中堅・小規模企業から大規模企業に支持を広げるHyper-V
Windows Server 2008の標準機能として登場してから、約4年で、先行していたVMwareの「VMware ESX」を抜いて仮想化プラットフォーム市場シェアのトップになったHyper-V。現在はWindows XP、Windows Server 2003からの移行に伴い、新規導入数も堅調に増加している。その要因についてマイクロソフトは、「高いコストパフォーマンス」「使い慣れた環境ならではの導入/運用の負担の軽減」に加え、導入の敷居を下げる「『Hyper-V Onモデル』の充実」や、Microsoft Azureの国内データセンターの開設に伴い、より具体的になったクラウド戦略を挙げる。

IDC調査
Hyper-Vが仮想化技術導入のハードルを下げたことは、疑いの余地がないだろう。特に専任のIT管理部門がない中堅・小規模企業では、サーバを集約し、管理負担とコストを低減させるという役割を果たしている。では、エンタープライズ市場において、Hyper-Vはどのような役割を担っているのだろうか。
大規模企業が仮想化技術を利用する最大の目的は、効率的なクラウドの導入/運用だ。しかし、クラウドに精通した人材は今、圧倒的に不足しているという。そのような状況下、マイクロソフトはこうしたニーズに対応すべく、新たな施策を打ち出した。それがクラウドの責任者となる人材を育成するプログラム「Cloud Manager育成講座」である。

日本マイクロソフト株式会社
各務茂雄氏
(ビジネスプラットフォーム統括本部データセンターソリューションスペシャリスト)
これを提供するに至った背景について、Microsoft Corporation Datacenter Solution Specialistを務める各務茂雄氏は次のように語る。
「大規模企業が抱える主な経営課題は、『コスト削減』『ユーザーニーズの変化への対応』『グローバル化』の3つ。この課題を解決する人材に気づきを提供し、継続的に育成をしていくのがこのプログラムの目的です」(各務氏)
人材育成がクラウド成功のカギ
「クラウド・コンピューティングの普及で、企業内におけるIT部門の位置づけは大きく変化した」と各務氏は指摘する。今までIT部門は、ユーザーの要求に対してカスタマイズしたサービスカタログを提供することがミッションだった。しかし、今後は、ユーザーニーズを分析し、ユーザーから要求が上がる前にサービスカタログを定義して、投資計画を立てて、サービスとして提供することが求められる。「そのためには、顕在化していない課題を詳らかにし、その解決策を事前に講じてユーザーに提案しなければならない。いままでにないプロダクトマネージャとしてのスキルが求められる」(各務氏)という。
また、ビジネスのグローバルに伴い、ITシステムにはスピードと柔軟性も一層要求されるようになった。必要なITシステムを迅速、かつ柔軟に構築するためには、ハイブリットクラウドの重要性も増している。グローバル展開時に、低コストで小さく始められるパブリック・クラウドのメリットを生かしつつ、自由度が高く、長期的にコストメリットの出るプライベート・クラウドを組み合わせて、アプリケーションの特性に合わせたハイブリッド・クラウドを提供する必要がある。

Public Cloudの拡大
そこで日本マイクロソフトが提供するのが、「Cloud Manager育成講座」である。前述のような課題を解決するためのノウハウや仕組みを学び、技術、ビジネス、コミュニケーション力を備えた人材を育成するためのプログラムだ。
各務氏は「クラウドの責任者は、企業のIT戦略を担うこと、つまり短期的な計画と長期的な計画を同時に考え、技術だけではなく人材やアプリケーションチームのニーズを鳥瞰的な視野で見て、投資判断する必要があるため、クラウド・マネージャーは経験があると同時に、自身の成長に対してモチベーションの高い人が求められる」と語る。
プログラムでは、SLA(品質保証制度)サービスとコストをベースにサービスカタログの作成、マネジメント方法やデータセンター移行に関するワークショップが組まれている。
サーバ、ストレージ、ネットワーク、OSの管理を担当する技術チームと連携し、最適なクラウドを準備するポイントを双方向で論議する。もちろん、パブリック・クラウドサービスに対する理解や、データセンター間接続のデザインといった実践的な考え方も身につけられるように考案されている。
同人材育成プログラムについて各務氏は、「マイクロソフトだからこそできる内容」と自信をのぞかせる。
各務氏によると、現在、エンタープライズ市場では、VMwareを使用しているユーザーが単純な仮想化されたインフラから本当のプライベート・クラウドを作るためにHyper-Vへの移行を考えているユーザーは多いという。その理由は、「Hyper-Vを"核"としたマイクロソフトのクラウドなら、アプリケーションレイヤまでを含めた、ハイブリッド・クラウドを長期的な視点で計画できるため、マイクロソフトがクラウド時代のビジネスパートナーに最適であると、ユーザーに感じて頂けるから」だと説明する。
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Roleモデル
- SLAとコストをベースにサービスカタログを作れる
- サーバ、ストレージ、ネットワーク、OS、ファシリティのチームと密に連携し、クラウドを作れる
- パブリック・クラウド市場を理解し、自社のクラウドとのポジショニングを作れる
- データセンター間接続を適切にデザインでき、グローバル化にも対応できる
- 運用の自動化のポイントとステップを理解し、運用コストを毎年低減できる
- 人材育成を行える
- 不確実な将来を定義し、ロードマップを作成できる
仮想化技術を選択する際には、インフラのテクノロジーばかりが注目されがちだ。しかしそれは、クラウド全体の投資を俯瞰するとごくわずかである。つまり、ROA(Return On Assets/総資産利益率)の一部だけを改善させても、その効果は限定的である。
各務氏は、「企業が必要としているのは、クラウドの企画から運用までを包含したノウハウである。マイクロソフトはクラウド・サービスの提供者であると同時に、自社でもクラウドをフル活用している。クラウド・ユーザーとしての経験があるわれわれは、顧客視点に立脚した提案とサービスを提供することができます」と力説する。
言うまでもなくマイクロソフトは、プライベート・クラウド基盤となるHyper-Vだけでなく、パブリック・クラウドである「Microsoft Azure」を提供しており、利用者はサービスレベルとコスト、そして必要なタイミングや量に応じて使い分けができる。プライベート、パブリック、そしてハイブリッド環境を1ベンダーで提供できるのは、マイクロソフトだけだ。
現在クラウドの運用に課題を抱えているユーザーに対し各務氏は、「現在利用しているアプリケーションを棚卸しし、3年先を見据えて自社のクラウド・ロードマップを作成することが重要。そして、人材育成も含めた投資計画を立案していただきたい」と各務氏はアドバイスする。
クラウド時代の到来で、人材やITインフラといった企業の"資産"を、優良資産にするか不良債権にするかは、IT部門――特にクラウド・マネージャー――次第といっても過言ではない。「自社にはクラウドのプロフェッショナルを育成したい」と悩んでいる企業は、人材を育成する観点からも、同プログラムを活用するべきだろう。