OpenAIの「Deploy Co」やAnthropicの新会社が日本国内のSIerに与える影響
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:www.norkresearch.co.jp)はOpenAIの「Deploy Co」やAnthropicの新会社が日本国内のSIerビジネスに今後どのような影響を与えるか?を分析し、その結果を発表した。本リリースは「2025年版 中堅・中小企業のITアプリ開発ツール利用実態と展望レポート」に収録された集計データを元に考察を行ったものである。
<巨大なAIプラットフォーマーの国内SI進出も想定して、今から先手を打っておく>
■「Forward Deployed Engineer(FDE)」や「Applied AI Engineer」はAI時代の新たな競合か?
■日本国内のユーザ企業もAIエージェント導入/活用では「顧客密着型支援」を求めている
■金融機関や行政機関との協力も視野に「強制力を伴ったAI活用への適応」も検討すべき
調査時期: 2025年7月~8月
対象企業: 日本全国、全業種の年商500億円未満の中堅・中小企業1300社(有効回答件数、1社1レコード)
対象職責: 情報システムの導入や運用/管理または製品/サービスの選定/決裁の権限を有する職責
詳細については本リリースの4ページを参照
■「Forward Deployed Engineer(FDE)」や「Applied AI Engineer」はAI時代の新たな競合か?
2026年5月に入り、米国の大手AI企業では注目すべき動きが相次いでいる。5月4日にはAnthropicがBlackstoneやHellman&Friedmanといった投資/資産運用会社などと共にAIサービスを担う新会社の設立を発表した。同様に、5月11日にはOpenAIがTPG、Bain Capitalなどと共に「OpenAI Deployment Company」(Deploy Co)の設立を発表している。(Deploy CoにはSoftBankも参加) 両者に共通するのは企業におけるAI導入/活用をオンサイトで支援する人員体制を擁する点だ。Anthropicの場合は「Applied AI Engineer」、OpenAIの場合は「Forward Deployed Engineer(FDE)」と呼ばれる。 FDEという用語は欧米の政府系機関でも多くの実績を持つPalantir社によって広められた。従来のコンサルタントや常駐型SES(System Engineering Service)と比べて更に深く顧客の業務現場に入り込んだ支援を行う職責を指す。これを実現するため、OpenAIは英国のAIコンサル企業であるTomoro社の買収にも合意済みだ。
日本国内のSIerから見た場合、OpenAIやAnthropicはAPIを通じてAIモデルを提供するプラットフォーマーであり、顧客の業務現場に踏み込んだSIを担う役割とは縁遠い存在だった。だが、 「Forward Deployed Engineer(FDE)」や「Applied AI Engineer」と同様の取り組みが日本国内で展開されれば、日本国内のSIerにとってはAI時代の新たな競合が生まれることになる。
次頁以降ではユーザ企業およびIT企業を対象として実施した市場調査データを元に、OpenAIやAnthropicの新たな取り組みが日本国内のSIerにとって脅威となるのか?そのために日本のSIerは何をすべきなのか?を考察していく。
■日本国内のユーザ企業もAIエージェント導入/活用では「顧客密着型支援」を求めている
一方、日本国内ではソブリンAIの考え方に基づいた国産AIモデル開発の取り組みも進んでいる。NTTの「tsuzumi」やNECの「cotomi」を始めとする国産AIを基盤とした、小規模だが業界/業種の業務に適合したAI活用は後発組の日本にとっては堅実な選択だ。さらに、企業毎のデータ保護の観点ではローカルAI環境の整備も重要な取り組みとなってくる。
現時点での発表内容を見る限り、「Forward Deployed Engineer(FDE)」や「Applied AI Engineer」は企業の業務システム全体をクラウド主体のAIネイティブな姿に変革/刷新する取り組みのように見える。こうしたアプローチは上記に述べた日本の現状や言語/文化の特殊性とは必ずしも適合しないかも知れない。とは言え、SaaSが登場した頃も様々な障壁が指摘されていたが現在は海外事業者が運営するSaaSがいずれの業務分野においても高いシェアを示している。「欧米のアプローチは日本では通用しない」と決めてかからず、今後の推移を注視していく必要がある。
また、ユーザ企業側はどのように考えているのか?も確認しておく必要がある。以下のグラフはノークリサーチが発刊している調査レポートの中から、「AIエージェントの導入/適用を予定しているユーザ企業におけるニーズを全体平均と比較した結果」を抜粋したものだ。(年商500億円未満、全国/全業種の企業が対象)
AIエージェント活用に意欲的なユーザ企業では「ヒアリングによる業務の整理」(※3)や「スキル習得の支援」(※4)といった間接的な後押しだけでなく、「推進グループの立ち上げ」(※1)や「データ書式の統一」(※2)といった人員体制や業務データまで深く入り込んだ支援がより多く求められていることがグラフから読み取れる。つまり、日本国内のユーザ企業も「Forward Deployed Engineer(FDE)」や「Applied AI Engineer」に類似した顧客密着型の支援を期待していることになる。(次頁へ続く)
■金融機関や行政機関との協力も視野に「強制力を伴ったAI活用への適応」も検討すべき
とは言え、SIerが前項に述べた「人員体制や業務データまで深く入り込んだ支援」を実践しようとしても、ユーザ企業側の協力が十分に得られないことも少なくない。以下のグラフはIT企業に対して、AIエージェントを含めたITアプリ開発ツールを実際のシステム案件で活用する際の課題を尋ねた結果の中から、回答割合が高い上位5項目をノークリサーチが発刊している調査レポートから抜粋したものだ。
「ツールを導入しても、ユーザ側での利用が活性化しない」(※A)が1番目、「ユーザ企業の業務フローを把握/整理することが難しい」(※B)が2番目に多く挙げられていることから分かるように、IT企業から見た場合には人員体制や業務データの変化を避けるユーザ企業の現状維持志向がAI導入/活用の障壁となっている実態が垣間見える。
冒頭に述べたOpenAIやAnthropicの取り組みでは、こうした障壁の打開策も考慮されている可能性がある。両者が設立する新会社には多くの投資/資産運用会社が含まれている。これらの企業は顧客であるユーザ企業に対しても経営面や金融面で強制力を行使できる立場にあることも少なくない。業績改善の手段として「Forward Deployed Engineer(FDE)」や「Applied AI Engineer」の手動によるAIネイティブな業務システムへの変革/刷新をユーザ企業に強く求めることも不可能ではないわけだ。
今後、 OpenAIやAnthropicが日本国内の金融機関や一部の大手SIerと協業して米国と同様のスキームを実現したとすれば、残る大多数のSIerにとっては※C、※D、※Eといった課題が更に顕著となり、最悪の場合は既存の業務や案件を失う可能性も生じてくる。
それを避け得るためには「先手を打つ」ことが重要だ。情報系(グループウェア/メールなど)や顧客管理系(CRMなど)は既に外資系のSaaSが高いシェアを占めているが、会計、販売、人事給与および業務特化型といった基幹系システムは依然として国内製のパッケージが多く利用されている。日本国内のSIerが地域の金融機関や行政機関と協力関係を築けば、AIを活用した基幹系システムによる業績改善の重要性/必要性を相応の強制力を伴ってユーザ企業に訴求することも全く不可能とは言えない。
巨大なAIプラットフォーマーがSIの領域に進出しつつある今、日本国内のSIerにとっては従来の垣根を超えた協業も視野に入れて、金融面や行政面も含めた多角的な視点でユーザ企業がAI時代に適応していくためのスキームを作っていくことが求められていると考えられる。
本リリースの元となる調査レポート
『2025年版 中堅・中小企業のITアプリ開発ツール利用実態と展望レポート』
中堅・中小のユーザ企業を対象とした有効回答1300社の調査を実施し、RPA、ノーコード/ローコード開発ツール、AIエージェントの導入済み/導入予定の状況を年商別および10分野の業務アプリケーション分野毎に集計/分析、さらにユーザ企業とIT企業の双方におけるツール活用の課題やニーズも網羅。
【対象企業属性】(有効回答件数:1300社、調査実施期間:2025年7月~8月)
年商: 5億円未満 / 5億円以上~10億円未満 / 10億円以上~20億円未満 / 20億円以上~50億円未満 /50億円以上~100億円未満 / 100億円以上~300億円未満 / 300億円以上~500億円未満
従業員数: 10人未満 / 10人以上~20人未満 / 20人以上~50人未満 / 50人以上~100人未満 /100人以上~300人未満 / 300人以上~500人未満/ 500人以上~1,000人未満 /1,000人以上~3,000人未満 / 3,000人以上~5,000人未満 / 5,000人以上
業種: 組立製造業 / 加工製造業 / 建設業 / 卸売業 / 小売業 / 流通業(運輸業) /IT関連サービス業 / 一般サービス業 / その他:
地域: 北海道地方 / 東北地方 / 関東地方 / 北陸地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国地方 /四国地方 / 九州・沖縄地方
その他の属性: 「IT管理/運用の人員規模」(12区分)、「ビジネス拠点の状況」(5区分)、「IT活用に関わる職責」(2区分)
【分析サマリ(調査結果の重要ポイントを述べたPDFドキュメント)の概要】
第1章: RPA、ノーコード/ローコード開発ツール、AIエージェントの導入済み割合
中堅・中小企業におけるRPA、ノーコード開発ツール、ローコード開発ツール、AIエージェントの導入済み割合を年商別や適用対象となる10分野の業務アプリケーション毎に集計/分析
第2章: RPA、ノーコード/ローコード開発ツール、AIエージェントの導入予定割合
中堅・中小企業におけるRPA、ノーコード開発ツール、ローコード開発ツール、AIエージェントの今後の導入予定を年商別や適用対象となる10分野の業務アプリケーション毎に集計/分析
第3章: RPA、ノーコード/ローコード開発ツール、AIエージェントの導入済み/導入予定の社数シェア
RPA、ノーコード開発ツール、ローコード開発ツール、AIエージェントの4つの区分について、導入済み/導入予定の社数シェアを年商別に集計
第4章: ユーザ企業から見たRPA、ノーコード/ローコード開発ツール、AIエージェントを活用する際の課題とニーズ
ユーザ企業がRPA、ノーコード開発ツール、ローコード開発ツール、AIエージェントを活用する際に顕著に見られる課題やニーズを集計/分析
第5章: IT企業から見たRPA、ノーコード/ローコード開発ツール、AIエージェントを活用する際の課題とニーズ
IT企業自身がRPA、ノーコード開発ツール、ローコード開発ツール、AIエージェントを活用する際に顕著に見られる課題やニーズを集計/分析
第6章: RPA、ノーコード/ローコード開発ツール、AIエージェントの導入費用
RPA、ノーコード開発ツール、ローコード開発ツール、AIエージェントを導入済み/導入予定のユーザ企業がITアプリ開発ツールに対して拠出可能な費用を尋ねた結果を集計/分析
【発刊日】 2026年3月30日 【価格】 225,000円(税別)
【調査レポート案内】 (リンク »)
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株式会社 ノークリサーチ 担当:岩上 由高
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-13-10 武蔵野ビル5階23号室
TEL 03-5361-7880 FAX 03-5361-7881
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