2021年 Windows 11が中堅・中小企業のPCライフサイクルに与える影響

ノークリサーチは2020年~2021年のPC活用動向に関する調査結果を元に、Windows 11のリリースが中堅・中小企業のPCライフサイクルに与える影響について考察を行った。

株式会社ノークリサーチ

2021-09-08 12:00

<機能アップデートの方針を見極めながら、新しいPC環境に向けた啓蒙/提案を進めることが大切> ■Windows 11における機能アップデート(FU)の頻度とサポート期間はWindows 10と異なる ■多くの企業がWindows 10からWindows 11へ移行する時期には3つのケースが考えられる ■1対1のリモートデスクトップから、DaaSへのステップアップ提案を視野に入れることが重要
PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2021年9月8日

2021年 Windows 11が中堅・中小企業のPCライフサイクルに与える影響

調査設計/分析/執筆: 岩上由高

ノークリサーチ(本社: 〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室:代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は2020年~2021年のPC活用動向に関する調査結果を元に、Windows 11のリリースが中堅・中小企業のPCライフサイクルに与える影響について考察を行った。本リリースは「2021年版 中堅・中小企業のPC/スマートデバイス活用実態レポート」のサンプル/ダイジェストである。

<機能アップデートの方針を見極めながら、新しいPC環境に向けた啓蒙/提案を進めることが大切>
■Windows 11における機能アップデート(FU)の頻度とサポート期間はWindows 10と異なる
■多くの企業がWindows 10からWindows 11へ移行する時期には3つのケースが考えられる
■1対1のリモートデスクトップから、DaaSへのステップアップ提案を視野に入れることが重要


調査対象企業: 年商500億円未満の中堅・中小企業700社(日本全国、全業種)(有効回答件数)
調査対象職責: 経営層およびIT活用の導入/選定/運用に関わる立場
調査実施時期: 2021年5月中旬


■Windows 11における機能アップデート(FU)の頻度とサポート期間はWindows 10と異なる
Windows 10のリリース以降、中堅・中小企業やそれを支えるIT企業はWaaS(Windows as a Service)の考え方に基づく「機能アップデート(FU)」の対応に苦慮してきた。 Windows 10は「Windowsの最後のバージョン」とされていたが、Microsoftはこの方針を変更し、2021年10月5日(以降の日付はいずれも米国時間)にWindows 11をリリースすることを発表した。
LTSCなどを除き、多くの中堅・中小企業におけるWindows 10のサポート期限は2025年10月14日となる。従来と同様であれば、サポート期限近くまでWindows 10の利用が続く可能性がある。だが、ここで留意すべき点が機能アップデートに関する変更だ。
Windows 10の機能アップデートは「半期チャネル」(SAC)(年2回の更新)、各アップデートは18カ月のサポート期間(EnterpriseとEducationのエディションにおける下期アップデートは30カ月)が一般的だった。Windows 11ではこれが年1回となり、各アップ
デートのサポート期間はHomeとProのエディションでは24カ月、EnterpriseとEducationでは36カ月となる。つまり、Windows 11の機能アップデートはWindows 10と比べて頻度が低くなり、サポート期間が長くなる。
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業700社に「WaaSの対応方針」を尋ねた結果を2020年と2021年で比較したものだ。「年2回の「機能更新プログラム」を着実に適用する」の回答割合は2020年から2021年にかけて下がっており、ユーザ企業としても機能アップデートの負担を軽減したいと考えていることが確認できる。2021年秋にはWindows 10の「21H2」アップデートがリリースされるが、その後も年2回を継続するのか?Windows 11に合わせる形で実質的に年1回となるのか?などによって、Windows10からWindows 11への移行タイミングも大きく変わってくる。次頁以降では調査データを踏まえながら、この点について考察していく。

■多くの企業がWindows 10からWindows 11へ移行する時期には3つのケースが考えられる
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業700社に「WaaSの取り組み状況」を尋ねた結果を2020年と2021年で比較したものである。
1.と2.の項目における変化が示すようにWaaSの認知は高まっていることが確認できるが、依然として4.の手作業による対応が最も多く、5~8といった組織的または総合的な対応は一部に留まっている。 つまり、中堅・中小企業では半期毎の機能アップデートに対応するための体制や基盤がまだ整っていない。逆に言えば、旧来の年単位でのサービスパックサポートと同レベルの更新頻度に戻ったとしても、「WaaSのために投じた費用/資産が無駄になった」と捉える企業は少ないと考えられる。
前頁および上記で触れたように中堅・中小企業が機能アップデートの負担軽減を望む中、Windows 11の機能アップデートはWindows 10と比べて頻度が低くなり、サポート期間が長くなる。すると、Windows 10における「21H2」以降の機能アップデートがどうなるか?によって、以下の3つの展開が考えられる。(本リリース執筆時点では「21H2」以降の詳細はまだ発表されていない)
ケース1: 「21H2」が最後の機能アップデートになる
⇒ 多くのユーザ企業がWindows 10をサポート期限まで利用する
ケース2: Windows 10も年1回のアップデートに変更
⇒ Windows 10とWindows 11が混在する状態が2025年まで続く
ケース3: 従来と同様に年2回のアップデートを継続
⇒ 負担の少ないWindows 11への移行が2025年以前から進む
また、上記には「Windows 10搭載PCの出荷がいつまで続くか?」など、他の要因も関わってくる点に注意する必要がある。
一方、全く別の選択肢として、「DaaS(Desktop as a Service)や社内設置型VDIを導入する」や「Windows 以外のOSに切り替える」も考えられるが、前頁のグラフ下段が示すようにこうした手段を検討するユーザ企業はごく僅かに留まっている。
IT管理/運用の人員が限られる中堅・中小企業にとっては、現状維持という観点ではケース1が望ましい展開かも知れない。だが、DXやコロナ禍によって業務システムを利用する場面はオフィス内から、店舗、工場/現場、移動中の車内、従業員の自宅など多種多様な広がりを見せている。そうした中で利便性と安全性を両立し、作業負担を軽減するためには最新のPC環境に基づく管理/運用を選択する方が得策だ。
そのためにはIT企業がユーザ企業に対して新たなPC環境へと移行を促すための啓蒙や提案を行う必要がある。次頁ではその端緒となる事柄について考察していく。


■1対1のリモートデスクトップから、DaaSへのステップアップ提案を視野に入れることが重要
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業700社に「新規導入/増強予定の業務システム端末の形態」を尋ねた結果である。(選択肢の説明は以下の通り)

<<デスクトップPC>>
分離型デスクトップPC 本体とディスプレイが分離しているデスクトップPC
一体型デスクトップPC 本体とディスプレイが一体化したデスクトップPC
超小型デスクトップPC 片手で運べるサイズの分離型デスクトップPC
<<ノートPC>>
ノートPC(ラップトップPC)  入力装置(キーボード、タッチパッド、ポイントスティックなど)と出力装置(ディスプレイ)が本体と一体化しており、持ち運びも可能なPC
タブレットPC(2in1 PC)  「ノートPC」と同じ形状を持つが、折り畳み変形やキーボード脱着などによって「タブレット」としても利用可能なPC
<<スマートデバイス>>
スマートフォン 汎用的なアプリケーションの開発/配布の仕組みを備え、インターネット接続可能な携帯電話
タブレット 汎用的なアプリケーションの開発/配布の仕組みを備えており、インターネット接続可能かつ画面サイズが7インチ以上の端末
<<デスクトップ仮想化など>>
リモートデスクトップ  社内のPCに社外から接続して画面共有や遠隔操作を行う形態
DaaS(Desktop as a Service) クラウド上に複数台のPC環境を集約し、ネットワーク越しに操作する形態
社内設置型VDI 社内に複数台のPC環境を集約し、ネットワーク越しに操作する形態
データレスPC PC内のデータのみがネットワーク越しに社内やクラウドに格納されている形態

「分離型デスクトップPC」、「ノートPC(ラップトップPC)」、「スマートフォン」の回答割合が相対的に高い一方、「DaaS(Desktop as a Service)」、「社内設置型VDI」、「データレスPC」はいずれも1割未満に留まっている。そうした中、コロナ禍の影響などもあり、「リモートデスクトップ」は2割弱の比較的高い値を示している。リモートデスクトップは1対1の接続だが、これを契機としてDaaSや社内設置型VDIに進むことができれば、利便性と安全性を両立したPC環境に近づくことができる。サーバ管理/運用の負担を考えると、中堅・中小企業にとってはDaaSの方が敷居は低い。 従来のDaaSはAVD(Azure Virtual Desktop、旧:WVD)などのようにライセンス体系が複雑かつ従量課金を採用していることが、ユーザ企業のみならず提案するIT企業にとっても障壁となることが少なくなかった。 定額制を採用した「Windows 365 Cloud PC」の登場などにより、こうした状況も今後は変わっていくと予想される。IT企業としてはリモートデスクトップからDaaSへとステップアップする提案を視野に入れておくことが重要となる。
また、Windows 10からWindows 11へ移行するメリットを訴求することも大切だ。例えば、Windows 11ではTeamsが統合される。コロナ禍が収束した後も、手軽にオンラインで会議できる環境は企業規模を問わず重宝される可能性が高い。従来、OS更新では移行を無事に終えることに精一杯で、ユーザ企業もIT企業も新しいOSのメリットを享受する余裕がなかったといえる。Windows 10からWindows 11への移行では前頁のケース1~3のいずれの方針になるか?がまだ明らかになっていないが、その分、新しいOSで何ができるのか?を学ぶための時間がある。(IT企業にとってはWindows 11で廃止されたWindows 10の機能を知ることも今後の提案に役立つ) こうした観点の啓蒙/提案を進めていくことも、PC環境の改善には大切と考えられる。

本リリースの元となる調査レポート

『2021年版 中堅・中小企業のPC/スマートデバイス活用実態レポート』
【対象企業属性】(有効回答件数:700社)
年商: 5億円未満 / 5億円以上~50億円未満 / 50億円以上~100億円未満 /100億円以上~300億円未満 / 300億円以上~500億円未満
従業員数: 20人未満 / 20人以上~50人未満 / 50人以上~100人未満 / 100人以上~300人未満 / 300人以上~500人未満 /500人以上~1000人未満/ 1000人以上~3,000人未満 / 3,000人以上~5,000人未満 / 5,000人以上
業種: 組立製造業 / 加工製造業 / 建設業 / 卸売業 / 小売業 / 運輸業 / IT関連サービス業 / 一般サービス業
地域: 北海道地方 / 東北地方 / 関東地方 / 北陸地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国地方 / 四国地方 / 九州・沖縄地方
その他の属性: 「IT管理/運用の人員規模」(12区分)、「ビジネス拠点の状況」(5区分)
【価格】 180,000円(税別) 【発刊日】 2021年末予定

ご好評いただいている既刊の調査レポート 各冊180,000円(税別)

「2021年版DXとコロナ禍を踏まえた中堅・中小企業のIT投資レポート」
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「2020年版中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」
ERP/ 会計/ 生産/ 販売/ ワークフロー/ CRM/ BIなど10分野の導入済み&新規予定のシェアとユーザによる評価を網羅
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「2020年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート」
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「2020年版 中堅・中小企業の業務システム購入先のサービス/サポート評価レポート」
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