正常進化にこだわるFrameMaker
大量のドキュメントを効率的に作成、改変することに秀でているFrameMakerは、ユーザーの多くが製造業であるため、"正常進化"にこだわっている。
製造業では、ドキュメントを製品の一部として位置づけており、製品が市場に投入されてから販売が終了し、その後の保守に至るまでの製品ライフサイクルを長期にサポートしなければならない。その間ドキュメントの改変も続くので、それを長期にサポートできるドキュメント作成ツールが必要になる。
仁村氏は、「製造業ではドキュメントを長期にサポートしなければならないため、バージョンアップによりドラスティックに機能が変化するツールは選びにくい。そこで操作性や使い勝手はそのままに、機能が追加、拡張され、業界標準に準拠する正常進化が重要になる」と話す。
FrameMaker 12は、製造業における製品マニュアルの制作や、医療機器の操作マニュアルなど、ハードウェアの取り扱い説明書の作成に効果を発揮する。仁村氏は、「例えば、航空機会社のドキュメント管理は非常にうまくできている。とりわけ興味深いのは、ドキュメントを最終的に表示するのがXML対応のブラウザである場合だ」と話す。
「ドキュメント量が大量であることから、どこが変更されたのかを迅速かつ容易に把握できなければならない。また長期にわたり、ドキュメントを管理しなければならないので、継続的なサポートも重要になる。しかし紙のマニュアルを作成しないので、時間と労力を大幅に削減できる。今後、オンライン媒体の位置づけが一層高まることも重要なポイントである」(仁村氏)。
一方、医療機器関連の会社では、医療機器が長期のライフサイクルで利用されるため、ドキュメント管理が重要になる。そこでデータをCMSで管理し、FrameMakerで編集して、出力するという仕組みが利用されている。仁村氏は、「タブレットの利用や医療機器に組み込まれたブラウザでドキュメントを有効活用しているのがポイントだ」と話している。
WordユーザーにFrameMakerを啓蒙
今後の展開の1つとして、Microsoft Wordで大量のドキュメントを作成している企業にFrameMaker 12の有効性を啓蒙していく取り組みがある。Wordで大量のドキュメントを作ってしまったために、別のツールに移行するのが困難になり、そのまま人海戦術でドキュメントを管理してきたが、それも限界に近づいているような企業である。
仁村氏は、「製品マニュアルなどのページ数が膨大で、修正や変更、改変が多いドキュメントに関しては、Wordで作るには荷が重いことは分かっていたが、Wordで作成したというケースはよく耳にする。こうした企業にとって、FrameMakerは非常に有効なソリューションとなり得る」と話す。
FrameMakerでは、バージョン11より搭載している「スマートペースト」と呼ばれる機能により、Wordのコンテンツを構造化コンテンツとして、FrameMakerにコピー&ペーストすることができる。またWordドキュメントをFrameMakerのフォーマットに変換するサービスを提供しているパートナー企業も数多く存在している。
FrameMakerの機能としては、1年半~2年の間隔でユーザーからのフィードバックなどに対応していく計画。現状、課題となっているのはアラビア語やペルシャ語など、右から左に文書を書くための機能のサポートである。仁村氏は、「日本の製品のマニュアルをアラビア語で制作する場合、FrameMakerでサポートされていないので、現状では他のツールを使わなければならない。近い将来にこれを解決したい」と話す。
アラビア語やペルシャ語などの右から左に文書を書く機能は、FrameMakerの次のバージョンでのサポートが計画されている。また製造業向けの機能として、CADのデータが変更された場合に、その変更をドキュメントに自動的に反映する機能の研究開発も続けられている。