08年夏季は概ね快晴だが、投資は締めの方向へ
08年度のIT投資予算の増減について「増える」「同じ程度」「減る」の3段階の質問を行い、「増える」と「減る」の差異で「投資意欲指数」を算出し、5段階のIT天気予報として指標化したものである。
景気後退の厳しい状況にも関わらず、前回08年春季(5月)時点と比較すると、IT投資額を増やすと回答した企業が年商規模、業種を問わず多かった。2008年度下期に向けて、各企業がIT投資の必要性を強く感じていると見ることができる。しかしユーザやベンダの声を聞く限り、投資の方向は業務改善などの積極的なIT活用ではなく、来年のJ-SOX施行や進行基準会計などの各種法制度への対応やサーバ統合による運用管理負荷軽減とセキュリティ強化といった「締めのIT投資」が多くを占めるものと予想される。
Data2. SaaSに対する意識
利用料金は1ユーザ月額1000円未満が主流データ安全性に関する懸念も啓蒙による解消を期待
グループウェア及びメールをSaaSで利用する際に、1ヶ月1ユーザ当りの妥当な料金について尋ねたものが以下のグラフである。グループウェアに関しては1000円未満とする回答が47.7%と約半数を占めており、現状ASPやSaaSで提供されているWebグループウェアサービスの利用料金と概ね一致している。一方、メールについては500円未満という回答が41.5%に達している。メールに関しては既にプロバイダなどがオプションメニューの形で簡易で安価なメールサービスを提供している。特にSMBにおいてはインターネット接続回線契約と合わせ、それらプロバイダが提供するメールサービスを利用することが多い。セキュリティやモバイル対応など付加価値の高いメールサービスを提供することでSaaS提供会社各社は差別化戦略を進めているが、簡易で安価なメールサービスに満足しているユーザとの間には若干の乖離が見られる。このようにSaaSを利用する際にユーザが適切と考える利用料金はアプリケーション種別によって大きく異なっている。ノークリサーチでは他にも「ウイルスチェック」「スパムチェック」「SFA・CRM」「表計算・ワープロ」「販売・購買管理」「ポリシー制御」「ファイル共有・転送」「モバイルアクセス」「ソフトウェア資産管理」」「人事・給与」「データバックアップ」といった各種アプリケーションに関するユーザの意識調査も実施している。それらの分析結果は11月発刊予定の『2008年版SaaS最新動向レポート特別版』にて詳しく掲載する。
利用料金と並んで、SaaSに対するユーザの意識を図る重要なバロメータが「データ格納場所」に関する意識である。SaaS普及の妨げになる要因として、「ユーザがデータを社外に置くことを嫌気するのでは?」という指摘が良く見られるが、実際のところはどうなのだろうか?以下は「いかなる場合においても社外には預けたくないと考えるデータは何ですか?」という問いに対する回答結果である。
情報系システムは比較的抵抗がない一方で、基幹系システムのデータ及び顧客データについて社外に置くことを嫌気する傾向が強いことがわかる。顧客データについては個人情報保護法への意識が強く働いていると思われる。しかし、IT基盤が磐石とはいえないSMBにおいては社内に置くよりも管理の行き届いたデータセンタに預ける方がむしろ安全であるケースも多々ある。SaaSの先駆事例としてはCRMが良く取り上げられることからもわかるように、顧客データの扱いについては今後啓蒙が進むにつれて徐々に変化していくものと予想される。
実際、顧客データを社外に預けたくない理由を尋ねると、コンプライアンスの観点での懸念が主たる要因であることがわかる。逆に適切なSaaS運用によってコンプライアンス適応が強化されることを訴えられれば、懸念の大半は解消できる可能性が高い。11月発刊予定の『2008年版SaaS最新動向レポート特別版』では社員が作成したオフィス文書などの他のデータ種別に関するユーザ意識調査についても網羅した分析を行う。
Data3. ブレード導入状況
ユーザがメリットを自覚して導入、検討新技術でありながら、ユーザ側の受容性は高い
サーバー統合の最有力手段として注目を浴びるブレードだが、SMBにおける導入状況はどうなっているのであろうか?それを尋ねた結果が以下のグラフである。新規と既存を合わせた導入済み/導入予定/導入検討の合計は36.1%となっており、比較的新しい技術のSMBにおける導入状況としてはかなり高い値を示している。その一方でまだブレードを知らないユーザも36.4%に上っており、まだまだ認知が足りていない状況であるといえる。
ブレードを導入または導入を検討しているユーザに対してその理由を尋ねた結果が以下のグラフである。「サーバの増設が簡単」「設置場所が節約できる」といった項目を筆頭に、ユーザがサーバ統合によって得られる運用管理負担の軽減効果を期待している状況が伺える。販社やSIerからの薦めに追従する傾向が強いSMBにおいて、ユーザがブレードのメリットを自覚して導入もしくは導入検討を行っているという状況は、サーバ運用管理負担軽減がユーザにとって重要な課題であることを示している。
ブレードの導入もしくは検討の状況を問わず、全てのユーザに対してブレードに対する印象を尋ねた結果が以下のグラフである。従来、ブレードはサーバ台数が数十台を越える大規模な運用環境においてのみ利用されるものと認識されていた。だが、昨今では3~4台程度のサーバ統合であってもタワー型もしくはラック型からブレードへの移行は投資対効果が見込めるというのが主要なハードウェアベンダの見解である。それに呼応するようにユーザ側の意識においても「自社の規模には合わない」という回答は2割を下回っており、8割のユーザは自社の規模でもブレードは選択肢になり得ると考えていることがわかる。
ブレードはラック型と異なりベンダ独自仕様のシャーシまたはエンクロージャにサーバを格納していく形態をとる。また最近ではサーバだけでなく、ストレージ/スイッチ/UPSといった各種コンポーネントもエンクロージャに収めるタイプのものが多く見られる。こうした状況からユーザ側にはベンダ固有技術への不安や新しい技術に対する不安などが生じる可能性があるが、「ベンダ毎に仕様が異なる」は16.6%、「新しい技術に不安がある」は16.1%といずれも低い数値に留まっている。このことから、ブレードに対するユーザの受容性は比較的高いということがいえるだろう。
Data4. 仮想化技術の活用状況
現在はテスト・検証の段階ブレードと組み合わせたサーバ統合が最初の活用法
仮想化技術はサーバ統合や古くなったアプリケーションを移設(リホスト)する手段として期待されている。仮想化技術の対象となるものはサーバだけでなく、クライアント環境、ストレージ、ネットワークなど様々なものがある。ここではあえて対象を絞っていないが、現時点では仮想化技術といった場合にはサーバの仮想化を示すと考えて良いだろう。
以下のグラフは自社内における仮想化技術の利用状況を尋ねた結果である。サーバを仮想化する際には仮想サーバ上で稼動する各種アプリケーションの動作検証が必要となる。そのためSMBにおいても4.3%がグループウェアなどの情報系アプリケーションで導入している程度で、大半はまだテスト・検証の段階であるといえる。
仮想化技術を導入または検討している理由を尋ねたものが以下のグラフである。ブレードの場合と同様に運用管理負担の軽減に関係する項目が高いポイントを示している。最近ではブレードにサーバ仮想化のためのミドルウェアをあらかじめ搭載して出荷するケースも多い。ファイルサーバやプリントサーバといった簡易な用途を中心にブレードと仮想化技術を併用したサーバ統合が仮想化技術活用の最初のパターンになりそうである。
仮想化技術に対する印象を尋ねた結果では仮想化技術を利用する用途がないとする回答が最も多かった。まだ具体的な活用シーンが確立されていないため、ユーザ側も利用イメージを描けない状況であるといえる。今後ベンダ側が幾つかの活用パターンを示すことによって、ユーザの具体的な導入検討が本格的に始まるものと予想される。
SMB Question?
IT関連情報を積極的に収集する担当者は約50%
SMBでITシステムの管理を担当している社員は本来の業務と兼務しているケースが少なくない。そのため、IT関連の最新トピックに目を通す時間がなく、ベンダやSIerの提案をそのまま受け入れることが多いとされている。ところが、実際にIT関連最新トピックに関する意識を尋ねてみると、約50%は自社の経営改善もしくは自身の業務負担軽減のために最新トピックの情報収集を行っていることがわかった。IT関連の最新トピックは大企業を対象としたものが多く、大企業で一通りの実績を出した後で部分的に機能を削ったものをSMBに展開していくという流れが多い。しかし場合によっては当初からSMBを対象とした積極的な情報提供を行っていくことによってボトムアップの普及を見込めるケースも存在するものと思われる。
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