特別講演:「ビジネスへの対応力をつける」がクラウド選択の理由
元 協和発酵キリン
情報システム部 部長
篠田敏幸氏
特別講演には元 協和発酵キリン 情報システム部の篠田敏幸氏が登壇。「エンタープライズ企業としてのクラウド導入の勘所」と題して、適切にクラウドを導入するためのポイントを明らかにした。
篠田氏は、1984年から協和発酵工業(現、協和発酵キリン)情報システム部に所属し、以来33年間にわたって同社のシステム構築に携わってきた。2010年には「エンタープライズ・データHub」と呼ばれるエンタープライズアーキテクチャ構築を主導。2012年からは部門長としてグローバル視点でクラウドを推進した。2017年4月からはフリーランスとして、情報システムに関する講演活動を続けている。
篠田氏は、そうした自身のキャリアの中で得られた知見を交えながら、「なぜクラウドを活用するのか」「情報セキュリティを含む安全性を確保し、どう上層部を説得するか」「運用はどう変わるか」など、クラウドの導入および活用のポイントを解説していった。
クラウド選択の最大の理由は、ビジネスへの対応力をつけるためだという。「変化に強い情報システムを作るには、ビジネス視点を持って課題を解決する必要があり、それを外部サービスを使う体制やルールに落とし込んでいくことが重要です」と篠田氏は強調した。
クラウドは「新しい変化に強い外部サービス」
セキュリティや安全性確保の点では、「万が一の際にはクラウドの機能だけに頼らず、別リージョンへのバックアップ・アプリケーションの冗長化などのサービスを活用すること」「権限分離を行って操作可能範囲を制限すること」をポイントとして挙げた。「クラウドを特別ルールで管理するのではなく、既存ルールに追加する形で安全対策を整えていくことが重要です」と篠田氏。これは、上層部を説得する際の材料としても有効だ。
「クラウドを特別視せず、“新しい変化に強い外部サービスの利用”として説明するようにします。一方で、費用の適正化・経費化を前面に押し出し、クラウドのような固定資産にならないサービスを選択するメリットも訴えていきます」(篠田氏)
コストは、ハードウェア費用と比較した場合、AWSに移行しただけで大きく削減されるわけではない。人件費など見えづらいOperation費用、データセンター費用の可視化することで、投資効果が見えるようになってくる。一方で、AWSの利用が増加してコストが増えることもある。重要なのは、利用状況のモニタリングなどによりコスト低減策を講じることやシステム開発の高度化・迅速化などで利用を増やし、ビジネスのメリットを訴求することだ。今まではできなかったユーザー要求に対応したシステムを開発するなど、AWSを“使い切る”ことが必要となる。
最後に篠田氏は「クラウドは万能ではありません。AWSが提供するガイドラインや認定パートナーを参考にしながら、ポイントを押さえて、うまくつきあっていくことが大切です」と特別講演をまとめた。