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日本企業におけるDXの現状とオラクルが果たすべき役割-日本オラクル三澤社長に聞く

ZDNET Japan Ad Special

2022-02-10 13:00

デジタルトランスフォーメーション(DX)に成功している企業と、そうでない企業との間にある違いは何か。経営者は「ビジネスのデジタル化」を、どのような視点で捉え、取り組むべきなのか。朝日インタラクティブが2021年12月10日に開催したオンラインイベント「ZDNet Japan Summit 2021 - Digital Enterprise Now & Future 変革するビジネスとテクノロジーの真実」では、日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏が、オラクル自身のDXへの取り組みや、顧客の成功事例について、ZDNet Japan編集長の國谷武史によるインタビューに応えた。
登壇者

日本オラクル株式会社 取締役 執行役 社長 三澤 智光 氏
聞き手: ZDNet Japan編集長 國谷 武史

「IT投資額」と「経済成長」との間にある強い相関関係

國谷:現在、DXは企業にとって大きな経営テーマのひとつで、それに向けた動きも加速しています。米国の“デジタルディスラプター”と呼ばれるような企業群が、デジタル技術を通じて、既存の業界や市場に新たなビジネスモデルを持ち込んだことが端緒となって、今や、その影響は米国だけでなく、日本、そして世界中に及んでいます。三澤さんは、DXというテーマについて、日本企業が置かれている現状をどう見ておられますか。

三澤氏:DXの定義はさまざまですが、私自身は「激しく変化する外部環境に、企業がいかに俊敏に対応して、生き残りや競争優位を得るか」、そして、そこで生まれたイノベーションやビジネス上の成果を「いかに社会や地球に還元するか」といったことを総称して「DX」と捉えたいと考えています。その実現には、デジタルテクノロジーの活用が必須です。

 現実と、そうしたデジタルによるイノベーション創出との間にあるジレンマについて考えてみましょう。現在、技術の側面では進化が進み、活用しようと思えば、新しいビジネスモデルやイノベーションを生みだすためのテクノロジーを、すぐに手に入れることができる状況です。

 しかしながら、20年以上にわたって、日本企業における年間IT予算の増加率は2~3%にとどまっているという現実があります。予算が増えない中で、どうやって新しいテクノロジーを使って、イノベーションを起こしていくかというところにジレンマが存在します。

 次のグラフは、米国と日本におけるIT投資額の推移を表したものです。これを見ると、日本では残念ながら、1995年以降、ITに対する投資がほとんど増えていないことがわかります。その一方で、米国では着実に投資を進めてきました。

 次のグラフは、1995年から2018年の間の、米国と日本の名目GDPの推移を表したものです。見て分かるとおり、この20年間で、日本はほとんど横ばいである一方、米国では大きく成長しています。

 グラフの単純な比較に基づく仮説に過ぎませんが、GDPの成長とIT投資額との間には、何らかの相関関係があるようにも見えます。日本は、長年にわたる低成長にあえいでいますが、もしかすると、IT投資を積極的に伸ばしてこなかったことが、その原因のひとつになっている可能性は真剣に考慮すべきではないかと思います。

國谷:たしかに、グラフを見比べると、GDPの成長とIT投資額との間に何らかの関連がありそうですね。

三澤氏:IT予算に関連して、日本企業の独自性として目立つのは、IT投資全体のうちの約8割が、既存システムの保守やメンテナンスに使われているという点です。IT予算が増えない中で、新しい領域に投資をしていくためには、既存システムの保守運用にかかるコストを、どう下げていくかが課題になります。「DX」という、非常に大きなテーマからすると、課題としては矮小化されたように見えるかもしれませんが、DXを目指す上では、まずそこから手を付けていかなければないというのも、多くの日本企業の現実ではないでしょうか。

 もうひとつ、日本と米国との違いですが、日本の場合、受託開発フェーズが異様に多く、自社開発を行っている企業がほとんどないことが挙げられます。企業がDXを進める上では、自社にITを操る力が必要という認識は高まってきており、それが今、多くの企業で「内製化」へどう取り組むべきかを再検討する契機にもなっています。

オラクル自身も挑み続ける「トランスフォーメーション」の成果

國谷:多くの日本企業にとって、DXはまだ着手を始めたばかりの取り組みです。また、一度やって終わりではなく、長期にわたって継続的にイノベーションを積み重ねていかなければ、本当の意味での変革、つまり「トランスフォーメーション」は果たせません。

 その点では、ITカンパニーとしてのオラクルも、データベースからスタートし、長い歴史の中でビジネスアプリケーション、ハードウェア、そして現在ではクラウドカンパニーへと「トランスフォーメーション」を続けてきた企業だと思います。ここで、オラクル自身が行ってきたトランスフォーメーションの道のりをご紹介いただけますか。

三澤氏:オラクルは1977年の創業ですから、現在残っているITベンダーの中では既に「老舗」のひとつと言って良いだろうと思います。商用データベースベンダーとしてビジネスを始め、1990年前後には買収戦略を活発化させます。90年代にはERPを中心としたビジネスアプリケーション、2010年にはサン・マイクロシステムズを買収して、総合的なコンピュータメーカーへと変化していきました。

 2000年以降、オラクルが変化を続けているさなかにも、外部環境はさらに大きく変化をしていました。特に大きかったのは、Salesforce.comやAmazon Web Servicesなどをはじめとする、クラウドサービスの登場と進化でしょう。

 この環境変化に対応していくために、オラクルがとった戦略は、オラクル自身を「クラウドカンパニー」へと変容させていくことでした。これは、言うのは簡単ですが、実際にやるのは極めて難しいチャレンジです。オラクルには、既に成功しており、大きな売上をもたらす複数のビジネスラインがありました。それらすべてのビジネスモデルを、新たな形へトランスフォーメーションするのは、決して容易ではなかったのです。

 実際に取り組んだのは、「攻め」と「守り」、両面でのトランスフォーメーションでした。「攻め」の戦略は、競合他社には提供できないようなクラウドサービスを実現することです。具体的には、ピュアSaaSのERPや、ミッションクリティカルなワークロードをそのまま動かすことができるIaaS、PaaSであり、大企業がオンプレミスに大きな投資をして実現していたようなシステムを、クラウドで実現できるようにすることで、差別化を図るというものです。

 主要なプロダクトをクラウド対応することで、ビジネスモデルもオンプレミスの「売り切り型」から「サブスクリプション型」へと変えていく必要がありました。セールスサイクルも、これまでの年単位での契約から、月単位、日単位、分単位へと短期化していきます。こうしたサイクルの変化に対応しながら、ビジネスをしっかりと管理するための「守り」のトランスフォーメーションも必要でした。

 そこで重視したのは、「データドリブン経営」を、クラウドの利点をフルに生かして実現することでした。データ活用を迅速に行えるようにするため、物理的には異なるリージョンに存在するデータを、シングルなデータモデルで構成して、いつでもどこでも、経営に必要なデータを取り出せるようにしました。シングルデータモデルで構成されたデータは、AIや機械学習などへの活用も容易に行えます。そこで、それらの技術を活用した自動化を推進し、人の手による業務を可能な限り減らしていくことにも取り組みました。

國谷:オラクル自身のそうしたチャレンジは、どのような成果を生みましたか。

三澤氏:ビジネスモデルを「売り切り」から「サブスクリプション」へ変えるにあたっては、リードタイムの短縮が極めて重要です。現在では、マーケティングリードが営業担当者の手元に届くまでの時間が、約10分に短縮されています。

 また会計面では、決算発表までの時間が短縮されました。グローバルでは四半期決算から10日目、日本では16日目に発表が可能です。一般的な日本の一部上場企業では約40日かかると言われていますから、日本オラクルは日本で最も決算発表が早い会社と言ってよいと思います。この決算発表までの時間短縮には、時間がかかるリコンサイル(残高照合)作業のうち、約40%を自動化できたことも貢献しています。

 経営的な観点では、DXの過程で、何らかのアウトカムを出していくことも必要です。オラクルは、クラウドへの期待が高まった2010年代半ばに、株価が伸び悩む時期がありましたが、現在は90~100ドルの水準で、引き続き成長を維持できています。トランスフォーメーションへの取り組みが、市場からも評価されたことの証しだと言えるでしょう。

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