日本企業におけるDXの現状とオラクルが果たすべき役割-日本オラクル三澤社長に聞く - (page 2)

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2022-02-10 13:00

[PR]「ZDNet Japan Summit 2021 - Digital Enterprise Now & Future 変革するビジネスとテクノロジーの真実」では、日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏が、オラクル自身のDXへの取り組みや、顧客の成功事例について、ZDNet Japan編集長の國谷武史によるインタビューに応えた。

金融、量販-日本においても多様な業界で成果を上げる「守り」のDX

國谷:メディアとしても、オラクルのクラウドカンパニーへの変貌には注目をしています。オラクル自身が、これだけ大規模なトランスフォーメーションを成功させていることで、オラクルの顧客にも、参考にしたいと思う部分が多くあるのではないかと思います。特に日本のオラクルユーザーにおける、注目すべきDXの事例があればご紹介ください。

三澤氏:日本においても、DXにチャレンジしているお客様が非常に多くなっていると感じています。

 1社目は、三井住友銀行(SMBC)などを傘下に置く複合金融グループのSMBCグループ様です。SMBCグループ様では、SaaSの「Oracle Fusion Cloud ERP」で、会計システムを刷新されました。目的は、外部環境の変化への対応を加速するためと伺っています。

 金融業界は、デジタルディスラプションの影響を他の業界と比べて早い時期から受けています。金融業界の各企業にとっては、低金利時代が長く続く中で、いかに競争力を高めていくかが課題となってきました。「G-SIBs」と呼ばれるようなグローバルでの影響力が大きい大手金融機関では、いち早く、さまざまなバックオフィス業務を統合して、コスト削減を図ってきました。

 一方で、日本の金融機関では、そこまで大胆な統合とコスト削減のプロジェクトは、これまで立ち上がっていませんでした。SMBCグループでは、世界で戦えるコスト競争力をつけるために、バックオフィスのトランスフォーメーションに着手しました。グループ内には、銀行、証券、カードなど、約200社のさまざまな事業体があります。それらの会計システム、購買システムを統合し、シェアードサービス化することでコスト削減を図り、グローバルでの競争力を上げていくことにチャレンジしています。私の知る範囲で、今回のSaaSでのERP刷新は、オンプレミス時代のERP導入よりも大きなプロジェクトとなっています。

 DXというと、「最新の技術を使って、新しいサービスを作り上げる」という「攻め」のイメージが先行しがちです。しかし、DXは事業の根幹に関わる「守り」の領域でも並行して進める必要があります。SMBCグループの事例は、その領域でのトランスフォーメーションにチャレンジしている好例だと思います。

國谷:「守り」の領域でのトランスフォーメーションは、組織がさらにアクティブに動いていくための筋肉質な体と基礎体力を作るための取り組みと言えそうですね。

三澤氏:2社目は、これまでオンプレミスが前提とされていたような、ミッションクリティカルなシステムが、いよいよクラウドで稼働しはじめているという事例です。

 野村総合研究所(NRI)様では、同社の投資信託窓販向けソリューション「BESTWAY」を「Oracle Cloud Infrastructure」上に構築し、稼働を開始しています。

 皆さまもご存じの通り、NRIは日本最大の金融サービスプロバイダーです。NRIは、システム基盤を旧来のアーキテクチャから、クラウドアーキテクチャに移行する事によって、より柔軟で俊敏なサービスを提供し、優位性を高めていきたいと考えておられます。

 NRIの金融情報サービスは、日本全国110ほどの金融機関で利用されており、シェアは8割とも言われています。NRIのサービスが止まってしまうと、日本の金融サービスが止まると言われるほどに重要なシステムです。文字どおりのミッションクリティカルなシステムが、いよいよクラウドで動くようになったという点で、エポックメイキングな事例でしょう。

 最後に、大手家電量販店であるエディオン様の事例です。同社では、大規模基幹システムを「Oracle Cloud Infrastructure」に移行し、東京と大阪の2拠点で、合計200以上のインスタンスと「Oracle Exadata Cloud Service」による稼働を開始しています。

 エディオン様では、家電量販業界内での競争激化に伴って、競争力を高め続けるための新たなビジネスモデルの確立が急務だと考えておられます。デジタル技術を最大限に活用し、その体制を作っていくためには、ITの内製化が必須でした。エディオン様でも、他の多くの日本企業と同様に、IT投資全体の8割が、レガシーシステムの保守運用に割かれている状態でした。そのコストを下げ、競争力強化に向けた内製化へ投資していくことにチャレンジしたい考えをお持ちです。

 オンプレミスのインフラと基幹業務を、すべて「Oracle Cloud」にリフトすることで、オンプレミスにかかっていた運用保守のコストを大幅に削減するとともに、クラウドのオートメーションテクノロジーを活用して人手による運用も減らし、余剰のコストを内製化への取り組みに振り向けていこうとしておられます。DXの推進にあたっては、レガシーシステムのモダナイズが必須と言われていますが、まさにそれを実践されています。

レガシーシステムの「正しいモダナイズ」が企業のDXを加速させる

國谷:ありがとうございます。さまざまな企業が、それぞれに目標を定め、クラウドの活用を進めているのですね。経済産業省のDXレポートでは「2025年の崖」という表現で、オンプレミスのレガシーシステムを維持し続けることに警鐘を鳴らしていましたが、日本企業においても、危機感を持って、ビジネスの根幹を担う基幹システムのあり方をモダナイズしていこうという動きが加速していることを再確認できました。

 ただ一方で、そうした取り組みを進める上で「クラウドさえ使っておけばよい」とか、「こういうやり方をすれば、すぐにできる」といった、まことしやかなマーケティングメッセージも市場に残っているように思います。現実的には、特に基幹システムをはじめとする「止まることが許されない」システムのクラウド移行には、慎重にならざるを得ません。システムのモダナイズはスピード感を持って進めていくことが重要であることも理解できる一方で、そのバランスが難しくも感じます。

 重要性の高いシステム、ミッションクリティカルなシステムをモダナイズしていきたいと考える企業が直面するそうした課題に、オラクルでは、どのような解決策を提案されるのでしょうか。

三澤氏:「DXレポート」では、日本企業が2025年の崖を越えていくための要素として「レガシーシステムのモダナイゼーションが必須」と指摘されていましたが、この「レガシーシステム」の実態は、今まさにビジネスを支えている「ビジネスクリティカル」「ミッションクリティカル」なシステム群です。

 先ほど「攻め」と「守り」のトランスフォーメーションについて話をしましたが、いわば、今現在のビジネスを「守って」いるのが「レガシーシステム」なのです。この「守り」のシステムをモダナイズしていくことが、DXの実現に必須ということは、多くの方が指摘しておられますし、私もそれは事実だと思います。そこで課題になるのは、それらをいかにモダナイズするかという点です。

 以前によく言われていたのが、OSSやクラウドのテクノロジーを使って、既存のものを新しく作り替えればいいではないかというものです。ただ、これはかなり乱暴な議論だと思います。レガシーシステムと呼ばれているような基幹システム、ミッションクリティカルシステムの役割は、ビジネスの三大資源と言われる「ヒト」「モノ」「カネ」のような複雑なエンティティを集中的に処理することです。こうしたワークロードを、いきなりコンテナやマイクロサービスに置き換えるのは、あまり意味がないことですし、できるとしても、そのための期間やコストは膨大なものになります。

 今では、そうした乱暴な話はあまり聞かなくなり、むしろ古い仕組み全体を少しでも新しくするために、新しいプラットフォームへ載せかえたいというニーズのほうが高まっているようです。しかし、そこにも課題は存在します。プラットフォームを変えたはいいが、十分な性能が出なかったり、移行に伴ってシステムの書き換えが必要になり、そのために長大な期間や多くのコストがかかったりするといったものです。こうした現実から、一般的には「ミッションクリティカルシステムのクラウド移行は難しい」と思われているように感じます。

 オラクルは、われわれのクラウドテクノロジーで、その状況を変えたいと思っています。

 オラクルが提供する、ミッションクリティカルシステムを動かせるクラウドを活用し、まずは、今あるレガシーシステムを、そのままの状態で、クラウドに移してくださいとご提案しています。Oracle Cloudでは、オンプレミスからの移行に伴う性能劣化も起きなければ、高可用性が損なわれることもありません。

 ミッションクリティカルなシステムを、そのままの形で新しいプラットフォームへ移行できるだけでなく、場所をOracle Cloudへと移した瞬間から、最新のクラウドテクノロジーの恩恵を受けられるようになります。オンプレミスにはなかった、高いインフラの拡張性が加わりますし、システムの購入や保守にかかるコストも、数年後のシステム状況を予想して行う買い切り型から、使った分だけ支払う従量課金型へと移行します。また、インフラの運用保守にかかる人件費も、自動化やマネージドサービス化によって削減できます。

 現状、オンプレミスで運用されているミッションクリティカルシステムで、定期的にアップデートパッチが適用されているものはほとんどないと言っていい状況でしょう。プラットフォームをクラウド化することで、そうしたパッチも定期的に適用されるようになります。危険なセキュリティホールを放置せずに、システムの運用が可能になります。加えて、オンプレミスで暗号化されずに管理されていた重要なデータについても、Oracle Cloudに保管場所を移すだけで自動的に暗号化されます。

 オンプレミスのシステムを、ただ単にOracle Cloudへとリフトするだけで、これだけのベネフィットが得られます。かつて「ミッションクリティカルシステムのクラウド化は、コスト面でのメリットが期待できない」と言われていたこともありましたが、既にそうした時代は終わっています。まずは、既存のシステムをそのままクラウドに移行して、各種のコストを削減した上で、徐々にフロントエンドのマイクロサービス化やAPI拡充を進めるといった形で、レガシーシステムを正しく進化させていくことが可能になっています。

國谷:基幹システム、ミッションクリティカルシステムについては、長い歴史の中で、さまざまな構築や運用のノウハウが蓄積されてきました。オラクルがデータベースベンダーの時代から培ってきた、そうしたノウハウが、あらかじめ組み込まれたクラウドであるというのは、Oracle Cloudのユニークな点ですね。ミッションクリティカルシステムをクラウドでモダナイズしたいと考えているユーザーは、ぜひ注目すべきポイントだと思います。

三澤氏:お客様にとって、「システムのクラウド化」は目的ではありません。実現したいのはDXであり、それを高いレベルで実現していくためには、データ活用、データドリブンの考え方が必須になるのは、既に常識です。

 「攻め」のDXとして新たなシステムを作る企業も増えていますが、その際には、「守り」のシステムが管理する「ヒト」「モノ」「カネ」の情報との連携が必須です。そこが分断していると、中途半端な仕組みしか作ることはできません。そうならないためにも、レガシーと呼ばれているような「守り」のシステムを正しく進化させ、そこに格納されている、企業にとって重要なデータを「攻め」のサービスにどう生かしていくかを考えることが重要です。

 残念ながら、これまでは、それが実現できるテクノロジーをベンダーとして提供できていなかったのですが、今まさに、オラクルではそれが可能になってきています。お客様が「攻め」と「守り」の両方を見据えながら、DXの戦略を立てられる環境を提供できるようになっているのです。

國谷:かつて「クラウド」は、ITコスト削減の側面ばかりが注目された時期がありましたが、テクノロジーの進化によって、今では「攻め」と「守り」のDX全体を展開するための基盤として重要な役割を担うようになったと感じています。IT戦略と経営戦略のより密接なリンクや、経営資源に関する情報を、いかにビジネスの成長へつなげていくかといったことを考える際に、活用できるピースが出そろってきましたね。

三澤氏:お客様のDXを支援するにあたって、利用できる多様なピースを提供していくことは、今のオラクルにとって重要なミッションです。

 多くのお客様は、これまで数十年以上にわたって、オラクルのアセットに経営資源に関するデータを格納してきており、今ではそれがレガシーシステム化しています。それを正しくモダナイズした上で、蓄積したデータをより広く活用してもらい、DXのお役に立っていくことがわれわれの目標であり、同時にそれは、われわれにしかできない仕事だと考えています。今後も、気を引き締めて取り組みを続けたいと思います。

國谷:その領域でのオラクルの動向には、われわれとしても期待をしており、これからも引き続き注目をしていきたいと思っています。本日はどうもありがとうございました。

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