日本マイクロソフト株式会社
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パートナー テクノロジー
ストラテジスト
高添 修氏
今流行りのパブリッククラウドが登場して早10年。自社内から社外へ置き場所が変わることへの抵抗と闘いながら、その壁を突き破り、購買の仕組み、運用プロセス、アプリケーション設計などにも大きな影響を与えてきました。さらにクラウドは、利用者のニーズを受けて常に進化をし続けており、便利になるだけでなく、利用者があっと驚く新しい技術を世の中に発信することにも力を注いでいます。もちろん、企業ユーザーはモチベーション高くクラウドベンダーとのコミュニケーションを楽しみ、次の投資計画を考えるようになりました。会社の経営層でも口にするAI/IoT/Big Dataなどは、クラウド無くして語れないと言われるほどにビジネスの現場で利用されています。
しかしながら、ワクワク感をもたらす旬なITとは対照的に、自社内には大量のシステムとデータが残っています。10年前には企業インフラ投資の花形だった仮想化基盤は、今でも重要な役割を担っているものの、申請を出すと一週間後に仮想マシンが出来上がるといった状況から抜け出せていません。最近流行りのハイパーコンバージドインフラも、結局は仮想マシンを作り稼働させる基盤でしかありません。そのような現状を変えたいと願う企業にとって、クラウドはまばゆいばかりの存在に映るようになりました。
そんな中、クラウド化をゴールとして、とにかくクラウドに行くんだと大号令が出ている企業もあります。ただ、本来、企業ITが目指すのはビジネスに貢献するITの利活用であり、クラウド化そのものではないはずです。実際に、クラウド化をゴールの1つとして定義した企業でも、ただ置き場所がクラウドになっただけだったり、アプリケーションの延命措置としてクラウドを位置づけたりするところも少なくありません。これではクラウドの有効活用とは程遠いと言わざるを得ないでしょう。
何が間違ったのでしょう?それは、クラウドという言葉への向き合い方にあるとみています。マイクロソフトは「Cloud is a Model, not just a place」という言葉でクラウドとの向き合い方を表現しています。ここでいう「Cloud is a Model」というのは、パブリッククラウドを利用した企業が実感してきたスピード感や新しいアプリケーション設計、ITとの距離感のことであり、置き場所を変えるということではないと伝えたかったのです。そして、この言葉を具現化したソリューションがようやく世の中に登場しました。そう、Microsoft Azure Stack (以降 Azure Stack) です。
さて、Azure Stackとはいったいどのようなものなのでしょうか?その疑問にお答えすべく、こちらの図を見ていただきましょう。AzureとAzure Stackの画面を比較したものです。
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これを見てお分かりの通り、Azure Stackは自社データセンターで動かせるAzureそのものです。現時点では、すべてのAzureの機能が使えるわけではないものの、以下のサービスが利用可能になっています。
- 仮想マシン
- 仮想ネットワーク
- ストレージサービス (Blob, Table, Queue)
- 仮想マシンスケールセット
- Key Vault
- Web App (PaaS)
- Mobile App (PaaS)
- API App (PaaS)
- Azure Function (PaaS)
セルフサービスを武器に社内のインフラの利用方法をITを戦略的に利用するための部門に開放することはもちろんのこと、オンプレミスで利用するBlobストレージやKey-Value型のストレージ、Webアプリを簡単にホストできるPaaSから、最近話題のサーバーレス機能までも自社内で利用することができます。また、来年のアップデートにより、コンテナー環境を容易にホスト可能なAzure Container Serviceやマイクロサービスアーキテクチャーで構築されたビジネスアプリケーションをホストするAzure Service Fabricが登場しますし、並行してPivotal Cloud FoundryやBlock Chainなども容易に展開できるよう準備が進んでいます。さらに、先日発表した Azure IoT Edgeがあれば、Machine LeaningやCognitive、Azure Stream AnalyticsをAzure StackのContainer Service上に展開し、Azure Stack Blobストレージにデータを格納することもできます。
さて、そもそもAzure Stackのようなものが必要なのはどうしてでしょうか?それは、パブリッククラウドのメリットを理解しつつも、それを許さない状況が多々あるからです。たとえば、こちらをご覧ください。
金融に代表されるような特定の業種、機密事項を扱うような特定の業務、公的機関が定めるルールの多くはまだまだパブリッククラウドと距離があります。クラウドにデータを出さずにローカルで処理を済ませたい場合もあるでしょうし、インターネットへの接続環境が確保できないシステム、クラウドとの通信遅延を許容できないサービスもあります。このような状況を前に、社内には従来通りの仮想化基盤だけしかないと、クラウドとのギャップがありすぎます。Azure Stackはそこを埋めようとして、多くの企業やパートナーから注目され、今後はプライベートな場所に配置する新しいクラウド基盤としてビジネスを支えていくことでしょう。
さて、Azure StackはAzureと同じポータルを持っているだけではありません。パブリッククラウドを積極的に利用するエンジニアは、コマンドやスクリプト、繰り返し利用可能なシステムテンプレートなどにより自動化や省力化を当たり前のように行っているはずです。Azure Stackは、パブリッククラウドでは当たり前になった自動化や省力化をオンプレミスでも同じように使えるソリューションでもあります。AzureとAzure Stackの関係性については、2つ目のこちらの図をご覧ください。
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Azureに詳しい方はご存知の通り、AzureにはAzure Resource Manager (以下ARM)という管理基盤があります。このARMが利用者と管理者に一貫した管理機能を提供し、世界規模のエコシステムを支えています。そして、Azure StackもまたARMが組み込まれています。オンプレミスにARMが動作することによって、「パブリッククラウドならできるのに」と思っていた柔軟な管理やスピード感、システムの可視化を手元に持ち込むことができます。たとえば、名前も知らない別の国のエンジニアがAzure用に作ったシステムテンプレートを、日本企業の自社内のシステム展開にも使える・・・そんなオープンで非常にスケールが大きく、柔軟で便利な基盤なのです。もちろん、Azureとの管理基盤の共通化により、同じコマンド、同じスクリプト、そして同じツールを使うことができます。
さらに、この管理基盤の共通化がもたらすメリットが他にもあります。それは、これから本格的に始まるハイブリッドクラウドの課題を先回りして解決できるという点です。冒頭に記載した通り、パブリッククラウドのメリットは既に誰もが知るところでしょうが、それとはまったく別の仕組みがオンプレミスに残ることを考えてみてください。企業にとっては、利用すべきツールが増え、必要なスキルも格段に増え、アプリケーションはそれぞれの基盤に合わせて別々に開発する必要があり、運用もプロセスも別々になります。効率化のためにクラウド化を目指しているにも関わらず、全体から見ると管理負荷が増えるという状況が生まれてしまう可能性があるのです。マイクロソフトはAzureファーストなAzure Stackを世の中にだすことで、ハイブリッドクラウドであっても多くを統一できるようにします。
最後に、Azure Stackは認定のハードウェアベンダーよりキッティング済みの状態で提供される「統合システム」という形態をとることになりました。わかりやすく言えばAzure Stackがプリインストールされたアプライアンスのようなものになります。理由はとてもシンプルで、利用者のためにスピード感を持って提供したかったのです。パブリッククラウドがすぐに使えるサービスであるのに、検証や設計/導入に1年も2年もかかってしまうようでは提供する価値そのものを疑われてしまいます。物理環境なので数十分というわけにはいきませんが、お客様先にラック毎到着し、ネットワークと電源をつなぎ、お客様環境に合わせるべくスクリプトを自動実行させることでいきなりAzure Stackはサービスとして利用者の前に姿を現してくれます。
そしてもう1つ、Azure StackはAzureと共に進化をし続けるプライベートクラウド基盤です。安定したアップデート処理、システムが更新された後でも安定して動作する仕組みの提供、それらにはハードウェアベンダーと共同でシステムを提供する必要があったのです。お客様も、そしてパートナー様も、自身でやる必要のない作業から解放され、パブリッククラウドと同様、お客様のビジネスのために何をなすべきかを一緒に考える、そんな基盤でありたいと思います。
さて、Azure Stackに興味を持っていただけたでしょうか。もし、より詳細について知りたい、具体的にAzure Stack導入のお手伝いをしてくれるパートナーについて知りたい思っていただけた方は、Azure Stack専用ブースもある 「Microsoft Azure 徹底活用フェス」 へお越しください。このイベントは、Azure Stackのビジネス発表の場も兼ねているため、Azure Stackのスペシャリストや既にAzure Stackソリューションを作ってくれているパートナー様にも出会えます。
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