モバイル戦略活用の有無で、ビジネスに大きな差が
ここに、ある調査結果がある。そのレポートによると、ある取り組みを実施することで、「10%以上の収益成長率」「顧客満足度向上、顧客との対話の強化、従業員の生産性向上、販売増加の実現」といった効果が見られるという。
"ある取り組み"とは何か。それは「モバイル・テクノロジーを企業の戦略と位置付け、積極的に活用すること」だ。この調査は日本IBMが提供する「モバイル・ファースト:モバイル・テクノロジーをリードする組織のベスト・プラクティス」というレポートに示されたもので、世界7カ国361名のIT部門責任者に対し2013年に実施したものだ。
実際、「モバイルデバイスにより生産性が上がる」という事実は、多くの人が日常の中で実感していることだ。外出先や出張先でも重要なメールを見逃すことはないし、必要な情報やデータを営業先ですぐ閲覧・提示することができる。場所を選ばず、責任者やキーマンとのコミュニケーションも可能になるため、意思決定プロセスのスピードも速い。ところが、こうしたメリットがあるにも関わらず、先に紹介した調査結果レポートによると、「多数のモバイル構想を優先し、かつ戦略上の必須事項としてモバイルを扱っている企業」は、20%程度しかいないことが判明したという。
これを基に、IBMでは企業のモバイル・インフラストラクチャーの成熟度として、
(1)モバイル採用に関して極めて初期段階にある「評価段階にある企業」
(2)モバイル・プロジェクトを事業単位または部門単位で慎重に実施している「試験的実施段階にある組織」
(3)限られたモバイル・テクノロジー構想を評価・実施している「実験段階にある組織」
(4)企業規模でモバイル対応ITインフラストラクチャーに取り組む「モバイル・テクノロジーをリードする組織」
の4段階を定義。まだ成熟度が低い(1)(2)の企業は、全体の50%超におよぶそうだ。
これは逆にいえば、今、モバイル・テクノロジーの戦略的構想を立案・実現すれば、それだけグローバル環境の中で優位に立てるということ。本調査レポートでは、モバイル・テクノロジーをリードする組織/その他の組織を比較し、どのビジネス領域でどれだけ差があるかを詳しく分析している。「うちはモバイルを積極的に活用している」と自負する組織も、このレポートをチェックする価値はあるだろう。このレポートを読み、自社のモバイル・インフラについてまず自己評価をしたいのなら、Webアセスメントツール「モバイル・インフラのセルフアセスメント」で診断も可能だ。
モバイル戦略を効果的に進めるための方策とは
モバイル活用が必要なのは、決して大企業だけではない。男性の育児休暇など働き方の多様化、若い時からデジタル・デバイスに慣れ親しんだデジタル・ネイティブ社員の増加、さまざまなツールやデバイスの選択権などが出てくる中、モバイル改革はあらゆる規模・業態の企業において、確実に進んでいる。このように、テクノロジーやビジネス環境の潮流の中で、自発的に進みつつある「モバイル」という手段をどのように戦略的に活用するかが、今後の企業戦略のキーポイントになるわけだ。
そこで問題になるのが、「『モバイル』という大きな課題のどの分野から着手すべきか」ということ。これに対し日本IBMは「ワークプレースの視点」「データセンターの視点」「ネットワークの視点」という3つの視点でモバイル潮流を捉え、これを踏まえてビジネス貢献度を考えて戦略を立てることを勧めている。例えば、デバイスを自由に選ぶ「Bring Your Own Device(BYOD)」によるワークプレースの変化は、ITデバイスの調達コストが削減される反面、ヘルプデスク対応が煩雑になるという課題も生まれている。またBYODの促進により、ネットワークも閉域性の高い有線から無線へとニーズが変化しつつあり、さらにはパブリック・クラウドとプライベート・クラウドを併用してアプリケーションの可搬環境を構築するといった動きも出ている。それぞれのメリットや課題を把握した上で、その解決策とビジネス貢献度を分析していくわけだ。具体的な優先順位付けのマトリクスは、下記「モバイル改革を軸とした企業ITにおける変化の潮流とIT部門の対応」に掲載されているので、一読してほしい。