2014年冬の中堅・中小企業のIT投資指標

ノークリサーチでは中堅・中小市場における2014年冬の定点観測調査を行った。

株式会社ノークリサーチ

2014-02-03 14:00

「2014年4月までにどのようなIT活用提案をするか?」が回復基調の持続性を大きく左右する ▼ IT投資DIは前四半期で一旦下落したものの持ち直し、プラス10に近づく水準にまで回復 ▼消費増税とXP対応の後を見越して、「戦略的なIT活用提案」に今から取り組むことが重要 ▼業種/業態に応じて「コスト負担軽減」と「ビジネス拡大」の2通りのIT活用提案を使い分ける
PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2014年2月3日

ノークリサーチ Quarterly Report 2014年 冬版 (Vol 024)
調査設計/分析/執筆: 岩上由高

2014年冬の中堅・中小企業のIT投資指標


株式会社ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1 東京芸術センター1705:代表伊嶋謙ニ 03-5244-6691 URL:http//www.norkresearch.co.jp)では中堅・中小市場における2014年冬の定点観測調査を行った。本リリースはその結果速報をまとめたものである。(定点観測調査は4月、7月、10月、1月の年4回実施)
調査対象企業: 年商500億円未満の国内民間企業1000社の経営層および管理職
調査対象地域: 日本全国
調査対象業種: 組立製造業/加工製造業/建設業/流通業/卸売業/小売業/IT関連サービス業/一般サービス業/その他
調査実施時期: 2014年1月
※グラフは下記URLより本リリースにてご確認ください
(リンク »)

「2014年4月までにどのようなIT活用提案をするか?」が回復基調の持続性を大きく左右する
▼ IT投資DIは前四半期で一旦下落したものの持ち直し、プラス10に近づく水準にまで回復
▼消費増税とXP対応の後を見越して、「戦略的なIT活用提案」に今から取り組むことが重要
▼業種/業態に応じて「コスト負担軽減」と「ビジネス拡大」の2通りのIT活用提案を使い分ける


▼ IT投資DIは前四半期で一旦下落したものの持ち直し、プラス10に近づく水準にまで回復
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業全体におけるIT投資DIと経常利益DIの変化をプロットしたものである。
[IT投資DIの定義]
今四半期以降のIT投資予算額が前四半期と比べてどれだけ増減するかを尋ね、「増える」と「減る」の差によって算出した「IT投資意欲指数」を指す。2014年1月時点でのIT投資DIは2013年10月~2013年12月と比べた場合の2014年1月以降のIT投資意向を示す「先行指数」。(IT投資の「実績値」ではなく、投資意向を反映した「見込み値」である点に注意)
[経常利益DIの定義]
前回調査時点と今回調査時点を比較した場合の経常利益変化を尋ね、「増えた」と「減った」の差によって算出した「経常利益増減指数」 を指す。
2014年1月時点での値は2013年10月時点と比較した場合の経常利益増減の実績値となる。2012年11月以降、経常利益DIの値は改善を続け、2014年1月には9.4とプラス10に近い値まで回復した。IT投資DIについても2011年11月から回復傾向が見られたが、前回調査の2013年10月にはわずかに下落する形となった。種々の経済指標は改善傾向を示しているものの企業規模や業種/業態による違いも見られ、必ずしも一様に改善しているとはいえない状況となっている。だが、年が明けた2014年1月にはプラス8.0ポイントと大幅な改善が見られ、経常利益DIと同じ9.4という高い値を示す結果となった。このIT投資DIの上昇がWindows XPのサポート終了や消費税率改正対策といった一時的かつ不可避なIT投資によるものなのか?それとも経常利益の改善に伴う持続的なIT投資の兆候なのか?を見極めることが重要となる。次頁以降ではこの結果に関する年商別および業種別の傾向を俯瞰し、多くの企業が新年度を迎える2014年4月以降のIT活用提案には何が必要か?を考察していくことにする。


▼消費増税とXP対応の後を見越して、「戦略的なIT活用提案」に今から取り組むことが重要
年商毎の傾向は以下の通りとなる。

年商5億円未満:
経常利益DIは2.0ポイント、IT投資DIは8.5ポイントの改善となったが、いずれもDI値そのものは依然としてマイナスである点に注意する必要がある。経常利益改善の理由は「円安の効果」「公共事業の増加」「外国人観光客の増加」など多種多様であり、同年商帯の業績が一律に改善したというよりも、変化に即応できる一部の企業で成果が出始めている状況と見るべきである。
IT投資増加の理由では「売上の向上によってIT投資が捻出できた」「自社の認知を向上させる必要があるため」に加え、「消費税率改正の対応」や「Windows XPサポート終了対応」が比較的多く挙げられている。同年商帯は企業数が多いため、その中から業績改善やIT投資増加を実現できている企業をいかに選別するか?がIT活用を提案する側にとっての課題といえる。

年商5億円以上~50億円未満:
経常利益DIは-4.0ポイント下落したが、IT投資DIは1.5ポイントの改善となった。ただしDI値そのものは共にプラスを維持している。経常利益増加の理由では公共事業を含むアベノミクス効果を挙げる回答に加え、「新たな製品/サービスが好調」「業態の拡大や転換に成功」といった企業自身による取り組みも見られる。しかし、経常利益減少の理由では「円安による原材料/燃料のコスト上昇」や「単価を下げないと購入してもらえない」という回答も多く、コスト上昇と売上減の両面から企業利益を圧迫する状況が続いている点に注意する必要がある。同年商帯はIT投資DIの改善幅が他の年商帯と比べて小さく、IT投資減少の理由では「売上の減少によってIT投資を捻出できない」や「景気が本当に回復するかを見極めたい」といった回答が多い。同年商帯は前回調査でもIT投資DIが改善したが、その事由が「Windows XPサポート終了」といった一時的な要因によるものであったため、その反動が現れてきたものと考えられる。IT活用を提案する側としては製品/サービスの新規展開や業態の拡大/転換を支援する取り組みを模索していく必要がある。

年商50億円以上~100億円未満:
経常利益DIは20.0ポイント、IT投資DIは21.0ポイントといずれも大幅な改善となった。経常利益増加の理由ではアベノミクス効果に加えて「新たな製品/サービスが好調」が多く挙げられ、企業の自助努力による成果の兆しも見え始めている。経常利益減少の理由においても「人材を確保するコストが上がっている」が他の年商帯と比べて多く挙げられており、企業活動の活性化が期待できる兆候が見えつつある。だが、一方のIT投資増加理由では「Windows XPサポート終了対応」が最も多く、2014年4月以降は年商5億円以上~50億円において今回見られたのと同様の傾向となる可能性がある。2014年4月以降は消費税率改正の影響で企業の業績も一時的に下落することが予想されるため、IT活用を提案する側は経常利益が増加している今の段階から取り組みを進めておくことが重要である。

年商100億円以上~300億円未満:
経常利益DIは14.5ポイント、IT投資DIは5.0ポイントの改善となった。経常利益改善の理由ではアベノミクス効果や消費増税を見越した駆け込み需要を挙げる回答が多く、経常利益改善の持続性について注意しておく必要がある。特に経常利益減少の理由では「円安による原材料/燃料のコスト上昇」や「単価を下げないと購入してもらえない」が多く挙げられているため、2014年4月の消費税率改正後の落ち込みに注意しておく必要がある。しかし、IT投資増加理由においては「Windows XPサポート終了対応」も多い一方、「製品/サービスの開発、販路の創出/拡大、業態の拡大/転換にITが必要」という回答も挙げられている。IT活用を提案する側としてはこうした戦略的なIT活用に即した取り組みが重要となってくる。

年商300億円以上~500億円未満:
経常利益DIは14.5ポイント、IT投資DIは11.0ポイントの改善となった。経常利益増加の理由では公共事業を含むアベノミクス効果を挙げる回答が多い一方、減少理由では「企業の設備投資がまだ少ない」「有望な製品/サービスを生み出せない」といった項目が他の年商帯と比べて多くみられ、戦略的な取り組み意向がやや低い点に注意しておく必要がある。これを反映するように、IT投資増加理由においても「Windows XPサポート終了対応」が多く挙げられ、戦略的なIT活用に関する項目が他の年商帯と比べてやや少なくなっている。IT活用を提案する側としては経済環境の変化だけに頼らない戦略的な取り組みの必要性をさらに啓蒙していく必要があると考えられる。

▼業種/業態に応じて「コスト負担軽減」と「ビジネス拡大」の2通りのIT活用提案を使い分ける
業種毎の傾向は以下の通りとなる。

組立製造業:
経常利益DIは7.8ポイント、IT投資DIは10.5ポイントの改善となった。経常利益増加の理由では「円安による輸出数量の増加」「企業の設備投資の増加」「在庫調整や生産調整」が多いが、消費増税を見越した駆け込み需要を挙げる回答も多い点に注意が必要である。IT投資増加の理由では「Windows XPサポート終了対応」が最も多いものの、「競合他社への追随」「海外ビジネス展開」といった項目も他業種と比べると多く挙げられている。大手製造業に部品を供給する中堅・中小企業にとっては海外勢との競争や取引先の海外展開への対応に取り組む必要があり、IT活用を提案する側もそれを踏まえたアプローチが必要となる。

加工製造業:
経常利益DIは22.1ポイントの大幅な改善、IT投資DIは13.3ポイントの改善となった。経常利益については、増加の理由として「在庫調整や生産調整」や「消費増税を見越した駆け込み需要」が多い一方、減少理由として「円安による原材料/燃料のコスト上昇」「電気料金の値上げ負担」が多く、2014年4月以降も持続可能な好材料が少ない。IT投資増加の理由では「WindowsXPサポート終了やMicrosoftOffice2003サポート終了の対応」が多く、 「自社の認知を向上させる必要があるため」を除くと、戦略的なIT投資意向がやや低い。IT活用を提案する側としてはコスト負担増を解決するIT活用施策を検討する必要がある。

流通業(運輸業):
経常利益DIは20.3ポイントの大幅な改善、IT投資DIは6.9ポイントの改善となった。 「円安による原材料/燃料のコスト上昇」はマイナス要因であるが、輸出増や通販やeコマース向け需要などが支える形で経常利益DIを改善させている。IT投資増加理由では「Windows XPサポート終了対応」に加え、「製品/サービスの開発」「業態の転換/拡大」も挙げられている。IT活用を提案する側としてはコスト上昇負担をカバーできる新たなビジネス展開策を提示するなどの施策を練っておくことが有効と考えられる。

建設業:
経常利益DIは5.4ポイント、IT投資DIは12.8ポイントの改善となった。経常利益増加の理由では「公共事業に伴う案件増加」が最も多い一方、減少理由では「企業の設備投資がまだ少ない」や「 人材を確保するコストが上がっている」 が多い。公共事業に参入でき、人材も確保できる企業とそうでない企業の間で今後差が生じる可能性がある。IT投資の増加理由では「WindowsXPサポート終了やMicrosoftOffice2003サポート終了の対応」が多く、 「自社の認知を向上させる必要があるため」を除くと、戦略的なIT投資意向がやや低い。IT活用を提案する側としては円安に伴う資材調達負担などを軽減するコスト削減施策などを検討することが有効と考えられる。

卸売業:
経常利益DIは16.8ポイント、IT投資DIは12.0ポイントの改善となった。経常利益増加の理由では「企業の設備投資の増加」や「新たな製品/サービスが好調」が多いものの、消費増税を見越した駆け込み需要を挙げる回答も同程度ある点に注意が必要である。IT投資増加の理由では「Windows XPサポート終了対応」や「消費増税を見越した前倒しのIT投資」が多いが、「販路の創出や拡大」や 「自社の認知を向上させる必要があるため」も同程度挙げられている。IT活用を提案する側としては消費増税によって企業業績が一時的に下落する前に戦略的なIT活用を訴求するアプローチを進めておくことが重要である。

小売業:
経常利益DIは-7.5ポイント、IT投資DIは-2.9ポイントと主要な業種の中では唯一下落する結果となった。経常利益減少の理由としては「単価を下げないと購入してもらえない」「物価上昇を見越した節約志向が始まっている」「消費者の購買意欲は依然低い」といった項目が多く挙げられ、給与上昇が十分伴わないうちに消費増税を迎えつつある現状の課題を反映した結果となっている。
IT投資減少の理由は売上減少によるところが大きいが、販路の創出/拡大においてITが必要と考える企業も存在する。IT活用を提案する側としては初期投資負担を抑えながら単価減少を補うビジネス拡大を支援するアプローチの検討が求められる。

IT関連サービス業:
経常利益DIは24.4ポイントの大幅な改善、IT投資DIは5.3ポイントの改善となった。経常利益増加の理由ではアベノミクス効果に加え、「新たな製品/サービスが好調」「業態の拡大や転換に成功」といった企業自身による取り組みに起因する項目も見られる。
IT投資増加の理由では「売上の向上によってIT投資が捻出できた」が最も多い。Windows XPのサポート終了や消費税率改正対応に伴う顧客企業のIT投資増加を契機として、そこで得た収益を次のビジネス展開につなげる取り組みが重要となってくる。

サービス業:
経常利益DIは2.9ポイント、IT投資DIは10.4ポイントの改善となった。経常利益増加の理由では「外国人観光客の増加」「少子化による子供一人当たりの単価上昇」などといった特定の業態に限定される要因も挙げられているが、サービス業全体で見た場合は「アベノミクス効果」を除いて特に突出した項目が見られない。2014年4月の消費税率改正後にアベノミクスへの期待感が薄れた場合には業績が低下する可能性がある点に注意する必要がある。IT投資増加の理由では「Windows XPサポート終了対応」が最も多く、戦略的なIT活用に関連する項目はあまり挙げられていない。IT活用を提案する側としては業態固有の企業戦略を把握した上で、アベノミクスへの期待感だけに頼らないビジネス拡大に向けた施策を訴求していく必要がある。


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