2020年 中堅・中小企業におけるRPA活用の普及に向けて注力すべき用途と課題
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社:〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室:代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880 URL:http//www.norkresearch.co.jp)は中堅・中小企業におけるRPA活用の普及に向けてどのような用途や課題に注力すべきか?に関する調査を実施し、その結果を発表した。本リリースは「2020年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート」のサンプル/ダイジェストである。
<新型コロナによるニーズ変化を踏まえつつ、RPAが本来担うべき業務全体の効率化を訴求する>
■「導入予定」から「導入済み」への移行は進んでいるが、今後は新規需要の創出が不可欠
■新型コロナの影響で「データ転記」の需要が高まったが、業務全体を俯瞰する視点も大切
■「自動化できる業務範囲の拡大」と「デジタル化したデータの活用」は今後注力すべき課題
調査対象企業: 年商500億円未満の中堅・中小企業1300社(日本全国、全業種)(有効回答件数)
調査対象職責: 情報システムの導入や運用/管理または製品/サービスの選定/決済の権限を有する職責
調査実施時期: 2020年7月~8月 ※調査対象の詳細は本リリース末尾を参照
■「導入予定」から「導入済み」への移行は進んでいるが、今後は新規需要の創出が不可欠
RPAは大企業のみならず、中堅・中小企業にとっても業務の自動化/効率化を実現する有効な手段となっている。以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「RPAの導入状況(どの部門が主導するかを含む)」を2019年と2020年で比較したものだ。右側の円グラフはRPAの導入状況を「1.導入済み」「2.導入予定」「3.現時点では判断できない」「4.RPAという言葉を知らない」の4通りで集計した結果である。1が増加しているが、1+2の合計割合および3と4の割合はいずれも大きな変化がない。
つまり、2019年に「導入予定」だったユーザ企業は徐々に「導入済み」へと移行しているものの、RPAを更に普及させるためには「現時点では判断できない」や「RPAという言葉を知らない」という状態を「導入予定」へと変える新規需要の創出が不可欠となる。棒グラフは「1.導入済み」および「2.導入予定」における主導部門を細分化したものだ。1と2のいずれも「IT関連部門」「間接部門」「現場部門」「経営層」の順に回答割合が高くなっている。次頁以降ではRPA活用を促進するために、「どのような用途や課題に注力すべきか?」に関する分析結果の一部をサンプル/ダイジェストとして紹介している。
■新型コロナの影響で「データ転記」の需要が高まったが、業務全体を俯瞰する視点も大切
前頁に述べた取り組みを進めるためには、まず「ユーザ企業が考えるRPAの用途とは何か?」の最新動向を理解する必要がある。本リリースの元となる調査レポートでは以下の選択肢を列挙して、導入済み/導入予定のRPA用途を尋ねている。
<<データの転記や照合に関する項目>>
紙面データからの転記 例)紙面の申込書内容を顧客管理システムに入力する作業を自動化する
Webサイトからの転記 例)競合他社の価格情報を検索して一覧に整理する作業を自動化する
メール文面からの転記 例)メールで送られた注文を販売管理システムに入力する作業を自動化する
データと証票の照合 例)経費精算システムのデータと領収書の内容を照合する作業を自動化する
<<データの作成や加工に関する項目>>
資料やレポートの作成 例)会計システムのデータを経営層向けにグラフ化する作業を自動化する
データの集約と修正 例)店舗や拠点の売上データを統一された書式にまとめる作業を自動化する
データや書式の変換 例)システムAのデータをシステムBに読み込むための変換作業を自動化する
<<高度な判断を伴う処理に関する項目>>
Q&Aサイトの自動応答 例)過去の履歴などを元にQ&Aサイトに書かれた質問に対して自動的に応答する
メールの自動返信 例)過去の履歴などを元にメールで送られた問い合わせに対して自動的に応答する
ワークフローの分岐 例)過去の履歴などを元にワークフローにおける条件分岐を自動的に判断する
データ分析と予測 例)顧客情報や履歴データを元に優良顧客や要注意顧客(支払遅延など)を推定する
<<その他>>
その他:
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「導入済み/導入予定のRPAに適用したいと考える場面や用途」を尋ねた結果を2019年と2020年で比較したものだ。2018年から2019年にかけては「データの転記や照合」と比べて、「データの作成や加工」の増加幅が比較的大きかった。しかし、2019年から2020年にかけては「データの転記」に関する3項目が増加している。この背景には新型コロナウイルスの影響による在宅勤務を実現するためのペーパレス化の動きが大きく影響していると考えられる。新型コロナ以前には、中堅・中小企業のRPA活用は転記を中心とした単体システムの自動化から、データの作成や加工を伴う複数システムを跨ぐ自動化へと適用範囲を拡大しつつあった。このままRPAの用途が転記ツールへと逆戻りしてしまうことは、業務全体の自動化/効率化の面で必ずしもプラスとは言えない。ベンダや販社/SIerとしてはペーパレス化に寄与するRPA活用提案を進めると同時に、業務全体を見据えた自動化/効率化も常に視野に入れておくことが重要と考えられる。
■「自動化できる業務範囲の拡大」と「デジタル化したデータの活用」は今後注力すべき課題
さらに本リリースの元となる調査レポートでは以下のような選択肢を列挙して、ユーザ企業が考えるRPA活用における課題と 基本方針についても詳しい集計/分析を行っている。
F3.RPA活用における課題(複数回答可)
<<業務内容に関連した項目>>
データ連携はできるが、業務の連携ができない
自動化できる業務内容がどれか判断できない
自動化できる業務内容がごく一部に限られる
RPAのみではヒトによる手作業が残ってしまう
デジタル化した紙面データを十分活用できない
業務内容の変更を手軽/迅速に反映できない
<<RPAシステムの導入に関連する項目>>
自社に最も適したRPAシステムを選定できない
RPA活用の投資対効果を事前に試算できない
自動化処理の作成/管理のライセンスが高額
ライセンスが高額のため、適用範囲が限られる
<<RPAシステムの管理/運用に関連する項目>>
RPAの管理/運用を担当できる人材がいない
類似した自動化処理が散在して管理できない
自動化処理の結果や稼動状況を確認できない
自動化処理が不正に実行される可能性がある
OSなどの更新時に自動化処理が動かなくなる
既存の業務システムや周辺機器と連携できない
処理件数やデータ量の増加に対応できない
<<その他>>
その他:
F4.RPA活用の基本方針(複数回答可)
<<RPAを適用する業務に関する項目>>
個々のPC内で完結する処理に対してRPAを適用する
複数の業務システムを跨いだ処理にRPAを適用する
在宅勤務やペーパレスを目的としてRPAを適用する
人手不足や人口減少の対策としてRPAを適用する
働き方改革に対応する手段としてRPAを適用する
<<RPAを適用する範囲に関する項目>>
RPAを適用する業務や部署の範囲を拡大する
RPAを適用する業務や部署の範囲を限定する
RPAの役割は最終的に業務システム自体が担う
業務システムの自動化は今後もRPAが担っていく
<<RPA活用の相談相手に関する項目>>
IT企業には相談せず、自力でRPA活用を推進する
既存の業務システムと同じ相談相手を選定する
RPA活用の支援では新たな業者に相談する
<<RPA活用のツール選択に関する項目>>
業務の自動化ではRPAの専用ツールを活用する
業務システムが備える自動化機能を活用する
有償ではなく無償ツールを積極的に活用する
<<その他>>
その他:
現時点では判断できない(排他) 以下のグラフは上記に列挙した中から、「F3.RPA活用における課題」の「業務内容に関連した項目」の結果を導入済みと導入予定の場合に分けて集計したものだ。
導入済みと比べた時の導入予定の回答割合は※1で減少する一方、※2、※3、※4では増加している。したがって、業務視点での連携に関する課題が改善されているものの、今後は「自動化の範囲が限定されて、手作業が残ってしまう業務をいかに効率化するか?」(※2と※3)や「単に紙面データをデジタル化するだけでなく、検索や分析にどう活かすか?」(※4)といった点が要注力ポイントの一つとなってくる。ここでは課題項目のごく一部のみを掲載したが、調査レポートでは上記に列挙された様々な課題や基本方針の傾向を集計/分析している。
本リリースの元となる調査レポート
『2020年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート』
RPAやノーコード/ローコード開発ツールといったDX時代に必須となるシステム構築手法の最新動向を網羅した決定版
有効サンプル数: 1300社(有効回答件数)
A1.年商区分: 5億円未満(200社) / 5億円以上~10億円未満(200社) / 10億円以上~20億円未満(200社) /20億円以上~ 50億円未満(200社) / 50億円以上~ 100億円未満(200社) /100億円以上~ 300億円未満(200社) / 300億円以上~ 500億円未満(100社)
A2.職責区分: 情報システムの導入や運用/管理または製品/サービスの選定/決済の権限を有する職責
A3.従業員数区分: 10人未満 / 10人以上~20人未満 / 20人以上~50人未満 / 50人以上~100人未満 /100人以上~300人未満 / 300人以上~500人未満 / 500人以上~1000人未満 /1000人以上~3000人未満 / 3000人以上~5000人未満 / 5000人以上
A4.業種区分: 組立製造業 / 加工製造業 / 建設業 / 卸売業 / 小売業 / 流通業(運輸業) /IT関連サービス業 / 一般サービス業 / その他
A5.所在地区分: 北海道地方 / 東北地方 / 関東地方 / 北陸地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国地方 /四国地方 / 九州・沖縄地方
調査実施時期: 2020年7月~8月
上記に加えて、「A6.IT管理/運用の人員規模」(IT管理/運用を担う人材は専任/兼任のいずれか?人数は1名/2~5名/6~9名/10名以上のどれに当てはまるか?)および「A7.ビジネス拠点の状況」(オフィス、営業所、工場などの数は1ヶ所/2~5ヶ所/6ヶ所以上のいずれか?ITインフラ管理は個別/統一管理のどちらか?) といった属性についても尋ねている。
価格: 180,000円(税別) 発刊日: 2020年12月初旬予定
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