EMCジャパン株式会社
執行役員
アイシロン事業本部長
倉橋 秀則氏
スケールアウト型NASの「EMC Isilon」を開発したアイシロン・システムズが設立されたのは、今から約15年前の2001年のこと。EMCジャパン執行役員、アイシロン事業本部長の倉橋秀則氏は「会社の設立当時から、スケールアウト型NASは他社のNAS製品とはまったく違ったアーキテクチャで、大容量データに対応できる拡張性を備えていた」と話す。
2001年当時、ギガバイトからテラバイト、さらにペタバイトクラスにまで拡張可能なデータストレージを切実に必要としている企業は、放送やエンターテインメントと言った一部の業界のみに集中していたという。アイシロン・システムズも、設立当初は主にそうした企業に向けて製品を提供しており、日本でも顧客の傾向は同様だったという。
「Isilonの特長である、ペタバイトクラスにまで対応するスケールアウト性能と、管理性の高さを説明しても、当時は『それほどまでの大容量は必要ない』と言われてしまうケースが多かった。しかし、この15年の間に、あらゆる業種業界において、企業が管理するデータ量はその規模へと達しつつある。Isilonのアーキテクチャは本質的に変わっていないが、そのコンセプトに時代(世の中のニーズ)が追いついてきたと感じている」(倉橋氏)
あらゆる業種、業界の企業が感じ始めた従来型NASの「限界」
倉橋氏によれば、2010年のEMCとの統合を契機に、多様な業種、業界の企業が従来型NASから「スケールアウト型NAS」への移行を本格的に検討する動きが顕著になったという。日本においては製造業、金融業界、病院やクリニック等のヘルスケア業界などでの採用が特長的だとする。
ヘルスケア業界は、「2025年問題」とも呼ばれる本格的な高齢化社会の到来を目前に控え、ITの積極的な活用による効率化が「待ったなし」で求められている分野でもある。CTスキャナやMRIといった画像撮影装置が生成する高精細なデジタル画像の保存や参照を行うPACS(Picture Archiving and Communication System)、電子カルテシステムなどの導入が急ピッチで進められている。また、医療技術の向上などを目的に、手術の様子をデジタル動画で記録するといった取り組みも一部で始まっており、病院が扱うデジタルデータの総量はすさまじい勢いで増加している。徳島大学病院、鳥取大学付属病院なども、引き続き増加が見込まれるデジタルデータの統合管理を目的に「EMC Isilon」の導入を決定したという。
そのほかの業界においても、ビジネスにとって重要なデジタルデータが増え続けていることは自明だ。製造業であれば、図面データや開発データは、デジタルデータとして管理されており、法制対応などで長期間にわたって保存をしておかなければならないケースも多いだろう。また、デジタルマーケティングを取り入れている企業であれば、顧客と企業とのコンタクトに関する重要な情報は、すべてデジタルデータの形で蓄積されていくことになる。
近年、センサデバイスをインターネットに接続し、そこからリアルタイムに取得されるデータの分析を通じて、新たなサービスの開発や提供を行っていく「IoT(Internet of Things)」の取り組みが、多くの業界で活発になっている。その際に生みだされるデータの総量が、従来の常識を越えるものになるのは想像に難くない。
こうした「データ爆発」は、スピードの差こそあれ、ほぼすべての業種、業界に属する企業で起こっている。これから数年のうちに、管理すべきデータが、数ペタバイトクラスにまで膨れあがったとき、それらを適切に管理し、有効に活用し続けていくことはできるだろうか。もはや「それほどまでの大容量は、将来にわたって必要ない」と言い切れる企業は、どこにもないのである。