2020年 中堅・中小市場のグループウェアとビジネスチャットに起きている変化
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880 URL:http//www.norkresearch.co.jp)は中堅・中小企業におけるコラボレーション(グループウェアおよびビジネスチャット)の 活用実態と今後の展望に関する調査を行い、その結果を発表した。本リリースは「2020年版 中堅・中小企業のITアプリケーション 利用実態と評価レポート」内のERPに関する内容のサンプル/ダイジェストである。
<DXや新型コロナの影響によって、中堅・中小向けコラボレーション市場は変化しつつある>
■社数シェアでは「上位2社の首位争い」「Notes/Dominoの動向」「基幹系との関連」が焦点
■With/Afterコロナ時代の情報共有は「トランザクティブメモリ」の活用が重要ポイントとなる
■基幹系連携による業務フロー全体の効率化はクラウド/オンプレミスの選択にも影響する
対象企業: 年商500億円未満の中堅・中小企業1300社(日本全国、全業種)(有効回答件数)
対象職責: 情報システムの導入や運用/管理または製品/サービスの選定/決済の権限を有する職責
※調査対象の詳しい情報については右記URLを参照 (リンク »)
■社数シェアでは「上位2社の首位争い」「Notes/Dominoの動向」「基幹系との関連」が焦点
本リリースの元となる調査レポート「2020年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」では、中堅・中小 企業における10分野に渡る業務アプリケーションのシェアと評価を分析している。本リリースではその中から 「コラボレーション (グループウェアおよびビジネスチャット)」に関する結果の一部をサンプル/ダイジェストとして紹介している。
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業における最も主要なコラボレーション製品/サービスの社数シェアを「導入 済み」(既に導入しているユーザ企業に尋ねた結果)と「新規予定」(新たに導入を予定しているユーザ企業に尋ねた結果)に 分けてプロットしたものだ。(詳細は次頁以降に記載)下記のグラフから、「Microsoft Office 365」と「サイボウズOffice」の首位 争い、「eValue NS/V」の動向から垣間見える基幹系システムとの関連性、Notes/Domino」の最新動向など、様々なポイントを 読み取ることができる。次頁以降ではそれらの詳細について述べている。
■With/Afterコロナ時代の情報共有は「トランザクティブメモリ」の活用が重要ポイントとなる
本リリースの元となる調査レポートは、これまで各種の業務アプリケーションを既に導入しているユーザ企業を対象としてきた。 ところが、2020年以降はDXや新型コロナウイルス感染症の影響によって、新規導入の動向にも変化が生じる可能性がある。 そこで、2020年版は導入済みのユーザ企業だけでなく、新たに導入を予定しているユーザ企業も集計/分析の対象としている。 その結果の中から、「最も主要なコラボレーション製品/サービス」の結果(「導入済み」および「新規予定」)を年商500億円未満 の中堅・中小企業全体で集計したものが前頁のグラフである。
2019年には導入済みの社数シェアにおいて、それまで首位であった「サイボウズ Office」を抜いて「Microsoft Office 365(以下、 「O365」と略記)が首位となった。2020年も「O365」が引き続き首位となっているが、「サイボウズ Office」とのポイント差は2019 年と比べて縮まっている。また、新規予定の社数シェア(新規に導入を予定しているユーザ企業の回答割合)では「サイボウズ Office」が「O365」を上回っている。DXや新型コロナウイルス感染症の影響によって、社内外のコラボレーションへの取り組み 意向が高まり、小規模な企業も含めた幅広い新規導入が加速すれば、今後の社数シェア首位が再度変動する可能性もある。
「導入済み」と比べて「新規予定」の回答割合が高い製品/サービスとしては、「eValue NS/V」が挙げられる。同製品は「eValue NS」から「eValue V」へと刷新されると同時に基幹系の「SMILE V」と統合されており、基幹系分野におけるシェア拡大がコラボ レーションにも影響していると考えられる。こうした基幹系と情報系の統合によるシェアの変動にも留意しておく必要がある。
また、「Notes/Domino」は社数シェアの減少が続いてきたが、HCLテクノロジーズへの移管後は最新版「Notes/Domino V11」の リリースや今後のロードマップ提示など積極的な製品展開が見られる。サポート契約切れなどにより、主要なコラボレーション 製品としての位置付けから外していたユーザ企業に対して、販社/SIerが再度アプローチをかける動きなども活発化している。 こうした背景から「導入済み」と比べて、「新規導入」(一旦は利用を停止したが、V11への刷新を図る場合など)の割合が若干 高くなっていると考えられる。
ちなみに「G Suite」については2020年10月に「Google Workspace」へと名称が変更されたが、本リリースの元となる調査レポート では調査実施時点の「G Suite」として記載されている。(その他、製品/サービスの選択肢に関する詳細は4ページを参照)
さらに本リリースの元となる調査レポートでは、コラボレーション製品/サービスに関してユーザ企業が抱える課題やニーズに ついても集計/分析を行っている。(設問項目の詳細は本リリース4ページを参照) 以下のグラフはその中から 「導入済みの コラボレーション製品/サービスの機能に関する課題」を尋ねた結果の最初の6項目を中堅・中小企業全体で集計したものだ。
値はやや僅差だが、「既存の基幹系システム(ERP/会計/販売など)と連携できない」、「在宅勤務中に従業員間の対話を記録 できない」、「社外(顧客や取引先)との情報共有ができない」といった項目の回答割合が相対的に高い。こうしたユーザ企業の 課題を確認することで、ベンダや販社/SIerが留意すべきコラボレーション製品/サービスの注力ポイントが見えてくる。中でも、 「トランザクティブメモリ」を加味することが重要となってくる。その点について次頁で詳述する。
■基幹系連携による業務フロー全体の効率化はクラウド/オンプレミスの選択にも影響する
新型コロナウイルス感染症の影響によって、コラボレーション製品/サービスには「在宅勤務中も従業員間の対話を維持できる」 という役割が求められている。しかし、対面でのコミュニケーションが取りづらいという点は従業員間だけでなく、顧客に対しても 同様だ。だが、従来のグループウェアやビジネスチャットは従業員間または一定期間継続する社内外でのプロジェクトにおける 情報共有を想定したものが多く、単発的な顧客とのコミュニケーションやその後の顧客管理まで想定した仕組みを備えたものは 少ない。その結果、前頁で述べた「社外(顧客や取引先)との情報共有ができない」といった課題の回答割合が高くなっていると 考えられる。
また、Web会議も含めたビジネスチャットを活用するユーザ企業の中には「いつでも手軽にリアルタイムで会議ができるように なったが、その場限りの口頭での対話に頼り過ぎて、後になってから『なぜ、そのような結論に至ったのか?』の経緯が上手く 共有できていない」といった声を耳にするケースも増えてきている。組織におけるこうした経緯に関する情報共有は「トランザク ティブメモリ」と呼ばれることがある。これは全ての議事を記録するというものではなく、「そのトピックを主導/理解している人物 は誰か?を全員が把握している」などのように、情報そのものに固執しない形で、ヒトの記憶/知見も含めた柔軟な情報共有を 行う取り組みを指す。ベンダや販社/SIerとしては、前頁で述べた「在宅勤務中に従業員間の対話を記録できない」という課題を 「トランザクティブメモリ」によって改善することを検討してみる価値がある。
さらに、DXや新型コロナウイルス感染症に向けた取り組みでは業務の自動化による「効率化」や「出社が必要となる手作業の 削減」も重要となってくる。しかし、現状では会計や販売のデータが蓄積された基幹系と従業員間の活動を共有する情報系が 分離している。そのため自動化の範囲がごく限られた一部の業務に留まっており、業務フロー全体の自動化には至っていない のが実情だ。(RPAを含む業務の自動化をテーマとした調査レポートは別途発刊予定) 前頁で述べた「既存の基幹系システム (ERP/会計/販売など)と連携できない」はユーザ企業のこうした課題意識の表れであり、基幹系と情報系の統合は非常に重要 なテーマになってくると予想される。また、この点はコラボレーション製品/サービスの運用形態にも関連している。以下のグラフ は最も主要なコラボレーション製品/サービスの運用形態を尋ねた結果(年商500億円未満全体)を「導入済み」と「新規予定」で 比較したものだ。
「導入済み」と比べると「新規予定」では「パッケージ社内設置」の回答割合がやや高くなっている。中堅・中小企業の基幹系 システムはスタンドアロンやクライアント/サーバの形態も依然として多く、情報保護などの観点からデータを社外に出すことを 敬遠するユーザ企業も少なからず存在する。そのため、基幹系と情報系を統合した業務フロー改善に新たに取り組もうとする 場合、運用形態を柔軟に選べる情報系(コラボレーション)を社内設置に揃えるという選択肢も考えられる。このように今後の 課題/ニーズを捉える際には製品/サービスのクラウド/オンプレミスの運用形態の動向も加味することが重要と考えられる。
補記:「課題/ニーズに関する設問項目」と「製品/サービスの選択肢一覧」
本リリースの元となる調査レポートの課題/ニーズに関する選択肢は製品/サービスに対するニーズを尋ねた以下の2つの設問
P7-6A.最も主要な製品/サービスに関して評価/満足している機能や特徴(複数回答可)
P7-6C.最も主要な製品/サービスが今後持つべきと考える機能や特徴(複数回答可)
の選択肢(上段の一覧)と製品/サービスにおける課題を尋ねた以下の設問
P7-6B.現時点で抱えている課題(複数回答可)
の選択肢(下段の一覧)の2通りがある。
ニーズを尋ねた 設問(P7-6A、 P7-6C)の選択肢:
<<機能に関連する項目>>
既存の基幹系システム(ERP/会計/販売など)と連携できる
独自のアプリケーションをユーザが自分で作成できる
在宅勤務中も従業員間の対話を維持できる
在宅勤務中の従業員間の対話を記録できる
社外(顧客や取引先)との情報共有も行える
モバイルワークを支援または実践できる
プロジェクト管理の機能が包含されている
ビジネスチャットの機能が包含されている
ワークフローの機能が包含されている
ファイル共有の機能が包含されている
メール関連の機能が包含されている
ビデオ会議の機能が包含されている
<<個別の機能要件への対応力>>
プログラミングをせずに項目や画面を作成できる
プログラミングをせずにデータ連携を実現できる
公開されたテンプレートを取捨選択できる
<<クラウドに関連する項目>>
パッケージとクラウドを選択/併用できる
様々なクラウドサービスと連携できる
<<クライアント環境に関連する項目>>
スマートデバイスに適した画面が用意されている
Webブラウザで大半の機能が利用できる
<<その他>>
導入や保守サポートの費用が安価である
バージョンアップの費用が安価である
バージョンアップが適切に継続している
その他:
課題を尋ねた 設問(P7-6B) の選択肢:
<<機能に関連する項目>>
既存の基幹系システム(ERP/会計/販売など)と連携できない
独自アプリケーションをユーザが自分で作成できない
在宅勤務中に従業員間の対話を維持できない
在宅勤務中に従業員間の対話を記録できない
社外(顧客や取引先)との情報共有ができない
モバイルワークを支援/実践できない
プロジェクト管理の機能がない、または不十分
ビジネスチャットの機能がない、または不十分
ワークフローの機能がない、または不十分
ファイル共有の機能がない、または不十分
メール関連の機能がない、または不十分
ビデオ会議の機能がない、または不十分
<<個別の機能要件への対応力>>
プログラミングしないと項目や画面を作成できない
プログラミングしないとデータ連携を実現できない
公開されたテンプレートが十分に提供されていない
<<クラウドに関連する項目>>
パッケージとクラウドを選択/併用できない
クラウドサービスと連携することができない
<<クライアント環境に関連する項目>>
スマートデバイスに適した画面が備わっていない
Webブラウザでは限られた機能しか利用できない
<<その他>>
導入や保守サポートの費用が高価である
バージョンアップの費用が高価である
その他:
以下に列挙したものは本リリースの元となる調査レポートにおいて選択肢に記載したコラボレーション製品/サービスの一覧で ある。選択肢に掲載される製品/サービスは過去の調査結果や最新の市場状況に基づいて選定し、前年の調査で自由回答の 中から多く挙げられたものは選択肢として新たに追加し、一定期間以上シェア数値がないものは割愛するといった形で年毎に 調整を行っている。製品/サービス毎の評価などの詳細な集計はサンプル件数が一定以上の条件を満たした(※)のみが対象 となる。また「Microsoft Office 365」と「Microsoft Teams」のように、ある選択肢が他を包含していることがある。この場合、複数 回答では両者を選択し、単一回答では最も主要な位置付けとなっているものを選択する。(上記の例では、Web会議/チャットと しての利用が主体であれば後者、そうでない場合は前者を選ぶことになる)
製品/サービス名 開発元
サイボウズOffice(※) サイボウズ
Microsoft Office 365(※) 日本マイクロソフト
desknet's NEO(※) ネオジャパン
サイボウズガルーン(※) サイボウズ
G Suite(Google Workspace)(※) グーグル
Notes/Domino(※) HCLテクノロジーズ
eValue NS/V(※) OSK(大塚商会)
J-MOTTO リスモン・ビジネス・ポータル
アルファオフィス(※) 大塚商会
Slack スラック・テクノロジーズ
InCircle AI CROSS
Chatwork Chatwork
LINE WORKS ワークスモバイルジャパン
Microsoft Teams(※) 日本マイクロソフト
Confluence/Trello Atlassian
tocaro CTC
ChatLuck ネオジャパン
CYBERCHAT サイバーソリューションズ
Typetalk ヌーラボ
Microsoft Exchange Server 日本マイクロソフト
Microsoft Sharepoint Server 日本マイクロソフト
intra-mart Accel Collaboration NTTデータイントラマート
StarOffice/OfficeForce(※) NEC
Groupmax 日立製作所
TeamWARE(※) 富士通
INSUITE ドリーム・アーツ
POWER EGG ディサークル
Group Session 日本トータルシステム
GlobalWare パナソニックソリューションテクノロジー
NI Collabo Smart NIコンサルティング
WebOffice 富士通マーケティング
GRIDY グループウェア / Knowledge Suite ナレッジスイート
Bizca DTS(アスタリクス)
NECネクサソリューションズ
Zoho Workplace ゾーホージャパン
上記以外のパッケージ製品またはサービス
ERP/基幹系システムの一機能として利用
独自開発システム
本リリースの元となる調査レポート
『2020年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート』
10分野の業務アプリケーション(ERP、会計管理、生産管理、販売・仕入・在庫管理、給与・人事・勤怠・就業管理、 ワークフロー、コラボレーション、CRM、BI、文書管理・オンラインストレージサービス)のシェアと評価を網羅
【対象企業属性】(有効回答件数:1300社)
年商: 5億円未満 / 5億円以上~10億円未満 / 10億円以上~20億円未満 / 20億円以上~50億円未満 /50億円以上~100億円未満 / 100億円以上~300億円未満 / 300億円以上~500億円未満
従業員数: 10人未満 / 10人以上~20人未満 / 20人以上~50人未満 / 50人以上~100人未満 /100人以上~300人未満 / 300人以上~500人未満/ 500人以上~1,000人未満 /1,000人以上~3,000人未満 / 3,000人以上~5,000人未満 / 5,000人以上
業種: 組立製造業 / 加工製造業 / 建設業 / 卸売業 / 小売業 / 流通業(運輸業) /IT関連サービス業 / 一般サービス業 / その他(公共/自治体など)
地域: 北海道地方 / 東北地方 / 関東地方 / 北陸地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国地方 /四国地方 / 九州・沖縄地方
その他の属性: 「IT管理/運用の人員規模」(12区分)、「ビジネス拠点の状況」(5区分)
【分析サマリの概要】
各分野について、以下の章構成からなる分析サマリ(各20ページ前後)で重要ポイントと今後に向けた提言を詳説
第1章:製品/サービスの導入状況とシェア動向
製品/サービスの「導入状況」と「製品/サービスの導入社数シェア」を確認した後、最も主要な製品/サービスの「導入年」と「評価概況」についても分析を行っている。
第2章:運用形態と端末環境
最も主要な製品/サービスにおける「運用形態」と「端末環境」について分析を行っている。
第3章:製品/サービスの評価、課題、ニーズ
最も主要な製品/サービスに関して「評価/満足している機能や特徴」「現時点で抱えている課題」「今後持つべきと考える機能や特徴」を尋ねた結果を分析している。さらに、業務アプリケーションの導入/更新に関する全体的な方針を尋ねた設問「P0」と各分野の製品/サービスとの関連についても分析している。
付表:選択肢として記載した製品/サービス一覧および課題とニーズの項目
本調査において選択肢に記載された製品/サービスの一覧を掲載している。選択肢に掲載される製品/サービスは過去の調査結果や最新の市場状況を踏まえて選定され、自由回答の中から多く挙げられたものは選択肢として新たに取り上げ、逆に一定期間以上シェア数値がないものは割愛するといった形で年毎に調整を行っている。さらに、導入済みの製品/サービスについて評価/満足している機能や特徴および現状の課題を尋ねた設問の選択肢、および導入済み/導入予定の製品/サービスが今後持つべきと考える機能や特徴を尋ねた設問の選択肢も掲載している。
【レポート案内(設問項目、試読版など)】 (リンク »)
【発刊日】 2020年10月末予定 【価格】 180,000円(税別) 特定分野のみの個別販売は行っておりません
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