日本企業の遅れ—調査結果が浮き彫りにした潜在的リスク
調査報告によれば、従業員数500名以上の国内大企業の91%において、Windows7搭載PCの保有比率は未だ4分の1以下と、普及の足並みは未だ遅いことがわかった。さらに半数以上の大企業では、3年以上前のPCとノートPCの保有比率が、なんと5割にのぼっていた。またデルによれば、ほとんどの組織はリソースの約 80 %を、運用およびレガシーシステムの管理に費やしているという。
あなたの企業のITリーダーは、これがいかに大きい潜在的リスクか把握しているだろうか。企業が成長するためには、限られた投資予算を変革の足がかりに投じる事がどうしても必要となる。裏を返せば、コストを払って旧世代のシステムを使い続ける後ろ向きの投資は、成長の機会損失という大きなリスクでもある。
本稿は、調査結果をベースに、エンドユーザーのハードウェア/ソフトウェアの更新戦略に関する現実のリスクと提言をまとめた資料を紹介し、ITリーダーに求められる決断について言及していく。
大多数のPCで奨励される製品寿命は3年程度
冒頭で記した調査は、370社の国内大企業を対象に、CBS InteractiveがZDNet Japanの協力のもと2011年1月にオンラインで行ったものだ。
国内企業の多くはWindows Vistaへの移行を見送った後も、一部の用途には十分耐えるなどとして旧世代のマシンを延命させ、来るべき以降への備えを怠ってきたのが現状だ。例えばWindows7に対応するアプリケーションがどの程度あるのかについて、44.6%は「わからない」と回答、そのビジネスリスクを全く認知していない。さらに半分以上の企業は、この2年間にアプリケーションインベントリの作成を完了していないか、作成したか把握していないというのである。
(CBS Interactive/ZDNet Japan 調査より抜粋)
企業の重要資産であるアプリケーションに可視性が欠如し、ポートフォリオが把握できていないうえにPCが旧式化している現状は、迅速に対処しなければ不要なコストやサポートの期限切れといった問題に直結していく。まして現在の企業を取り巻く環境は、期限切れが迫るWindowsXPがリリースされた2001年当時とは一変しているのだ。
多くのユーザは複数のモバイルデバイスなども併用し、高速ネット回線を前提としたアプリケーション戦略も当然のようになった現在、企業はどのようにPCライフサイクルを管理するのが正しいのだろうか。その回答は、まず下記の資料から読み取る事ができる。
現状革新につながる投資を--仮想化ソリューションの導入
リスクは顕在化してから対処したのでは遅いということは、図らずも先の震災で多くの経営者が思い知らされた。また災害を契機に、事業継続に関するポリシー策定が重要との認識も一気に高まった。こうした背景に鑑み、今後はクライアントPCの更新と平行し、仮想化技術を背景にした、場所や端末を問わない業務継続のあり方も模索されていくはずだ。その結果、バーチャルリモートデスクトップ(Virtual Remote Desktop:VRD)のような仮想化ソリューションの普及に弾みがつく可能性が高いはずである。
デスクトップを仮想化してしまえば、従来型の物理デスクトップで避けて通れなかった現場に直行してのメンテナンスがなく、ローカルに置かれたデータが危険にさらされることもない。デルでは、VRDのリファレンスアーキテクチャとして、デスクトップワークロードをホスティングする仮想インフラストラクチャの検証済み構成を3種類提示している。
企業規模に応じた、バーチャルリモートデスクトップ活用の選択肢
では、その3構成を簡単に紹介していく。
ハードウェアおよびソフトウェアはユーザ数別に区分されている。
250ユーザ | 500ユーザ | 1000ユーザ | |
特徴 | 小規模構成 | 小~中規模ビジネス向け設計 | 大規模なエンタープライズ環境 |
Hyper-V サーバ |
PowerEdge R710 x3 | PowerEdge R710 x6 | PowerEdge R710 x12 |
CPU | 2ソケット Xeon X5670 | ||
最小メモリ | 96GB | ||
OS | WindowsServer2008 R2 ServerCore |
デルは広範にわたる業種やエンタープライズにおいて、複雑化したレガシーシステムの維持に奪われていたIT予算を変革への投資に回すことが生産効率向上のカギになると提言している。そのうえで、データセンターやクラウドの効率化に加え、企業がデスクトップを「いかに使い分けるか」という3つの大きな効率化の波が、それを実現する重要な要素だと指摘する。すでに先進的な企業では、ユーザーのIT環境において、ファットクライアントと仮想クライアント(または仮想アプリケーション)を使い分けたハイブリッド的な運用が浸透し始めている。だからこそIT担当者は、旧来のシステムを使い続けるリスクを改めて認識したうえで、中長期的な視野でライフサイクルを管理することが求められるだろう。
ただ現状では、国内企業は変革へのIT投資の姿勢が、海外に比べ消極的と受け止められており、国際競争力の喪失を懸念する声があるのも事実だ。このことはガートナーが3月3日に発表した、「CIOが抱える次年度の課題」 でも示されている。経営層がIT戦略をビジネス戦略に合致させていく意識変革が、今後ますます重要になるだろう。