2013年中堅・中小企業の海外展開におけるIT活用の実態と展望調査報告

ノークリサーチは2012年~2013年にかけて、中堅・中小企業の海外展開におけるIT活用の実態と展望調査を実施し、その分析結果を発表した。

株式会社ノークリサーチ

2013-05-13 14:00

<国内景況感に過剰な期待をせず、中長期的な視点で海外市場の必要性を見極めることが大切> ■ 2012年と2013年を比較すると、「海外展開済み」と「海外展開予定」を合わせた割合は減少 ■ 「自社商材は海外では受け入れられない」と諦めてしまう中堅・中小企業への啓蒙が必要 ■ 「ベトナム」「タイ」「インドネシア」「マレーシア」「ミャンマー」が今後の進出予定で増加傾向 ■中国へのビジネス展開を阻む要因としては政情面での不安より賃金上昇の影響が大きい ■現地製パッケージを活用したシステムインテグレーションは日本のSIerにとって有効な施策 ■ビジネス支援よりもデータセンタなどITインフラの提供が求められる方向へ変わりつつある
PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2013年5月13日

2013年中堅・中小企業の海外展開におけるIT活用の実態と展望調査報告

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1東京芸術センター1705:代表:伊嶋謙ニTEL:03-5244-6691URL:http//www.norkresearch.co.jp)は2012年~2013年にかけて、中堅・中小企業の海外展開におけるIT活用の実態と展望調査を実施し、その分析結果を発表した。本リリースは「2013年版中堅・中小企業の海外展開におけるIT活用の実態と展望レポート」のダイジェストである。


<国内景況感に過剰な期待をせず、中長期的な視点で海外市場の必要性を見極めることが大切>
■ 2012年と2013年を比較すると、「海外展開済み」と「海外展開予定」を合わせた割合は減少
■ 「自社商材は海外では受け入れられない」と諦めてしまう中堅・中小企業への啓蒙が必要
■ 「ベトナム」「タイ」「インドネシア」「マレーシア」「ミャンマー」が今後の進出予定で増加傾向
■中国へのビジネス展開を阻む要因としては政情面での不安より賃金上昇の影響が大きい
■現地製パッケージを活用したシステムインテグレーションは日本のSIerにとって有効な施策
■ビジネス支援よりもデータセンタなどITインフラの提供が求められる方向へ変わりつつある


対象企業: 日本全国/全業種の年商500億円未満の中堅・中小企業
対象職責: 企業経営もしくはITインフラの導入/選定/運用作業に関わる社員
調査実施時期: 2012年8月~2013月4月
有効回答件数: 1000件または1040件(調査実施時期によって異なる)


■ 2012年と2013年を比較すると、「海外展開済み」と「海外展開予定」を合わせた割合は減少
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対して「海外でのビジネス展開状況」を尋ねた結果を2011年8月、2012年8月、2013年4月のそれぞれで年商帯ごとに比較したものである。「展開済み」の割合が増えている年商もあるが2012年から2013年にかけては「展開済み」と「展開予定」を合わせた割合はおおむね減少している。こうした動きの要因としては尖閣問題に端を発した2012年8月以降の日中関係の悪化や、アベノミクスによってもたらされた円安傾向により円高回避策としての海外展開の必要性が薄まったことなどが考えられる。だが、中堅・中小企業が海外展開やその際のIT活用を検討する要因には様々なものがあり、単に「日中関係悪化やアベノミクス効果によって中堅・中小企業における海外展開は減少傾向にある」と評することはできない。以下では様々な観点から、中堅・中小企業における海外展開への取り組みとそれに伴うIT活用の現状と今後について見ていくことにする。


■ 「自社商材は海外では受け入れられない」と諦めてしまう中堅・中小企業への啓蒙が必要
「海外向けにビジネスを展開する予定はない」と回答した中堅・中小企業の約8割は、その理由として「海外向けにビジネスを展開する必要はない」と回答している。その理由を尋ねたものが以下のグラフである。2012年と2013年を比較した場合、「日本国内での自社ビジネス需要はまだ伸びる」は若干の増加となっているものの、全体に占める割合は1割程度である。
一方、「日本国内の市場があれば自社としては十分である」は減少し、「自社の商材は海外では受け入れられない」は逆に増加している。つまり、「国内市場に期待が持てるので、海外へのビジネス展開は必要ない」といった前向きな理由ではなく「自社の商材は海外に受け入れられないので、最初から考えない」といった後ろ向きの理由付けが増えている傾向といえる。
以下のグラフは「海外向けのビジネス展開を今後加速させる要因」を尋ねた結果である。「円高の継続/進行」は2013年には大きく減少している。今後も円安傾向が続けば、製造業を中心に円高負担を解消する手段として海外進出を検討する割合は減ると予想される。一方で、「中国、インド、東南アジアなどの新興国における経済発展」は常に最も多く挙げられている。
また、「諸外国間における貿易協定の進行」はまだ1割程度と少ないが、2012年と2013年を比べると2倍以上の増加となっている。経済発展のペースが緩やかになりつつある新興国もあるが、日本と比べた時のGDP成長率はいずれの地域も日本と比べて十分に高い。またTPP交渉参加も認められ、参加国との交易も盛んになることが予想される。中堅・中小企業としては「自社の商材は海外で通用しない」と決めつけずに、諸外国で自社商材が受け入れられる機会がないか?といった観点での興味や関心を常に持ち続けることが大切である。


■ 「ベトナム」「タイ」「インドネシア」「マレーシア」「ミャンマー」が今後の進出予定で増加傾向
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対して、「今後新たに拠点設置を伴うビジネス展開を予定している地域のうち最も主要なもの」を尋ね、2013年時点で多く挙げられている順に上位10地域をプロットしたものである。
「中国(台湾を除く)」「インド」「シンガポール」が減少し、「ベトナム」「タイ」「インドネシア」「マレーシア」「ミャンマー」が増加するといった傾向を示している。中国については尖閣問題によって日中関係が悪化した2012年以前においても減少傾向にあり、経済発展にともなう賃金上昇が大きな要因の一つと考えられる。「チャイナプラスワン」と言われるように、賃金上昇や反日活動リスクなどを回避するため、東南アジアにも拠点を設ける取り組みが中堅・中小企業においても盛んになってきている。
これが「ベトナム」「タイ」「インドネシア」「マレーシア」「ミャンマー」といった東南アジア諸国が増加傾向を示す大きな要因の一つだ。また、民主化によって今後の発展が期待される「ミャンマー」のように2011年時点ではほぼゼロだった地域が今後大きく伸びる可能性もある。だが、東南アジアでも「フィリピン」は他と比べて外資規制が厳しいせいか、進出先の上位には挙げられてこない。このように同じ地域でも政情や外資の扱いなどに違いがある点に留意する必要がある。さらに昨今では東南アジア諸国においても既に賃金上昇の動きが見えてきているため、単に安価な労働力を求めるだけではない展開戦略の立案が重要といえる。


■中国へのビジネス展開を阻む要因としては政情面での不安より賃金上昇の影響が大きい
前項で見たように「中国(台湾を除く)」は今後の展開先として挙げられる割合が減少する傾向にあるが、依然として最も多く挙げられる選択肢でもある。2012年8月以降は中国ビジネス展開への影響が懸念されているが、中国への進出を実施済みまたは予定している中堅・中小企業に尋ねた結果では「影響はほとんどない」が約3割、「営業は軽微である」が約5割と概ね冷静だが、その反応は複雑だ。以下のグラフは中国への進出を実施済みまたは予定している中堅・中小企業に今後の中国ビジネス推進意向を尋ね、その回答別に判断理由や懸念事項を挙げてもらったものである。
「現状維持派(1番目のグラフ)」や「拡大派(2番目のグラフ)」では「依然として経済成長率は高い」という理由が多く挙げられ、中国の今後の成長への期待が高いことがわかる。特に「拡大派」については、内陸部への市場開拓に期待を寄せている。
一方、「縮小派(3番目のグラフ)」については「対日感情が高まっている」「デモや暴動による被害が心配」といった政情面の懸念事項を上回る形で「労働賃金が上昇している」が最も多く挙げられている。この項目は「現状維持派」や「拡大派」でも3番目に多く挙げられている。中国へのビジネス展開を控えようとする事由としては、日中関係の悪化も一つの要因としてあるものの、中国の経済発展に伴う賃金上昇が最も大きく影響していることが確認できる。


■現地製パッケージを活用したシステムインテグレーションは日本のSIerにとって有効な施策
本リリースの元となっている調査レポートでは「生産管理システム」「会計管理システム」「販売・仕入・在庫管理システム」「人事・給与・就業管理システム」「ワークフロー」「グループウェア・メール」「運用管理・資産管理」「マルウェア対策・IPS・IDS」「CRM・SFA」「DWH・BI」「文書管理・ファイル管理システム」「帳票関連システム」「システム連携(EAI、SCMなど)」「サーバおよびストレージ」「PC」「インターネットアクセス回線」「日本国内事業所との接続回線」「データセンタ」といった多様な業務システムを対象に海外へのビジネス展開に伴う選定権限、導入状況、提供者、活用の課題など多様な事柄について尋ねている。以下はそのうちの「会計管理システム」に関する一例である。(調査レポートでは年商別、業種別といった企業属性別にデータを確認することができる)
業務システムの「選定における権限」を尋ねた結果では「日本国内の社内意向が強い」が依然として大半を占めている。
これは会計管理システムに限らず全般的な傾向であり、ビジネス展開先が中国から東南アジアへと分散しつつある傾向も踏まえると、今後も日本側で全体戦略を踏まえたシステム選定が行われるものと予想される。
以下のグラフは業務システムの「提供者に関する現状または予定」を尋ねた結果のうち、主要な選択肢を挙げたものである。
「展開先国の製品/サービスを日本のIT企業が導入/運用」および「日本製の製品/サービスを展開先国のIT企業が導入/運用」の2つのパターンが増加していることがわかる。前者は非英語圏で多く見られるパターンといえる。現地固有の言語や制度などへの対応が難しいため現地製のものを導入する必要があるが、国内システムとのデータ連携の必要性なども生じてくるため日本のIT企業が導入/運用を担う場合が少なくないと考えられる。一方、後者は英語圏で比較的生じやすいパターンである。英語であれば日本製業務システムでもカスタマイズなどをせずに対応が可能であることも多く、日本国内システムとのデータ連携も実現しやすいため、現地のIT企業による対応が可能となるものと考えられる。今後も展開先国の言語や制度に応じて、この2つのパターンが併存していくものと予想される。


■ビジネス支援よりもデータセンタなどITインフラの提供が求められる方向へ変わりつつある
以下のグラフは海外へのビジネス展開を実施済みまたは予定している年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、「海外へのビジネス展開に伴うIT活用において支援を依頼する販社/SIerを選ぶ際に重視する点」を尋ねた結果の経年変化を表したものである。「ビジネス展開先国内にサポート拠点を持っている」が最も多く、かつ増加している。海外現地においてもオンサイトのサポートを提供できるかどうか?が最も重要な判断基準となっていることがわかる。また「ビジネス展開先国の法制度や商習慣に精通している」「ビジネス展開先国企業を顧客とした実績が豊富である」「ビジネス展開先国の言語を話せる人材を擁している」「ビジネス展開先国との合弁企業を設立している」「日本企業を顧客とした実績が豊富である」という項目は減少している一方、「ビジネス展開先国企業との協業実績が豊富である」「ビジネス展開先国内にデータセンタを持っている」といった項目は増加している。海外ビジネス展開の目的を尋ねた設問結果では最終商材の製造/販売よりも人手を要するサポート業務に関連した項目が増える傾向にある。(本リリースの元となっている調査レポートには当該設問の詳しい集計結果も掲載されている) そのため、IT活用において支援を依頼する販社/SIerに対してもビジネス的な支援を求める割合が下がっているものと考えられる。一方、大手の販社/SIerの中には現地IT企業と共同でビジネスパークを開設するなどの取り組みも見られ、中堅・中小企業にとっては現地でのIT機器調達やオンサイトサポートの面でも安心感を得られやすい。「ビジネス展開先国企業との協業実績が豊富である」という項目の増加はこうした動きを踏まえたものと考えられる。さらに「ビジネス展開先国内にデータセンタを持っている」については単にデータセンタを開設しているだけでなく、インターネットの品質担保といった観点も重要である。中国におけるインターネット南北問題(北部を中心に展開する中国電信が提供するネットワークと、南部を中心に展開する中国聯通が提供するネットワークの相互接続性が悪いことに起因する様々な問題)の回避はその代表例といえる。国内大手事業者がこうした課題への対処策を提供しつつあり、中国市場を対象としたeコマースを展開する場合などには特に留意すべきポイントとなる。


本リリースの元となっている「2013年版中堅・中小企業の海外展開におけるIT活用の実態と展望レポート」の詳細は
右記URLを参照 (リンク »)
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