千葉工業大学との共同調査:「企業の製品開発における業績指標」に関する分析例

ノークリサーチは千葉工業大学社会システム科学部 田隈研究室との共同調査として、企業の製品開発における業績指標の分析を行った。

株式会社ノークリサーチ 2018年07月17日

<IT市場の調査分析手法を「企業の製品開発における業績改善」にも活かせる可能性がある> ■「開発された製品の業績を左右する要因(指標)」の探索は企業にとって極めて重要な事柄 ■ベイジアンネットワーク分析とプロジェクトマネジメントの観点を合わせて新たな知見を探る ■「メディアの反響」の販売数への寄与は2極化、「ベンチャー連携」はリスクもあるが効果的

PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2018年7月17日

千葉工業大学との共同調査:「企業の製品開発における業績指標」に関する分析例

設問設計、監修:千葉工業大学社会システム科学部 田隈広紀 准教授
調査設計、分析、執筆: 株式会社ノークリサーチ シニアアナリスト 岩上由高

ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1東京芸術センター1705:代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5244-6691URL:http//www.norkresearch.co.jp)は千葉工業大学社会システム科学部 田隈研究室との共同調査として、企業の製品開発における業績指標の分析を行った。本リリースは同調査の結果に対してベイジアンネットワーク分析を行った結果の要約である。


<IT市場の調査分析手法を「企業の製品開発における業績改善」にも活かせる可能性がある>
■「開発された製品の業績を左右する要因(指標)」の探索は企業にとって極めて重要な事柄
■ベイジアンネットワーク分析とプロジェクトマネジメントの観点を合わせて新たな知見を探る
■「メディアの反響」の販売数への寄与は2極化、「ベンチャー連携」はリスクもあるが効果的


■「開発された製品の業績を左右する要因(指標)」の探索は企業にとって極めて重要な事柄
大企業だけでなく、中堅・中小企業においても「企業が自ら製品を開発する」といった取り組みは数多く存在する。その際に重要となるのが、「開発された製品に伴う業績(売上額や利益額など)を左右する要因(指標)」は何か?という観点である。
そこで、千葉工業大学社会システム科学部 田隈研究室とノークリサーチは科学研究助成事業(JSPS科研費17K12788)による企業活動支援の一環として、企業を対象としたアンケート調査を共同で実施し、「企業の製品開発における業績指標」に関する様々な集計および分析を行った。本リリースはそうした一連の調査結果からベイジアンネットワーク分析を適用した結果の要約を紹介したものである。
下図のベイジアンネットワークでは様々な要因が「ノード(円)」で表されている。例えば、「D6-1.3年間の販売数」には「ランク1(1~21個):14.3%」、「ランク2(23~400個):13.1%」などいったように、各要因に複数の値とその値を取り得る確率がアンケート集計結果データを元に割り当てられている。ノード間には「エッジ(矢印)」が描かれ、ある「要因A」が他の「要因B」にどのように影響しているか?を表している。また、特定の要因に値(エビデンス)を与えた時、他の要因において各値を取り得る確率がどう変化するかを推論できる。次頁以降では、下記の分析結果に関する要約ならびに製品開発マネジメントの観点からの評価について記載している。


■ベイジアンネットワーク分析とプロジェクトマネジメントの観点を合わせて新たな知見を探る
本リリースで紹介している分析例は以下のようなステップで実施されている。
【ステップ1:設問設計】
製品開発マネジメントの知見に基づき、千葉工業大学社 田隈研究室において以下のような設問項目を定義。
【ステップ2:企業に対するアンケート調査】
ノークリサーチにて以下のサンプル抽出条件に基づき、ステップ1の設問項目の実績についてアンケート調査を実施。
【ステップ3:ベイジアンネットワーク分析の適用】
以下の流れで、ステップ2で得られたアンケート調査結果に対してノークリサーチにて分析を実施。
ステップ3-1.データの離散化:
ベイジアンネットワーク分析に適用するため、数値入力設問を選択肢設問に変換
ステップ3-2.エッジ候補選定:
ブートストラップ法を用いてサンプルから反復抽出(100回)を行い、反復の結果としてx=0.7より大きな確度(0<x<1)が得られたノード間の接続を候補とする。
ステップ3-3.ネットワークの学習:
上記の候補を設定した上で、AICを指標としたコストベースの計算手法で(TabuSearch)ベイジアンネットワークの構造を学習する。
ステップ3-4.ネットワークを用いた推論:
ノードにエビデンスを設定するなどして、ベイジアンネットワークの推論を行う。
【ステップ4:分析結果の考察/評価と今後の展望】
ノークリサーチによる推論結果に関する考察や、千葉工業大学 田隈研究室による製品開発マネジメントの観点からの評価や今後の展望を述べる。(【ステップ4】の要約を次頁以降に記載している)
ベイジアンネットワークを用いた他の分析例については下記を参照
2018年 会計管理の差別化ポイントを訴求するための最適な順序に関する分析 (リンク »)
2017年 シミュレーションを用いたITソリューション訴求の優先度判断 (リンク »)
2017年インバウンド対応支援とITソリューションの関係性に関する分析と提言 (リンク »)


■「メディアの反響」の販売数への寄与は2極化、「ベンチャー連携」はリスクもあるが効果的
ベイジアンネットワーク分析の結果からは以下の3つのポイントが垣間見えてくる。
ポイント1:予算額や売上額と他の要因との関連冒頭に掲載したベイジアンネットワークが示すように、「A1.予算額(万円)」/「A2.3年間の売上額(万円)」/「A3.3年間の利益額(万円)」/「A4.3年間の利益率(パーセント)」、「D5.製品開発に要した期間(月)」といった要因は他の要因と繋がっていない。
予算額や売上額などは個々の企業によって差が大きいため、今回の調査における選択肢に列挙した様々な要因との関連性が明確な傾向として表れにくいと考えられる。そこで 以降の分析では他の要因と関連付けられており、製品開発の成果という観点で評価対象となりやすい「D6-1.3年間の販売数」および「D7.3年間の販売数市場シェア(パーセント)」を評価指標とする。
ポイント2:「製品に対する反響」が「3年間の販売数」に与える影響
左図は冒頭に掲載したベイジアンネットワークのうち、「D6-1.3年間の販売数」に関連するノード部分を抜粋したものだ。エッジを辿ると、 「D6-1.3年間の販売数」は「C4.製品に対する反響」の影響を受けることがわかる。ここでの「反響」とは製品に対するメディア(新聞/雑誌/テレビ)の反応を指している。
ここで、メディアの反応が「良い」と「悪い」のそれぞれのエビデンスを設定した時、「D6-1.3年間の販売数」の状況がどう変わるか?を推論(シミュレート)したものが以下の数表である。「良い」場合は販売数が多い状況である「ランク4」の割合が「悪い」に比べて高くなるが、販売数が少ない「ランク1」や「ランク2」も高くなっている。したがって、メディアの反響を改善することは販売数に影響を及ぼすが、影響の仕方は2極化しており、必ずしも全ての場合において販売数が伸びるとは限らないと考えられる。 ポイント3:「連携したベンチャー企業の数」が「3年間の販売数市場シェア」に与える影響左図は冒頭に掲載したベイジアンネットワークのうち、「D7.3年間の販売数市場シェア(パーセント)」に関連するノード部分を抜粋したものだ。エッジを辿ると、 「D7.3年間の販売数市場シェア(パーセント)」は「C7-1.連携したベンチャー企業の数」の影響を受けている。また、その途中には「D8.3年間の不具合発生件数」や「D9-2.著名な学会誌での発表件数」といった要因が存在していることもわかる。 ここで、ベンチャー企業と「連携がない」場合と「4~6社の連携がある」場合でD8、D9-2、D7の状況がどう変わるか?を推論(シミュレート)したものが以下の数表だ。「4~6社の連携がある」場合は「連携がない」場合と比べて不具合件数が増える一方、「著名な学会発表件数」や「販売市場数シェア」にはプラスの影響を与えている。したがって、不具合件数が増えるというリスクはあるものの、製品開発における対外的な成果を挙げるためにはベンチャー企業との連携を積極的に進めることも検討する価値があると考えられる。


製品開発マネジメントの観点からの評価と今後の展望 (千葉工業大学田隈准教授の考察)

製品開発は企業にとって経営を左右する重要な活動である一方で、様々な成功・失敗要因が複雑に絡み合い再現性も低いため、決め手となる理論や手法が確立されていない。当研究室では企業の競争力強化につなげるべく、製品開発における実績値を分析し、何らかの傾向、法則、ひいては定石を見出す研究を行っている。今回のベイジアンネットワーク分析による業績指標の構造化によって、下記の事項が考察できる。

【ポイント1】について
前述の通り、今回の分析ではKGI(重要目標達成指標/製品開発のゴールとなる指標)に相応しい指標として「D6-1.3年間の販売数」と「D7.3年間の販売数市場シェア」が導出された。一方で企業にとって開発製品における「A3. 3年間の利益額」 「A4. 3年間の利益率」は特に重要な指標であり、この目標値達成に向けて中間ゴールにKPI(重要業績評価指標)を設定することが多いと思われる。しかし分析の結果、 「A3. 3年間の利益額」 に対しては中間ゴールに相応しい指標は先行ノードに存在せず、 「A4. 3年間の利益率」には連関する指標が一つもない、という結果となった。これは利益額・率の算出に用いる「原価」が製品・部署・企業固有の事情で異なることが起因していると想定される。より多くの実績データを用いた追加検証が望まれるが、もし今回の分析と同じ結果となった場合、製品開発を評価するうえで「利益額・率」は適切ではないという結果になるかもしれない。
【ポイント2】について
「C4. 製品に対する反響」が良い場合における販売数が2極化するという結果は、予想と異なる新たな知見だった。メディアを介した情報発信を行う際には、PDCAサイクルを回して成約・販売への波及効果を高めるようなマネジメントが特に求められそうだ。また別のエッジをみると、下記のポイント3に記載するノードと連関していることがわかる。ベンチャー企業と連携したハイリスク・ハイリターンな製品開発を行う際に、メディアによる情報発信をどのように活用するべきか、今後より具体的な知見を示せればと考える。
【ポイント3】について
「D7.3年間の販売数市場シェア」に至るノードの連関が特に注目される。多少の不具合増加のリスクを取ってベンチャー企業と連携し、学術誌や社内表彰に掲載・選出されるような独自性の高い論文が書ける製品開発を行うことが、市場シェアの向上に貢献するという、経験者の多くのがうなずけるストーリーが導出された。これを踏まえれば、ベンチャー企業をはじめとする外部組織との連携対応力が、今後の企業の競争力を大きく左右するといえるだろう。また社内論文を募集する際は、量よりも質にこだわった応募を促すことが、製品開発の成功に良い影響を与えることが推測される。
【今後の展望について】
今回のベイジアンネットワーク分析は、複雑かつ多様な製品開発プロジェクトに共通する傾向・法則の仮説を科学的に導出できたと考える。特にこれまでの製品開発マネジメントに対する認識と一致しない結果が導出されたことは、この分野における新たな知見、ひいては定石を確立させるうえで、注目するべき事実である。
一方でそのような結果となったメカニズム(からくり)を質的な考察によって求め、製品開発チームの行動や社内制度に反映させていくことも重要である。今後は上記の各ポイントの考察に記した追加検証するべき事柄に的を絞った分析を行い、製品開発マネジメントの「定石」の導出にチャレンジしていきたい。データサイエンスとマネジメントの双方の知見を組み合わせれば、有用で面白い発見がたくさん出てきそうだ。


「千葉工業大学社会システム科学部 田隈研究室」のご紹介

【研究内容】
・ プログラムマネジメント理論の実用化
* ここでの「プログラム」はイノベーション創出・社会問題解決を意図したプロジェクト群を指す。
* 研究成果例: ロジックモデルとバランススコアカードを用いた研究計画支援システムの有効性
(化学工学論文集 Vol. 39, No. 3, pp. 256-264, 2013)

・ IoPMの社会実装
* IoPM: Internet of Program Managementの略称。田隈らが新たに提唱しているインターネットの特性を活用した
プログラムマネジメント活性化プラットフォームを表す。
* 研究成果例: IoPM 実現に向けた価値指標マネジメント支援機能の提案
(国際P2M学会2018年度春季研究発表大会予稿集, pp. 274-283, 2018)
【専門分野】
プログラムマネジメント、プロジェクトマネジメント、 ソフトウェア開発マネジメント (キーワード:プロジェクト・プログラムマネジメント支援ツールの開発と実用化)

【学外活動】
国際P2M学会評議員、内閣府革新的研究開発推進プログラム ”セレンディピティの計画的創出” プログラムアドバイザー、東京大学 理学系研究科 客員共同研究員、Hitachiアカデミックシステム研究会企画幹事 等

【ホームページ】
(リンク »)
※ 上記は当リリース発刊時点の情報です。

本リリース内容の転載/引用を希望される場合には下記のお問い合わせ先にご一報をいただいた上で、出典(本リリースのタイトルおよび著者名)の記載をお願いいたします。

当調査データに関するお問い合わせ
株式会社 ノークリサーチ 担当:岩上 由高
〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1東京芸術センター1705
TEL 03-5244-6691 FAX 03-5244-6692
inform@norkresearch.co.jp
www.norkresearch.co.jp

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