてのSIRTの安全性、効能の科学的な証拠はいまでは適切だとみなされることを確認しており、これは適格な国民保険サービス(NHS)患者にとってこの治療へのアクセスが改善されることを意味している。
インペリアル・カレッジのハマースミス病院のハープリート・ワサン腫瘍医長は「SIRTは、利用できる効果的な治療選択肢がほかにはわずかしかない手術不可能な原発性肝臓腫瘍患者にとって革新的な治療法である。NICEがHCCに対するSIRTの最新の証拠を支持する指針を発表したのは素晴らしいニュースであり、適格な患者がNHSでSIRTを利用できることをこれは保証するはずである。その結果として、時間のかかる経費支払い申請と承認プロセスのために『処方せんの地域格差』と治療の遅れが適格なNHS患者のSIRT治療にとって問題にならないように期待する」と語っている。
▽肝細胞がん(HCC)について
HCCは通常はウイルス性肝炎の感染やアルコール関連の肝臓の損傷など根本原因である肝臓のため、肝臓がひどい損傷を受けたり、肝硬変になった人に最も多く起こる。世界で最も多い10種のがんの一つであり、毎年約75万人がこの病気と診断され、がんのなかでは3番目に多い死因である(2)。HCCが起こる頻度が最も高いのはアジア・太平洋、南欧など肝炎と診断される人が最も多い地域である。
肝細胞がんが治癒するには手術以外の手段はなく、肝臓の病気の部分を切除または焼灼するか、ドナーの肝臓を移植するしかない。しかし、これらの処置は大多数の患者にとって不適切であり、こうした患者の生存期間は主としてがんと診断された時点での肝臓の状態と肝臓の腫瘍の大きさ次第だが、数ヶ月から2年あまりまでである。
▽その他の情報
SIRスフィア微小球はオーストラリア、欧州連合(CEマーク)、ニュージーランド、スイス、トルコ、その他数カ国で切除不可能な肝臓腫瘍の治療への使用が承認されている。
またSIRスフィア微小球は米国ではFDA PMAの全面承認も受けており、フロクスウリジンを使った肝動脈内化学療法との併用で原発性大腸がんから転移した切除不可能な肝臓腫瘍の治療向けに処方されている。
SIR-SpheresはSirtex SIR-Spheres Pty Ltdの登録商標である。
参照:
1) National Institute for Health and Clinical Excellence. Selective internal radiation therapy for primary hepatocellular carcinoma (Interventional Procedure Guidance 460). London: NICE, July 2013.
2) GLOBOCAN. Liver Cancer Incidence and Mortality Worldwide in 2008. 732-EUA-0713
ソース:Sirtex Medical Limited
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