鉄鋼業界においてはCADの導入による設計業務のICT化は進んでいるものの、製造部材の診断は目視が主流であり、ヒューマンエラーによる部材組立時の加工ミスや検査漏れが及ぼす後工程での手戻りや作業遅延が課題となっています。また、構造物が大型化、複雑化する傾向にあり、今後は、人手や目視での診断がより困難になることが予想されています。
トモエユニトラスなどの独自開発技術を持ち、無柱大張間建築のパイオニアである巴コーポレーションは、ホストコンピュータの時代から富士通の「iCAD」シリーズを活用し、2006年の早期から3次元CADや自動設計ソリューションを導入しています。また、近年では、3次元設計と製造をつなぐ新たなプロセスとして、業界に先駆け3次元CADを使った製造部材の診断方法を検討していました。
そこで、富士通システムズ・イーストは、3次元CADとAR技術を融合して製造部材診断を行うシステムを開発し、巴コーポレーションの小山工場で、その有用性を検証するための実証実験を行いました。
【実証実験の概要】
1.期間: 2015年12月から2016年6月まで (6か月間)
2.場所: 巴コーポレーション 小山工場
3.システムの特徴:
本システムでは、診断対象となる製造部材の写真に対して物体の直線を特徴として検出した図形と、3次元CADデータをソリッドモデル(注8)で描画した図形をタブレット上で重畳することで、製造部材が設計図通りに製造されているか否かを確認できます。これは、「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」をベースに新規に研究開発した技術を活用しています。3次元CADデータと現物写真を用意するだけの容易な段取りで実施でき、現場担当者が使いやすい直感的な操作性を実現しています。
4.実証内容:
体育館などの構造物の屋根部分で使用されるトモエユニトラスを対象に、部材組立の工程で本システムを活用し、画像の重畳度合いや3次元モデルの見やすさなどのシステムの精度、また、事前準備や診断時間などの手間、現場担当者の使い勝手などの操作性といった観点で本システムの有用性を検証し、効果測定を行いました。
【効果】
実際の工事案件で実証実験を行った結果、ヒューマンエラーに起因する組立ミスや溶接時における軽微なズレといった、これまで目視では診断が難しかった不具合を検知でき、早期に部材組立をやり直したことで、現場組立時の手戻りを排除することができました。また、診断の所要時間に関しても、本システムでは1つの製造部材に対して、写真と設計図を重畳し、結果を表示するまでわずか数分で結果を得られるため、従来の目視による診断方法と比較して、およそ10分の1まで削減できています。
【今後の取り組み】
今後、巴コーポレーションは、本システムの活用を小山工場以外の主力工場にも展開するとともに、トモエユニトラス以外の特殊な形状で診断が難しい空間構造物の全製造部材に対象を広げていく予定です。これにより、現場組立の前にヒューマンエラーの撲滅と品質向上を図り、付加価値の高い製品の提供による競合他社に対する優位性の獲得を目指していきます。
また、富士通システムズ・イーストは、巴コーポレーションの製品製造のさらなる効率化に向けた支援を行うとともに、今回の実証実験の結果をもとに開発した技術を、製造業のお客様向けに早期にソリューション化して提供することで、お客様ビジネスの革新を支援していきます。
【関連Webサイト】
(リンク »)
(AR統合基盤製品「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」紹介サイト)
【商標について】
記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
以 上
≪お客様お問い合わせ先≫
株式会社富士通システムズ・イースト
第三産業ソリューション本部 デジタルエンジニアリング第二事業部 解析ソリューション部
電話:03-6712-3761(直通)
≪報道関係お問い合わせ先≫
株式会社富士通システムズ・イースト
ビジネスマネジメント本部 グループマネジメント推進部
電話:03-6712-3701(直通)
このプレスリリースの付帯情報
用語解説
(注1)株式会社富士通システムズ・イースト:本社 東京都港区、代表取締役社長 石川 享
(注2)株式会社巴コーポレーション:本社 東京都中央区、代表取締役社長 深沢 隆
(注3)トモエユニトラス:鋼管、鋼球(ボール)、接合用ボルト(コネクター)から構成される立体トラス(システムトラス)。1982年に建設大臣の一般認定を取得し、大空間構造物に採用されている。
(注4)AR技術:ARとは、Augmented Realityの略で、拡張現実の意味。AR技術とは、人間の感覚(五感)で得られる情報(現実)にICTを利活用して得られるデジタル情報を重ね合わせ、人間の感覚を拡張・強化する技術で、富士通および富士通研究所が開発。2013年に富士通が、「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server Standard Edition v1」を販売開始しています。
(注5)重畳:重ね合わせを行うこと。今回は、3次元CADデータと製造部材写真の重ね合わせ。
(注6)富士通株式会社:本社 東京都港区、代表取締役社長 田中 達也
(注7)株式会社富士通研究所:本社 神奈川県川崎市、代表取締役社長 佐々木 繁
(注8)ソリッドモデル:3次元コンピュータグラフィックスにおいて、中身の詰まった3次元構造、またはそれらを作成する目的のモデリング体系のこと。
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