開発、運用担当者の「共通言語」として活用
続く事例講演には、ワイヤ・アンド・ワイヤレスの技術運用本部 本部長 中野健司氏が登壇。「ビジネス・開発・運用の協調を実現したAppDynamics」と題して、AppDynamics導入の経緯と効果を紹介した。
ワイヤ・アンド・ワイヤレスは、公衆WiFiサービス「Wi2 300」や、スターバックスやドン・キホーテなどへのオリジナルWifiサービスの提供、訪日外国人向けのWiFiサービスなどを展開するKDDIグループの通信事業者だ。Wi2 300は国内最大級のエリアで展開し、WiFiスポットの数は20万以上に達する。
中野氏が指揮する技術運用本部は、サービスの開発と運用を一体的に行う組織で、ビジネス部門と連携しながら、サービスの品質、性能を担保している。課題となったのは、事業の急激な成長によるビジネス部門からのニーズの拡大だったという。
「オリジナルWiFiの展開に加え、2020年に向けて官民一体となったインバウンド需要も盛り上がっていました。その結果、アプリケーションの開発量が増え、外部委託の管理やマルチデバイス対応などに課題がではじめました。また、運用でも、多数のサービスを一元的に監視する必要がでるなか、性能監視や原因特定が難しくなっていました」(中野氏)
そうした課題解決に向けて取り組んだのが、DevOpsの強化と、クラウドファーストだった。まず、リリースサイクルの高速化、API化の推進、マイクロサービス化の推進を実施した。また、クウラド環境としてAWSへの移行を進め、インフラリソースを柔軟に管理できるようにするとともに、スケールアウト/ダウンの仕組みを活用。ハイブリッド環境での適材適所化を進めた。
ワイヤ・アンド・ワイヤレス
技術運用本部 本部長
中野 健司氏
「こうした施策で、ビジネス部門からのニーズ拡大には対応することができるようになりました。しかし、次の課題が生まれてきました。1つは、DevOps推進とともに、リリース品質の確保をどう行うかという課題。もう1つが、クラウド環境に移行したことにより、運用監視が複雑になったという課題です」(中野氏)
オンプレ環境では、インフラ監視だけで済んでいたが、クラウドを使ってAPI化を進めると、アプリケーションの監視が必要になる。実際、CPUやメモリ、ネットワークなどインフラが正常に動いていても、アプリケーションの動きが遅くなっていることが起きた。インフラ監視だけでは状況が見えにくくなり、クレームを受けるようになった。また、開発と運用の意思疎通も難しくなった。リリース速度と、安定運用というそれぞれの目的にあった指標で仕事をするため、お互いに話が通じにくくなっていた。そうした新しい課題を解決するために導入したのが、AppDynamicsだった。
「APM製品に期待していたのは、アプリケーションの可視化、サービス性能の可視化、ボトルネックと障害の可視化です。AppDynamicsを採用したポイントは、ハイブリッド環境のシステム構成を自動的に検知すること、ビジネス・トランザクションをサービス単位で自動的にまとめてくれること、しきい値を自動設定すること、原因をドリルダウンして特定できることなどです」(中野氏)
現在は、AppDynamicsをビジネス、開発、運用担当者の共通言語として活用しているという。まず開発部門では、リリース前テストにおける品質保証とチューニングに利用している。数多くの開発要求に対応するための助けになっているという。運用部門では、性能の常時監視用ダッシュボードとして利用している。例えば、アプリケーションのバージョンアップ時などに移行前と移行後を比較し、改善に役立てている。また、管理者の日常点検やコスト最適化にも活用している。
そのうえで中野氏は「今後は、DevOpsの他のサイクルでの活用や、利用者別・目的別ダッシュボードの作成、フロントでのユーザー体験測定などに活用していく予定です。2020年に向けたデジタルビジネス推進のエンジンにしていきたいと考えています」と展望を語った。