「スケールアウト型NAS」がストレージの課題を解決できる理由
「データ爆発」によって生まれている、こうした従来型NASの課題を解決するものとして、近年、ユーザーの関心を集めているのが「スケールアウト型NAS」だ。従来型NASと異なる「スケールアウト型NAS」の最大のポイントは、その名の通り高い「拡張性」を追求したアーキテクチャを採用している点にある。
スケールアウト型NASでは、装置に組み込まれた独自のOSを通じて、複数の装置を仮想的に1つのボリュームとして運用できるようになっている。もし、容量が足りなくなった場合には、新たな装置(ノード)を単純に追加するだけで、自動的にボリュームの容量そのものが増加したように振る舞うことができる。ボリュームを追加して、そこにデータを移動するという作業を管理者が手作業で行う必要はない。また、エンドユーザーやアプリケーション側で、特別な対応を行う必要もない。
さらにスケールアウト型NASでは、各ノードが持つ物理的なディスクへのデータの再配置なども自動的に行う。特にアクセスが多いデータなどは、複数のノードに分散配置することによって単一のノードにかかる負荷を軽減できる。こうした効率的なデータのハンドリングをストレージ側が自動で行うというのも、運用管理負荷の軽減に寄与するスケールアウト型NASの大きなメリットと言えるだろう。
急速に存在感を高めるスケールアウト型NASの代表格「EMC Isilon」
今後の企業成長のキーワードとして「ビッグデータの活用」や「デジタルトランスフォーメーション」といったキーワードが注目を集める中、さらに増加の勢いが増すと予想される「データ」の管理負荷を低減する仕組みと、将来的な拡張性を併せ持ったストレージシステムとして期待される「スケールアウト型NAS」。この市場において圧倒的な存在感を持つ製品が「EMC Isilon」である。
スケールアウト型NASを市場にいち早く投入したアイシロン・システムズが設立されたのは2001年のこと。2010年には、業界最大手のストレージベンダーであるEMCが同社を買収し「EMC Isilon」としてNAS製品のラインアップを拡充した。当時は「ビッグデータ」や「ストレージ仮想化」といった技術トレンドに合わせる形で、ストレージベンダーの再編が急速に進んだ時期でもある。それから約5年が経過した現在、ビジネスコンピューティング全体で扱われるデータの増加に伴い、Isilonへの関心は、日本を含む世界規模で高まっている。
EMCジャパンも、スケールアウト型NASに対する市場のニーズへ応えるべく、2016年2月に、アイシロン事業本部長である倉橋秀則氏を執行役員とする人事を発表。今後、日本でのさらなる拡大が見込まれるIsilonビジネスに強くコミットする姿勢を明確にした。倉橋氏によれば、EMCによる買収以降、Isilonのビジネス規模と顧客数は一挙に7倍に増加したという。国内に限っても、Isilonのビジネス規模は、直近の2年で「2倍」に拡大。これは実に、NAS市場そのものの成長率(5%)の10倍のスピード感であるという。あるIT専門調査会社による2015年の国内NAS市場に関するレポートでは、EMC Isilonを含むEMCのNAS製品が大きくシェアを伸ばし、2014年までの首位と入れ替わったという報告もある。こうした市場の反応は、現在起こっている「データ爆発」と、それに伴って従来型NASが直面している課題に、ユーザー自身が強い危機感を覚えていることの表れと言えるのではないだろうか。
次回は、引き続き倉橋氏の話から、実際に「EMC Isilon」の活用を始めている企業の特長や、ユーザーが「スケールアウト型NAS」に求めている具体的な要件について考えてみたい。