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講演:AWS × ZDNet Japan エンタープライズシステムにゴールはない!業務に寄り添うからこそ必要な「永久のβ版」思考

ZDNET Japan Ad Special

2019-11-29 12:00

モバイルデバイスの台頭やリモートワークの普及など、ビジネスを取り巻く環境は急速に進化している。では、業務を支えるシステムは、その変化に対応できているのだろうか。オープニングセッションでは、業務システムのクラウド化のメリットや、クラウド化環境の構築で留意すべきポイントを、ZDNet Japan編集長の國谷武史が、AWSでISV/SaaS ビジネス推進部 部長を務める岡﨑貴紀氏に聞いた。

クラウド化はUX向上にも貢献する

 冒頭、國谷は「企業の業務システム設計で、クラウド化は必然的な流れ」だとの認識を示した。岡﨑氏も「クラウド化への流れとして、コンシューマライゼーションが進んだことがあります」と指摘する。

 スマートフォンやモバイルデバイスを業務で利用するケースは多い。実際、マルチデバイス対応の業務アプリは増加している。政府が推進する「働き方改革」の一環として、こうしたデバイスを使い、業務の効率化を図る動きは依然として高まっている。

 岡﨑氏は、「スマホアプリのアップデート頻度に慣れたユーザーにとっては、アプリケーションは『固定されたもの』でなく、『頻繁に新機能が追加されるもの』という認識が広がって来ています。こうしたニーズに応えるためにも、クラウドの活用は自然な流れです」と指摘する。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 ISV/SaaS ビジネス推進部 部長 岡﨑貴紀氏
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
ISV/SaaS ビジネス推進部 部長
岡﨑貴紀氏

 ただし、モバイルデバイスは「どこでも働ける」という従業員の利便性を高める一方、セキュリティ上のリスクも高めてしまう。利便性とセキュリティのバランスをどのように保つかはIT管理者にとって難しい判断だ。両者の要件を満たしつつ、一定のユーザーエクスペリエンスを担保したうえで業務システムのクラウド化を図るためには、どのようなポイントに留意すべきなのか。岡﨑氏は「いわゆるウォーターフォール型ではなく、アジャイル型で全ての要件を最初から満たすのではなく、最低限必要な機能から始めることです。」と説明する。

 「『リーン・スタートアップ』にあるようにカスタマーボイスを如何に取り込んで、継続的な開発を実現する環境と体制を用意することが重要で、『どのようなサイクルで』『どのようなデータを』『どの程度の頻度で利用するか』といった定量的データと定性的なカスタマーフィードバックを得ながら改善を繰り返すのです」(同氏)

 ただし、こうした開発のサイクルを自社だけで実施するのは困難だ。そもそも、すべてのユーザーの要望を反映させることは難しい。パッケージソフトを自社用にカスタマイズしようとした結果、莫大なコストと時間を費やした企業は多い。しかも、システムが完了した頃には、新たな要件が発生し、「いつまで経っても使えないコストばかりかかるシステム」を抱えてしまうのである。

 岡﨑氏は「こうした事態を避けるためにも、パートナーコミュニティを活用してアプリやサービスを提供している会社と協業し、柔軟性のある環境を構築することが大切なのです」と力説した。

「いつでも止められる」特徴を活かす

 では、どのようなポイントを考慮してパートナーやサービスを選択すべきなのか。

 岡﨑氏は、「パートナーやサービスの選択時に、推進力を期待するなら企業内で課題感を持っている人材をボードメンバーに入れることです。その上で、当たり前のことですが『何から着手すべきか』の優先順位をつけて整理することがとても重要です。また、(クラウドのサービスが)既に稼働している既存システムやほかのシステムとAPI(Application Programming Interface)連携が可能かどうか判断できる人材も欠かせません」と説明する。

朝日インタラクティブ株式会社 ZDNet Japan 編集長 國谷武史
朝日インタラクティブ株式会社 ZDNet Japan 編集長
國谷武史

 たとえば、既存システムのリプレースの際、どこまで新システムがAPI連携できるか、APIの仕様がきちんと公開されているかは重要なポイントとなる。岡﨑氏は「全部自社のソリューションで解決しようとするパートナーよりも、さまざまなベンダーのサービスとの連携を前提にしているパートナーのほうが“柔軟性”と“コスト”の観点からもメリットがあります。講演されるWingarc社のSVFやMotionboardや、Intra-martもわかりやすい例だと思います。」と指摘する。

 「さまざまなベンダーがいろいろなサービスを開発しています。『As A Service』で提供されるアプリケーションやプラットフォームの特徴は、利用有無を柔軟に変更できることにもあります。ですから、ユーザー企業は各社の製品ロードマップを確認し、そのベンダーが何に重きを置いているか、どのような考え方で製品開発をしているのかを把握し、サービスを選択することも大切です」(岡﨑氏)

 情報系システムは、「何が最適なのか」を模索しながら、改善を繰り返す姿勢が重要になる。クラウドになると「システムの減価償却」という概念とサイクル自体がなくなっている。岡﨑氏は、「システムは常に変わっていくものだという認識を持つこと。そして、良いものは部分的に変えていくといった柔軟性を持つことが、『永久のβ版思考』なのです」と指摘した。

業務システムのユーザーを巻き込む

 クラウドの普及とともに進んでいるのが「ITの民主化」だ。業務システムのユーザーでITに精通している人材は少ない。しかし、クラウドサービスを活用すれば、業務側のユーザーでもシステムの選定や機能改善の提案などが可能になる。

 「クラウド化を推進している企業は、ID管理やセキュリティといった部分をIT部門が管理すれば、『業務システムのユーザー側にサービスや機能の選定権限を委譲してもよい』というマインドを持っています。こうした企業は、システムの一部に変更があったとしても柔軟に(変更を)受け入れて利用できるユーザーが多いのです」(岡﨑氏)

 最後に國谷はクラウドファーストで「リフト&シフト(クラウド移行)」をするための心得について言及した。

 手っ取り早いクラウド移行は、すでにリリースされているクラウド対応アプリケーションを利用することだ。岡﨑氏は「クラウド移行ありき」ではなく、既存のシステムリプレース時期やタイミングなども考慮する必要があると説く。「ワークロードによっては(現時点でクラウド移行することは)時期尚早の判断もあるでしょう。インフラレイヤーでのクラウド移行は、いつでも実現可能ですが、移行の評価するタイミングは早くに行うことが重要です」(同氏)

 AWSではインフラだけでなく、アプリケーションやプラットフォームをクラウドに移行する包括的なツールも提供している。たとえば、アプリケーションレイヤーでは他社のクラウドサービスを利用しつつ、タイミングを見計らってインフラをクラウド化するといった作業を支援する体制が整っているとのことを解説し本講演を締めくくった。

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