世界初、空間分割多重技術を用いた伝送容量拡大と消費電力低減の両立に成功 ~マルチコア構造を用いた一括光増幅器により消費電力を67%低減~

日本電信電話株式会社

From: Digital PR Platform

2023-09-28 15:10


 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、増幅用光ファイバに12コアを高密度に配置したマルチコア構造を用い、主要な通信波長帯であるC帯(波長1550 nmの近傍)において世界で初めてマルチコア一括増幅による、伝送容量拡大と省エネルギー化を両立しました。本成果により、従来技術に比べ消費電力を67%低減できることを世界で初めて実証し、マルチコアファイバ(MCF)を用いた伝送容量拡大技術に省電力化の付加価値を見出しました。本実証結果をもとにIOWN構想(※1)がめざす10チャネルを超える空間分割多重伝送路の一候補として2030年目途での技術確立をめざします。
 今回の成果は、スコットランドで開催される光通信技術に関する世界最大の国際会議(49th European Conference on Optical Communications (ECOC))に採択され、現地時間の2023年10月4日に発表いたします。


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図1:コアの面積比率と従来技術比消費電力の関係

1.研究の背景
 光ファイバを用いた通信基盤は現代の生活において必要不可欠となっており、今後も6G無線通信の導入、動画視聴、自動運転や生成AIなどの多様なサービスの普及に伴い、データ需要はますます増加すると考えられます。このため、光通信基盤に求められる伝送容量も指数関数的に増大すると考えられており、NTTにおいても、光ファイバ通信の持続的な伝送容量の増大に向けた研究開発を進めています。例えば、マルチコアファイバなどの空間分割多重技術(※2)によって、今後更なる伝送容量の拡大が期待されますが、現状の光増幅方式では伝送容量の拡大に伴い、長距離光通信で必須となる光増幅器(※3)の消費電力も増大してしまうという課題がありました。
 そこで、伝送容量の拡大と抜本的な低消費電力化を両立すべく、光増幅器におけるマルチコア構造を用いた一括光増幅による省電力化について検討しました。

2.研究の成果
 マルチコアファイバなどの空間分割多重技術による伝送路の容量拡大に伴い、既存の増幅技術では光増幅器の台数が増加してしまい伝送システム全体の消費電力が増加してしまいます。これに対し、マルチコア構造を用いた光増幅技術を適用すると、増幅用の励起光(※4)を複数コアで共有できるため、既存の単一コア構造を用いた光増幅技術に比べ省電力化が実現できると期待されていました。
 本研究では、2つの要素技術を用い、従来技術に比べ消費電力を67%低減(※5)できることを世界で初めて実証し、マルチコアファイバを用いた容量拡大技術に省電力化の付加価値を見出しました。

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図2:伝送路光ファイバの多心化/マルチコア化と光増幅器構成(左図)、
伝送容量と消費電力の関係の概要(右図)

3.技術のポイント
①増幅用光ファイバ断面内におけるコアの面積比率(コア密度)を最大化


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図3:コア励起方式の概要(左図)、クラッド励起方式の概要(右図、提案方式)

 図3に示すように、従来の光増幅器(コア励起方式)では、コア単位で励起光を入射してコア内を伝搬する信号光を増幅しますが、今回検討した光増幅器ではクラッド励起方式という、光ファイバ断面全体に励起光を入射して断面内の複数コアを伝搬する全ての信号光を一括で増幅する技術を用いています。本方式では、1台の励起光用レーザーを複数のコアで共有できるため、消費電力が低減できると期待されていました。一方で、励起光が広く光ファイバ断面全体を伝搬するためコア励起方式と比較して信号光と励起光の重なりが小さく、励起光から信号光へのエネルギー移行効率が低く(光増幅に使用されない励起光の割合が大きく)、その分多くの励起光パワーが必要となってしまい、期待される省電力性が得られていませんでした。
 本研究で用いた増幅用光ファイバは、図4に示すように、伝送路光ファイバと同等のマルチコア配置(コア数およびコア間隔)を維持したまま、増幅用光ファイバの外径(クラッド直径)とコア直径を、それぞれ縮小および拡大することでコアのクラッドに対する面積比率を最大化し励起光の使用効率を最大化しました。


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図4:コアの面積比率(コア密度)の最大化設計の概要

②光増幅器構成の最適化により励起光の損失を最小化
 増幅用光ファイバのコアの面積比率を高めるためにクラッド直径を縮小したことにより、伝送路光ファイバと増幅用光ファイバとの接続点でクラッド直径が整合せず励起光の一部が損失する課題が生じます。また、従来および提案技術のいずれにおいても、光増幅に使用されず増幅用光ファイバ伝搬後に残留し、除去されてしまう励起光が発生します。本検討では、図5に示すように、テーパー構造と反射デバイスを採用することで、励起光損失および残留励起光を低減し、さらに光増幅の効率を高めることに成功しました。

テーパー構造…増幅用光ファイバのクラッド径縮小により新たに発生する励起光の結合損失を最小化
反射デバイス…光増幅に使用されなかった励起光を再活用することで残留励起光の割合を最小化




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図5:励起光結合損失および残留励起光の最小化のイメージ

4.今後の展望
 今回、伝送容量の拡大をめざしつつ地球環境に配慮すべく、光増幅器の抜本的な省電力化を実証し、伝送路の大容量化と省電力化を両立しました。今後は伝送路光ファイバと本光増幅器を組み合わせた中継伝送路を構築し、省電力・長距離・大容量光増幅伝送を実証し、IOWNがめざす10チャネルを超える空間分割多重伝送路の一候補として2030年目途での技術確立をめざします。また、NTTが掲げるNTT Green Innovation toward 2040(※6)の推進に貢献します。

<参考・用語解説>
※1 IOWN構想
あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を中心とした革新的技術を活用し、これまでのインフラの限界を超えた高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。
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※2 空間分割多重技術
これまで光ファイバ1本あたりに1つであった光の伝搬を複数に拡張するための技術。例えば、1本の光ファイバの断面に光の通り道であるコアが複数あるマルチコアファイバがあり、伝送路光ファイバだけでなく、増幅用光ファイバにもマルチコア構造が適用可能です。
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※3 光増幅器
光ファイバ中を伝搬する光は距離によって減衰していきます。数百~数千kmの光ファイバ通信を可能とするために、減衰した光を増幅し次の光ファイバに中継させるための装置が光増幅器です。一般に、エルビウムという元素が添加された増幅用光ファイバ(エルビウム添加光ファイバ)に励起光を入射させることで信号光を増幅させます。
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※4 励起光
増幅用光ファイバ中で信号光を増幅するために入射する光です。一般的に信号光(1550 nm付近)とは波長の異なる980 nmの光を用います。

※5 従来技術比消費電力の概要
所望の増幅量を得るために必要な励起光パワーから、励起用レーザーの消費電力WLDを決定し、Nコアのクラッド励起ではWLD /N(コア励起の場合はN = 1)を光増幅器の消費電力として定義しました。


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参考図:コアまたはクラッド励起増幅器の消費電力比較の概要

※6 NTT Green Innovation toward 2040
「事業活動による環境負荷の削減」と「限界打破のイノベーション創出」を通じて、「環境負荷ゼロ」と「経済成長」といった背反する目的の同時実現をめざした新たな環境エネルギービジョンです。
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