システム管理者を悩ませ続ける「ストレージ」の課題
企業情報システムが直面する直近の課題として「データ爆発」という言葉を聞くようになって久しい。人々の生活やビジネスと、ITとの関わりが広く、深くなるにつれ、その中で生みだされ、保存されるべきデジタルデータの総量は指数関数的な勢いで増え続けている。
この「データ総量の急激な増加」には、扱うべきデータタイプの多様化も影響を与えている。一般的なデータベースで扱われるような数値を中心とした構造化データだけでなく、テキストのような非構造化データ、高精細な画像、映像、音声といったマルチメディアデータが、一般的な業務の中で「当たり前のもの」として扱われるようになっており、そのことが「データ爆発」のスピードをさらに加速させている。
情報システム担当者は、将来的な予測が極めて難しくなっているデータ量の増加に配慮しながら、それらのデータを適切に保存・活用するためのストレージシステムをいかに調達し、運用管理していくかという問題に常に頭を悩ませ続けてきた。
2000年代以降、企業に広く普及してきたデータストレージとして「NAS(Network Attached Storage)」がある。100Mbpsや1Gbpsといった広帯域の社内ネットワーク環境が一般的になる中で、ネットワークに接続するだけで容易にストレージを追加できるNASは急速に導入が進められた。その一方で、かつての予想をはるかに超えるスピードで増加し続ける企業内データを管理していく中で、一般的なNAS環境の多くで、新たな課題が生まれているという。
拡張性に乏しい従来型NASが直面する「運用管理」の課題
中でも最も大きなものが、NASの拡張性が低いことに由来する「運用管理負荷の増大」だ。近年では、管理すべきデータ容量の増加に合わせて、ペタバイトクラスまでの容量に対応できるNAS製品も登場しているものの、現実的には1つのボリュームでカバーできる容量は数百テラバイト前後が限界といったところだ。運用をスタートする段階では、導入コスト面の課題もあり、1つのNASで管理するデータ容量を極端に多く見積もれないといった現実的な問題もある。
従来型のNASでは、運用中に既存のストレージ容量が足りなくなってしまった場合、新たなNASを追加購入して新規のボリュームを作成し、用途に応じて既存データの一部を移しかえるといった作業が必要になっている。この作業そのものに手間と時間がかかることに加え、こうしたプロセスによって、ワークロードごとや部署ごとに新たに管理すべきNAS(そしてファイルシステム)が増えていくことも問題となる。NASの導入目的のひとつとして、ストレージを集約することで、管理効率を高めることが挙げられるが、当初の予想を超えたデータ容量の増加は、一度は削減できた管理コストを、結果的に再び増加させてしまうという状況を招いている。
従来型のNASが増加することで引き起こされるデメリットは、管理コスト面だけにとどまらない。ストレージのボリュームをワークロードごと、部署ごとといった単位で切り分けることによって、それぞれの用途に適切な容量の予測はさらに難しくなる。結果的に、ある用途では再び容量が足りなくなって切り分けが発生し、ある用途では切り分けたボリュームが十分に活用されず「容量が余ってしまう」といった状況も発生しやすくなる。導入したストレージの容量全体に対する利用率が下がると言うことは、ストレージシステムそのものの「コストパフォーマンス」が低下していることを意味する。