Tokyo, Aug 25, 2014 - ( JCN Newswire ) - OKIは、このたびフィリピン科学技術省向けにIP映像配信システム「OKI MediaServer」をベースとした実験用の「災害時用ブロードバンド・無線システム」を構築し納入しました。本システムは科学技術省より2014年7月22日にアテネオ・デ・マニラ大学(フィリピン ケソン市、以下 アテネオ大学)に移管され、災害時用の強靭な情報通信システム構築の実現に向けた各種実証実験に使用されます。
フィリピンは、昨年だけでも、多くの被災者を出した台風30号や10月のマグニチュード7.2の地震など、自然災害が発生し、大きな被害を受けています。そのためフィリピン科学技術省とアテネオ大学は、自然災害発生時の被害を最小限にとどめるためには災害地への的確・迅速な伝達が重要であるとの認識から、その伝達手段について検討を重ねてきました。災害時には通信ネットワークが分断された状況が発生しがちで、その場合には災害に関するさまざまな情報(災害内容、家屋や各種システム被害状況、避難情報など)を的確に伝えることが困難になります。
そこで、特定エリアに独自の映像・音声やデータ放送を提供するサービスであるエリアワンセグ※1技術が着目されました。固定網を用いるIPTVに加えエリアワンセグなど無線も併用した災害時用通信システムをアテネオ大学のアテネオ・イノベーション・センターに設置し、「災害時用ブロードバンド・無線システム:迅速な災害情報の展開のための強靭なネットワークと再構成可能な情報システム※2」の研究を実施することが決まりました。本研究は、様々な通信手段を用いて的確に災害時の情報を伝達する技術やサービスの開発を目的としています。この研究は、アジア・太平洋電気通信共同体(以下 APT)※3の人材育成プロジェクトの一環として、フィリピン科学技術省を中心とし、アテネオ大学、PLDT※4、慶応義塾大学、OKI、三菱電機株式会社をメンバーとするグループによって進められ、OKIは実験用の「災害時用ブロードバンド・無線システム」の構築を担当しました。
本システムは国際電気通信連合(以下 ITU)※5の国際標準に準拠したOKI のIP映像配信システム「OKI MediaServer」を中心に構築したもので、災害情報を、TV向けにはIPTV STBを使い、タブレットなどを含む携帯端末向けにはワンセグ用送信機を使って配信します。災害発生現場の撮影映像や関連情報をIPネットワーク経由で高品質な状態で伝達するとともに、災害でネットワークが分断された地域には、エリアワンセグ放送やWi-Fi(R)を使って映像・音声・データを配信することが可能となっています。「OKI MediaServer」は、IPTV STB、Wi-Fi端末、およびワンセグ用送信機に標準規格に則した安定した映像配信を行います。IPTV STBはIPTV基本端末仕様(ITU-T H.721)、日本のデータ放送の規格をベースに作成されたLIME※6と呼ばれる軽量対話型マルチメディア環境(ITU-T H.762)および誤り訂正符号(ITU-T H.701)に準拠しています。エリアワンセグは、フィリピンが採用を決定したISDB-T※7に基づいており、今後フィリピンで受信できる端末が普及していくことが予想されます。Wi-Fi端末にはHLS※8で配信をしています。
本システムは、2014年8月25日・26日、タイ・バンコク市で開催される国際標準準拠・相互接続商品の試験および展示イベント「APT/ITU C&Iイベント※9」のワークショップと、29日まで開催されるアジア・太平洋電気通信標準化機関(ASTAP)※10で紹介されます。
OKIは、今回の実験システム納入を契機に、アジア・太平洋地域の通信キャリアやサービス事業者向けの市場ニーズに合わせた商品開発・機能の拡張、関係技術の標準化の推進・普及活動を活発化し、国内外の通信キャリアやサービス事業者への貢献を目指していきます。
【「OKI MediaServer」について】
OKIが開発したIP映像配信システム。代表的な映像配信機能を標準機能として備えており、VOD、リニアTV、ライブ配信システム、スタートオーバ※11、中継・監視システムをはじめ、映像と音声を活用した多彩なシステムを容易に構築できます。ITU-T IPTV標準の相互接続イベントにおいてはレファレンスサーバーとしての実績を持っています。日本国内では通信キャリアによるテレビ向けの商用IPTVサービスや、各国の大学などでの実験に採用されています。
映像配信システム商品紹介サイト: (リンク »)
【用語解説】
※1: エリアワンセグ
エリアワンセグは、ある特定エリアに限定したワンセグ放送。利用者はワンセグ放送に対応した携帯端末を通して、映像、音声、データを受信することができる。配信者は、ワンセグ放送に対し局所的な配信サービスをより簡易に実現できるため、災害地域での避難所の情報や配給の情報など、その場所で必要な情報を効率的に配信することができる。また、放送であるため、何台でも同時に視聴が可能であり、情報量の多い動画も扱えるといった特長がある。
※2: 災害時のブロードバンド・無線システム:迅速な災害情報の展開のための強靭なネットワークと再構成可能な情報システム(Broadband wireless for disaster operations: Resilient networks and reconfigurable information systems for rapidly deployable disaster response)
ブロードバンド(固定網)を用いて高品質映像による放送やVODを提供するIPTVと、携帯端末でも受信可能な無線放送システムであるエリアワンセグおよびWi-Fiを組み合わせたシステム。本システムにより、災害時の通信ネットワークが分断された地域には、放送コンテンツとして提供される災害情報をエリアワンセグで展開できる。また、一部通信ネットワークが復旧した地域ではWi-Fiを用いることで災害地の映像情報、被災者の情報などの収集も可能となる。本システムは、さまざまな災害情報の収集と展開を行うサービスを開発するための基盤システムである。
※3: アジア・太平洋電気通信共同体(APT: Asia-Pacific Telecommunity)
アジア・太平洋地域の電気通信の開発促進および地域電気通信網の整備・拡充を目的とする機関。2014年8月現在で日本をはじめ38カ国が加盟している。
※4: PLDT(The Philippine Long Distance Telephone Company)
フィリピンの固定・携帯通信事業者。
※5:
国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)
国連の専門機関。ITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)は、ITUの電気通信標準化部門で、世界規模での電気通信の標準化を推進するために、技術、運用および料金についての課題を研究し、また、それらについての勧告を採択することを任務としている。
※6: LIME(Lightweight Interactive Multimedia Environment: 軽量対話型マルチメディア環境)
ITU-Tの定めたIPTVの標準化勧告のうち、端末に関するH.700シリーズの勧告の一つで、IPTVのためのマルチメディア・コンテンツの制作・実行環境を規定したH.762勧告。LIMEは、双方向コンテンツ作成のために、HTML、ECMAScript、CSSのプロファイルを規定している。音声、動画、静止画、テキストをサポートしている。動画は実際のIPTVのサービスで使用されるVODやリニアTVのコンテンツを指定できるという、IPTVサービスでの運用を意識した仕様になっている。LIME標準仕様で記載されたコンテンツは、TV画面上で動作するアプリケーションのように見えるので、LIMEアプリケーションとも呼ばれる。H.700シリーズにはH.762以外に、H.701(エラー訂正)、H.721 (基本端末)、H.741(視聴情報)、H.750(メタデータ)、H.761(ginga-NCL)、H.770(サービス発見)が含まれる。
※7:
ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial: 地上デジタル放送用統合デジタル放送サービス)
ISDBは、日本放送協会(NHK)が中心となって開発し、日本、フィリピン、中南米諸国が採用するデジタル放送の方式。ISDB-Tは、地上デジタル放送用のISDB。ISDB-T方式のメリットとして、電波が強く一つの設備から多くの情報発信ができることによる経済性の高さ、携帯電話・移動端末向けの1セグメント部分受信サービス(いわゆる ワンセグ)によって災害情報などを含むタイムリーな情報発信が可能になること、インターネットを通じたインターアクティビティが可能になり、国民の声をダイレクトに政府などに発信できることによる市民生活の向上などが挙げられる。
※8: HLS
HLSは、HTTP Live Streaming の略。米アップル社によって開発された、動画をストリーミング送信するためのプロトコルの一つ。スマートフォンやタブレット端末の動画配信で使用されることが多い。本システムでは、Wi-Fi端末としてスマートフォンやタブレット端末を使用しており、HLSを用いて「OKI MediaServer」から動画を配信している。
※9: APT/ITU C&Iイベント
ITUとAPTが主催する国際標準準拠・相互接続商品の試験および展示イベント。第1回は、第22回アジア・太平洋電気通信標準化機関(APT Standardization Program-22)に併設して開催された( (リンク ») )。第2回は2014年8月25、26日に第24回アジア・太平洋電気通信標準化機関に併設して開催される。
※10: アジア・太平洋電気通信標準化機関(ASTAP: Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program)
APT内に1998年2月に設置された、アジア・太平洋地域における標準化活動の活性化、各国の電気通信サービスの普及促進、同地域としての国際標準の策定への貢献を目的した組織。
※11: スタートオーバ
サービス事業者側で、リニアTVとして提供されている番組を、VODサーバーに蓄積することで、視聴者が番組の途中から視聴を開始した場合でも、先頭に戻って視聴できるようにするサービス。
概要:沖電気工業株式会社
OKIは米国でグラハム・ベルが電話機を発明したわずか5年後の1881年に創業した、日本で最初に電話機を製造した情報通信機器メーカーです。先見性と勇気をもって果敢に挑戦・行動するという、創業以来の「進取の精神」を連綿と受け継ぎ、ブランドスローガン「Open up your dreams」のもと事業展開しています。現在、「金融システム」「通信システム」「情報システム」「プリンタ」「電子部品・モジュール他」の5つの分野において、OKIグループは社会の発展に寄与する最先端技術の商品・サービスをお客様にお届けし、世界の人々の快適で豊かな生活の実現に貢献しています。詳細はこちらからご覧ください。 (リンク »)
お問合せ先:
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
OKI 広報部 山本
電話: 03-3501-3835
e-mail: press@oki.com
本件に関するお客様からのお問い合わせ先
OKI 通信システム事業本部 キャリアシステム事業部 映像事業推進部
電話: 048-420-7012
e-mail: oms-inquiry@oki.com
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