2022年 BN分析を用いたDX成功/失敗の境界線と突破口の探索

ノークリサーチは「2022年版 中堅・中小企業のDXソリューション導入実態と展望レポート」のデータに数理統計を用い、DX提案における成功/失敗の要因に関する提言を発表した。

株式会社ノークリサーチ

2022-08-22 12:00

<データから導かれる「定石」を着実に実践していくことで、無用な失敗を回避することができる> ■DX導入の効果&課題に関する700社のデータ分析から、成功/失敗のメカニズムを視覚化 ■IT関連部門がDXに着手する余裕を作らなければ、経営層がDXを理解しても成果は出ない ■業務効率に与える影響などを無視したコスト削減策を進めると、DXの導入効果は低減する ■DXの理解における多様性を許容し、「伴走型」でDXと現場業務をカバーする人材を育てる
PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2022年8月22日

2022年 BN分析を用いたDX成功/失敗の境界線と突破口の探索

調査設計/分析/執筆:岩上由高


ノークリサーチ(本社: 〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室:代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は「2022年版 中堅・中小企業のDXソリューション導入実態と展望レポート」のデータに数理統計を用いた同社サービス「カスタムリサーチ・プラス」を適用し、DX提案における成功/失敗の要因に関する提言を発表した。

<データから導かれる「定石」を着実に実践していくことで、無用な失敗を回避することができる>
■DX導入の効果&課題に関する700社のデータ分析から、成功/失敗のメカニズムを視覚化
■IT関連部門がDXに着手する余裕を作らなければ、経営層がDXを理解しても成果は出ない
■業務効率に与える影響などを無視したコスト削減策を進めると、DXの導入効果は低減する
■DXの理解における多様性を許容し、「伴走型」でDXと現場業務をカバーする人材を育てる


■DX導入の効果&課題に関する700社のデータ分析から、成功/失敗のメカニズムを視覚化
DXソリューション提案にはユーザ企業の業種や規模を考慮した具体的な活用場面の提示が不可欠となる。ノークリサーチの最新レポート「2022年版 中堅・中小企業のDXソリューション導入実態と展望レポート」では、10カテゴリ/計35項目の具体的なDXソリューションと事例を列挙し、業種や規模に応じた施策をIT企業向けに提言している。(DXソリューションと事例の一覧は※の調査レポート案内を参照) その一方で、IT企業からは「ユーザ企業におけるDX人材の不足が最大の障壁なのか?もしそうであれば、IT企業側でやれることは少ないのではないか?」という相談を受けることが多い。上記のレポートには700社に渡るユーザ企業におけるDX導入の効果や課題についても豊富なデータが収録されている。そこで、本リリースでは数理統計を用いた高度な分析を行う「カスタムリサーチ・プラス」の手法を適用し、業種や規模に共通するDX成功/失敗のメカニズムを明らかにしていく。 (※ 調査レポート案内: (リンク ») )
以下のグラフはベイジアンネットワーク(BN)分析を用いて、DX導入の効果(R)と課題(I1~I23)の関連性を分析したものだ。次頁以降では下図の結果を元に、DX導入でプラスの効果を得るために克服すべき課題は何か?(経営層がDXを理解することが最優先なのか?まずコスト削減から進めるべきなのか?本当に不足している人材とは何なのか?など)に対する答えを明らかにしていく。

■IT関連部門がDXに着手する余裕を作らなければ、経営層がDXを理解しても成果は出ない
「2022年版 中堅・中小企業のDXソリューション導入実態と展望レポート」ではDX導入の効果(複数回答可)を以下の選択肢で尋ねている。ここでユーザ企業毎に「※1で選んだ選択肢数(A)」および「※2で選んだ選択肢数(B)」をそれぞれ計算し、
A > B ⇒ 1
(DXの成果:プラス効果 > マイナス効果)
A ≦ B ⇒ 0
(DXの成果:プラス効果 ≦ マイナス効果)
とした値を割り当てると、ユーザ企業毎に0 or 1の値をとる変数となる。これが前頁の図に示した「R:DXの導入効果」に該当する。

DX導入の効果に関する選択肢
<<プラス効果>>(※1)
・ビジネスの刷新や開拓ができる
・現場業務の効率を改善できる
・業務システムを改善できる
・人材活用を最適化できる
・他社と連携/協業できる
・競合と差別化できる
・異業種に参入できる
・売上向上が実現する
・コスト削減が実現する
<<マイナス効果>>(※2)
・議論だけで実践が伴わない
・費用が予想/計画を上回る
・期待した効果が得られない
・試験的な取り組みに留まる
・自社の慣習/文化に適さない
さらに上記の調査レポートでは以下の23項目に渡る選択肢を列挙して、DX導入における課題についても尋ねている。
DX導入の課題に関する選択肢
I1.費用に見合う効果を得られる確証がない
I2.DXの検討をするために費用が発生する
I3.業績が好調でなければDXも成功しない
I4.コストは削減できるが売上は向上しない
I5.必要な費用を捻出することができない
I6.IT企業が自社のDXアイデアを否定する
I7.IT企業の提案が先進事例に基いている
I8.経営層がDXの必要性を理解していない
I9.現場部門がDX推進に非協力的である
I10.従来の文化/慣習が障壁となっている
I11.DXに対する理解の内容が様々である
I12.どの業務から着手すれば良いか判断できない
I13.クラウドサービスへの移行が目的化している
I14.自社の業務に合ったITソリューションがない
I15.DX関連システムと既存システムが分断される
I16.データの収集/分析だけでは業務は改善しない
I17.ITと本業に関わる技術の連携がとれていない
I18.試験的な導入(PoC)のみを繰り返している
I19.IT関連部門の人員がDXに着手する余裕がない
I20.現場部門の人員がDXに着手する余裕がない
I21.DXと現場業務を共に理解した人材がいない
I22.DXに必要な技術スキルを持つ人材がいない
I23.DXに必要なデザイン力を持つ人材がいない
上記の課題について、「課題あり ⇒ 1、課題なし ⇒ 0」の値をユーザ企業毎に割り当てた変数が前頁の図で示した「I1」~「I23」である。ベイジアンネットワーク(BN)分析とは「R」や「I1」~「I23」を確率変数と見なし、互いの関連性を有向グラフとしてモデル化する手法である。(BN分析の他の事例は右記を参照 (リンク ») ) また、今回は特定の変数(この場合は「R」)をターゲットとしたグラフ構造を最適化する改良手法に関する研究成果も取り入れている(※)
※ Y.Iwakami, H.Takuma, M.Iwashita (2020) Properly initialized Bayesian Network for decision making leveraging random forest
Artificial Intelligence Research. (リンク »)
BN分析の利点は課題の関連性を視覚化し、さらに「課題Aを抱えた場合、それが他の課題や導入効果にどう影響するか?」を推論(シミュレーション)できる点だ。例えば、下図は前頁の中から「I8」「I19」の課題と「R」との関連部分を抜粋したものだ。 「I19」から「I8」と「R」に矢印が伸びた構造はTail-to-Tailと呼ばれる。この場合、「I19」の値が確定すると、「I8」と「R」は互いに影響を及ぼさなくなる。(両者は他の変数を経由した矢印でも繋がっているが、その影響は僅かに留まる)
実際、I19=1という条件(I19の課題が生じた状態)で「I8」と「R」の値を変化を見ると、 I8の課題が有/無のいずれの場合もR=1(プラス効果 > マイナス効果)となる割合はほぼ変わらない。
I8=1(課題:有)の場合にR=1となる割合: 62.3%
I8=0(課題:無)の場合にR=1となる割合: 61.3%
つまり、『IT関連部門がDXに着手する余裕がない状態で経営層がDXの理解を深める努力をしても、効果は期待できない』という定石がデータ分析から得られたことになる。次頁ではBN分析を用いた更なる知見の探索を進めていく。

■業務効率に与える影響などを無視したコスト削減策を進めると、DXの導入効果は低減する
連 一方、左図は冒頭のBN分析結果の図から「I1」「I4」の課題と「R」の関連部分を抜粋したものだ。今度は「R」と「I4」から「I1」に矢印が伸びたHead-to-Headと呼ばれる構造になっている。
この場合、「I1」の値が確定しない間は「R」と「I4」の関係は互いに影響を及ぼさないが(他の変数を経由した繋がりによる影響は僅か)、I1が確定すると互いに影響するようになる。つまり、費用対効果の確証がないという課題が発生(I1=1)した場合はコスト削減の取り組み内容がDXの導入効果に影響する。 実際に、I1=1という条件(I1の課題が生じた状態)で「R」と「I4」の値を変化を見ると、
I4=1(課題「コストは削減できるが売上は向上しない」:有)の場合にR=1(プラス効果 > マイナス効果)となる割合: 84.7%
I4=0(課題「コストは削減できるが売上は向上しない」:無)の場合にR=1(プラス効果 > マイナス効果)となる割合: 58.6%
となり、DXの導入効果に大きな差が生じている。つまり、『DXの費用対効果が見えない状態で売上向上を無視したコスト削減を進めると、DXの導入効果が下がる』 ことがわかる。 DXに取り組む原資を捻出するためのコスト削減は重要だが、業務効率に与える影響などを考えないコスト削減は避けるべきであることが改めて確認できる。


■DXの理解における多様性を許容し、「伴走型」でDXと現場業務をカバーする人材を育てる
さらに冒頭のBN分析結果を見ると、「R」に向かって「I2」「I11」「I19」の3つの課題から矢印が伸びている。(Head-to-Head)つまり、R=0/1のそれぞれの場合で3つの課題は互いには影響しないが、「R」には影響を与えている。そこで、R=0/1のそれぞれの場合において、3つの課題が発生する割合を算出したものが右図のグラフである。R=1の場合はR=0と比較して「I2」や「I11」の課題を抱えている割合が高いことが確認できる。
つまり、DXの検討段階で費用が発生してしまう状況(I2)や社内外でDXの理解が異なっている状況(I11)はDXの導入効果という点では必ずしもマイナスではないことがわかる。むしろ、『検討段階でも必要な費用は捻出し、DXの理解における多様性を許容する』ことが重要といえる。さらに以下のグラフは「DXの理解が様々である」(I11=1)という状態でDXの導入効果を高めるために克服すべき課題は何か?を推論した結果だ。(I11に近接する課題項目について、R=0/1における課題発生割合を算出)
「I21.DXと現場業務を共に理解した人材がいない」という課題を抱える割合はR=1(プラス効果 > マイナス効果)における値の方が低いため、「社内外でDXの理解が異なる」という状態でもDXの成果を得るためにはこの課題の解消が重要となる。IT企業としては『まず現場業務に習熟し、その上でITスキルを習得することの重要性を啓蒙する』ことも大切だ。その際は以下のリリースで述べている 「伴走型SI/サービスにおけるユーザ企 業からIT企業への人材派遣」 といった試みも検討の価値がある。 伴走型SI/サービスに関するリリース: (リンク »)


本リリースで行ったBN分析の元となる市場調査データが収録されている調査レポート

『2022年版 中堅・中小企業のDXソリューション導入実態と展望レポート』
DXソリューション導入を「一部の先進企業」から「中堅・中小の幅広い裾野」に広げるために必要な施策とは何か?
【対象企業属性】(有効回答件数:700社)
年商: 5億円未満 / 5億円以上~50億円未満 / 50億円以上~100億円未満 /100億円以上~300億円未満 / 300億円以上~500億円未満
従業員数: 20人未満 / 20人以上~50人未満 / 50人以上~100人未満 / 100人以上~300人未満 / 300人以上~500人未満 /500人以上~1000人未満/ 1000人以上~3,000人未満 / 3,000人以上~5,000人未満 / 5,000人以上
業種: 組立製造業 / 加工製造業 / 建設業 / 卸売業 / 小売業 / 運輸業 / IT関連サービス業 / 一般サービス業
地域: 北海道地方 / 東北地方 / 関東地方 / 北陸地方 / 中部地方 / 近畿地方 / 中国地方 / 四国地方 / 九州・沖縄地方
その他の属性: 「IT管理/運用の人員規模」(12区分)、「ビジネス拠点の状況」(5区分) 【分析サマリの章構成】
第1章.DXに対する取り組み状況とその主導者
DXの取り組みがどこまで進んでおり、誰が主導しているのか?(経営層、業務部門、IT関連部門など)などの現状を解説。
第2章.導入済み/導入予定のDXソリューション
最新のDXソリューション事例を踏まえて、10カテゴリ、35項目に渡る具体的なDXソリューションを列挙した上で、IT企業が今後注力すべきDXソリューションを業種別に分析。
第3章.DXの成果とユーザ企業の方針/体制の関連IT企業がユーザ企業に対して文化/慣習の変化を促す際に有効なアプローチを明らかにするため、DXで成果を出している
ユーザ企業はどのような基本方針や組織体制で取り組んでいるかを分析。
第4章.DXを阻む課題とIT企業が提供すべき支援策
ユーザ企業がDXソリューション導入で直面している課題とIT企業側がDXソリューション提案で抱えている課題を照合し、課題を克服するためにIT企業が取り組むべきポイントを解説。
第5章.DXソリューションに対する支出額と市場規模
ユーザ企業がDXソリューションに拠出可能な費用を尋ねた結果を分析し、導入意向と単価の双方が高いカテゴリは何か?を明らかにすると共に、年商別/業種別/地域別のDXソリューション市場規模を算出。
第6章.DX関連の技術ならびにトレンドの展望
メタバース、ブロックチェーン応用、量子コンピュータ、ニューロマーケティングなど、13項目に渡る最新の技術やトレンドを中堅・中小企業がどのように捉えているのか?今後の普及が見込めるのはどれなのか?に関する展望を解説。 【価格】 180,000円(税別) 【発刊日】 2022年6月13日
詳細は右記の調査レポート案内をご参照ください (リンク »)

ご好評いただいている既刊の調査レポート 各冊180,000円(税別)

2021年版 中堅・中小企業のセキュリティ・運用管理・バックアップに関する今後のニーズとベンダ別導入意向レポート
(リンク »)
2021年版中堅・中小向け5G/ネットワーク関連サービスの展望レポート
(リンク »)
2021年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート
(リンク »)

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当調査データに関するお問い合わせ

株式会社 ノークリサーチ 担当:岩上 由高
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-13-10 武蔵野ビル5階23号室
TEL 03-5361-7880 FAX 03-5361-7881
Mail: inform@norkresearch.co.jp
Web: www.norkresearch.co.jp
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