「インドネシアでのIT構築の勘所」IIJ延廣氏
IIJ Global Solutions Indonesia
President Director
延廣 得雄氏
続いて、IIJのインドネシア法人IIJ Global Solutions IndonesiaでPresident Directorを務める延廣得雄氏が登壇。「誰も教えてくれないインドネシアでのIT構築の勘所」と題して、インドネシアでITを構築する上で日本企業が押さえておきたい「勘所」をネットワークや法令などの観点から説明した。
延廣氏は講演冒頭、インドネシアITの実態を探るための数字をいくつか紹介した。まず総人口は2億5000万人で世界第4位。このうちFacebook利用者は6900万人で、Twitter利用者は1510万人に上るという。日本国内のFacebook利用者は2200万人、Twitterは2100万人であり、SNSの利用度は日本とほぼ同じ状況と考えてもいい。ちなみにMckinseyの調査では、ジャカルタはSNSの利用者で世界最大の都市だという。
また、インターネット広告市場は、2014年の4.2億ドルから2018年には28.5億ドルと7倍に達する見込み(eMarketer調査)。さらにEC事業規模は2014年の120億ドルから、2020年には1300億ドルと10倍に拡大する見通しだ。このほか、携帯電話の普及率は約3億400万件で、総人口に対する普及率は121%を超える。スマートフォン販売比率は2013年時点で23%、人口全体にしめるスマートフォン比率は15%と、携帯電話がモバイルインフラの主流になっている。
興味深いのは、私物モバイル端末の業務利用(BYOD)の数字だろう。日本が22%であるのに対し、インドネシアは93%にも達する。これは、不安定なネットワーク環境や、渋滞、洪水などの業務への影響、盗難などへの配慮などが背景にあるという。うまく利用することで、人員増加やオフィス資産の削減といった点でも効果が得られる。
進出企業にとって、気になるのは、法令や人事給与制度だろう。法令で気をつけるべき点としては、法人設立に6ヵ月以上かかったり、従業員の解雇が難しかったりする点だ。もっとも、本当に難しいのは、良い人材ををどう確保するかだという。このため、日系は待遇面で欧米系に比べて人気がなく、1~2年でジョブホップしてしまうという。組織としての経験の積み上げが難しく、業務が属人化しやすい傾向もある。
「私見では、インドネシアの人が得意とするのは、コツコツやること、指示に従うこと、フレンドリーであること、組織の壁がないこと。我慢強く、言いたいことを言うけれど基本的にはケンカはしない。誰とでも別け隔てなく接し、違いを受け入れる文化がある。それらを押さえて、うまく付き合うことがポイント」(延廣氏)
もっとも、組織に壁がないため、上司の給料までがオープンになるなど、日本との感覚の違いに驚かされることもあるという。計画を立てないまま行動したり、仕事に優先順位をつけるのが苦手といった傾向もあるとのこと。
ITサービスを利用する際に気をつけるべきポイントとしては、まず、アクセス網とサービスプロバイダーが一体化しており、実施的にほかの会社を選択できないことがある。たとえば、主要キャリアにはTelkom(テレコムインドネシア)、Indosat(インドサット)があるが、通信事業者を決めると、プロバイダーも同じTelkom、Indosatになる。また、品質、サポートが一定しないことも課題だ。
また、国内のカバレッジにも注意が必要だ。1万3000以上の島からなる海洋国家であり、全土を網羅するネットワークサービスは提供されていない。カバレッジで見た場合は、Telkom一択という状況だという。このほか、工事や洪水での通信断も起こる。
「このため、企業が独自にネットワークを構築することは現実的ではない。マルチキャリア対応データセンターを活用し、オフィスにも併設するといった工夫が必要になる。ただ、その際は、データセンターやクラウドに対する信頼性が課題になる」(延廣氏)
そうした課題にこたえるために、IIJは2009年から展開しているクラウドサービス「IIJ GIO」のノウハウと経験を活かし、インドネシアでクラウドサービスの提供を開始。インドネシア進出企業を支援していると説明した。
ご希望の方は下記のサイトよりお申し込みください
http://www.iij.ad.jp/news/seminar/2015/sm151105.html