なぜ「EMC Isilon」なら将来的なNASの課題を克服できるのか
従来型のNASが直面している課題については第1回でも触れたが、最大の問題は、保存すべきデータの容量が、NASが管理しているボリュームの容量を超えた際に、追加で機器を購入し、新たにボリュームを作成する必要があるという「拡張性」の低さにある。
こうした作業が繰り返されることで、管理対象は倍々で増えていき、運用にかかる手間とコストは増大していく。管理対象が数個から十数個といった規模であれば、人手による管理も可能かもしれないが、これが数十から数百のオーダーになれば、手作業の限界を超えてしまうことは容易に想像できる。
さらに、ワークロードの中にデータアクセスに対するパフォーマンスを求められるものがある場合、事態はさらに深刻になる。性能と容量の両面で余力のあるストレージリソースを探し出し、データやアクセスを分散させる作業は、人手で行うにはあまりに非効率な作業になる。結果的に利便性や利用効率が下がれば、ストレージシステムのコストパフォーマンスは大きく低下し、ビジネスそのものにも悪影響を与えることになる。
「スケールアウト型NAS」であるEMC Isilonは、これらの課題を解決するアーキテクチャと機能を備えている点で、従来型NASの将来性に不安を感じているユーザーにとって魅力的なものになっている。
倉橋氏によれば、EMCジャパンでは、Isilonと従来型NASとのアーキテクチャの違いを示すものとして「SPEED」というキーワードがよく使われているという。これは「Simple」「Predictable Performance」「Efficient」「Emerging Workload」「Data Lake Ready」の頭文字をとったものだ。
・Simple(シンプル)…EMC Isilonでは、ストレージ容量が足りなくなった場合、ノード(Isilon本体)を追加することによって、50ペタバイトまで、その容量をシンプルに増加させていくことができる。
・Predictable Performance(予測可能な性能拡張)…EMC Isilonでは、各ノードに搭載された「OneFS」と呼ばれるソフトウェアが協調動作し、各ノードの最適化を自動的に行う。ノードを追加して性能をリニアに向上させつつ、トラフィックを平準化するといったことも可能。
・Efficient(効率性)…EMC Isilonでは、ストレージノードの追加を行った場合でも、全体を仮想的に1つのボリュームとして管理できる。最大で144台まで拡張できるが、その場合でも管理ポイントは1つのままとなり、運用管理コストを大きく下げられる。ノードの入れ替え作業がオンラインで可能なため、大容量化に伴い大きな課題となる「データの移行作業」なども不要。また、ストレージの仮想化によって利用効率も高めることができる。一般的なNAS環境における容量利用効率が平均50%程度であるのに対して、Isilonでは約80%まで高められる。
・Emerging Workload(新たな「攻め」のワークロードに対応)…多様なプロトコルに対応し、ビッグデータ分析、クラウド連携、モバイルアクセス等、トレンドとなっている「攻め」のワークロードにもストレージ内のデータを活用できる。
・Data Lake Ready(「データレイク」への対応)
「SPEED」の「D」が表す「データレイク」とは、ストレージに保存するデータのタイプや、データソース、ワークロードにかかわらず、あらゆるデータを仮想的な1つのストレージに蓄積し、必要に応じて自在に活用できる環境を意味している。文字どおり、企業内にデータの「人工湖」を作るといったコンセプトだが、この「データレイク」環境の構築にあたって、スケールアウト型NASである「EMC Isilon」は理想的な要件を備えているという。
次回は、EMCジャパンのエバンジェリストである牟田泰孝氏に、この「データレイク」のコンセプトが、なぜこれからの企業にとって有効なのか、それを実現するストレージに求められる要件は何かについて聞いていく。