2011年中堅・中小企業における「クライアントPCセキュリティ」の利用実態とユーザ評価
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1東京芸術センター1705:代表:伊嶋謙ニTEL:03-5244-6691URL:http//www.norkresearch.co.jp)は2011年の国内中堅・中小市場における「クライアントPCセキュリティ」の利用実態とユーザ評価に関する調査を実施し、その分析結果を発表した。本リリースは「2011年版中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」の「クライアントPCセキュリティ」カテゴリに関する速報である。
<シェア上位三社で7割弱を占める状況は変わらないが、今後は他分野との融合や
モバイル端末やASP/SaaS形態への対応など、新たな差別化ポイントが発生>
■「トレンドマイクロ」「シマンテック」「マカフィー」がシェア上位三社を占める状況は変化なし
■運用管理・資産管理と同様に、モバイル端末とASP/SaaS形態への対応が今後の注目点
■バージョンアップ時にトラブルを発生させないことがユーザ評価においては重要なポイント
調査対象: 日本全国の年商500億円未満の中堅・中小企業(有効回答件数1400件)に属し、以下いずれかの権限を持つ社員
「情報システムの導入や運用/管理の作業を担当している」
「情報システムに関する製品/サービスの選定または決裁の権限を有している」
調査実施時期: 2011年8月
※調査対象の詳しい情報については右記URLを参照 (リンク »)
■「トレンドマイクロ」「シマンテック」「マカフィー」がシェア上位三社を占める状況は変化なし
以下グラフは年商500億円未満の国内中堅・中小企業全体における導入済の「クライアントPCセキュリティ」製品/サービスの導入社数シェアを示したものである。※調査対象となった製品/サービスの一覧は末頁の「調査対象製品/サービス一覧」を参照
2010年におけるシェア上位は「ウイルスバスターコーポレートエディションまたはビジネスセキュリティ」「ノートンシリーズまたはSymantec Endpoint Protection」「McAfeeシリーズ」の順であった。2011年もこの順位は変わらず「ウイルスバスターコーポレートエディション、VBBSS、またはビジネスセキュリティ」「ノートンシリーズまたはSymantec Endpoint Protection」「McAfeeシリーズ」の順となっている。
さらにこれら三つの製品/サービスで全体の約75%のシェアを占めている。クライアントPCセキュリティは製品/サービスの技術面での変更障壁が高く、ユーザ企業側も製品/サービスを変える動機を見出しにくい。そのため、こうしたシェア傾向は今後も継続する可能性が極めて高い。
■運用管理・資産管理と同様に、モバイル端末とASP/SaaS形態への対応が今後の注目点
以下のグラフは「クライアントPCセキュリティ」製品/サービスの運用形態および端末形態について、導入済みと新規導入予定を比較したものである。
運用形態においては既にパッケージが大半を占めている。注目しておくべきなのはASP/SaaS形態が導入済みでは2.0%、サンプル数が少なめではあるが新規導入予定では6.4%と増加傾向にある点である。運用管理・資産管理と同様にクライアントPCセキュリティにおいても管理サーバの設置が不要であるなど、ASP/SaaS形態は中堅・中小企業にとってのメリットが大きい。
そのため、運用管理・資産管理と共にASP/SaaS形態への移行が進む可能性がある。
端末環境においても運用管理・資産管理と同様にスマートフォンはクライアントPCセキュリティにとっての管理対象となりうる。既に主要なベンダはスマートフォンを対象としたセキュリティ対策製品/サービスの提供を開始している。今後はクライアントPCセキュリティとモバイル端末セキュリティの製品/サービスを個別提供するのか、単一の製品/サービスとするのかといった各社のラインアップ戦略が注目される。
■バージョンアップ時にトラブルを発生させないことがユーザ評価においては重要なポイント
本調査では
「導入/サポートの価格は妥当か」
「機能が足りているか」
「動作が軽快かどうか」
「自社の要件に合致しているか」
「初めてのユーザもすぐに操作を習得できるか」
「慣れたユーザにとって操作が煩わしくないか」
「他システムとの連携手段が整っているか」
「不具合や誤動作はないか」
「プログラミングによる機能の追加/変更(カスタマイズ)がしやすいか」
「設定変更などプログラミングを伴わない形での機能の追加/変更がしやすいか」
といった数多くの項目について五段階評価で製品/サービス別にユーザ企業による評価を行っている。
以下から次頁にかけてのグラフはそのうちの「導入/サポートの価格は妥当か」「動作が軽快かどうか」「不具合や誤動作はないか」についてのシェア上位の製品/サービスにおける評価結果である。※評価ポイントの算出方法は次頁末尾を参照
マルウェアに対する防御力という点では各社いずれも改善を重ねているものの、ユーザ企業に製品/サービスの変更を促すまでの決定的な差異は生まれにくいのが実情である。
そうした中、シェア上位三つの製品/サービス以外のベンダは「導入サポートの価格」(例. 購入後のサポート費用がかからない「ウイルスセキュリティZERO」)や「動作の軽快さ」(例. 「ESET NOD32 AntivirusまたはESET SmartSecurity」)といった別の観点での差別化に注力している。
こうした差別化要因をもってしても、シェア変動はなかなか起きづらいが、「不具合/誤動作のなさ」の評価については全ベンダに共通して注意が必要である。特にバージョンアップ時にシステム障害などに繋がる障害が発生すると、運用管理担当者にとっては製品/サービスの切り替えも視野に入れた検討を促すきっかけにもなり得る。そのため、バージョンアップ時を中心とした「不具合/誤動作のなさ」については継続して製品/サービスの向上に取り組むことが重要である。
【評価ポイント算出方法】
五段階評価結果を「大変不満:-5ポイント」「多少不満:-3ポイント」「どちらでもない:0ポイント」「まあまあ満足:3ポイント」「大変満足:5ポイント」と重み付けし、ある評価項目「項目a」について、「A社の「大変不満」という回答件数= H1」「A社の「多少不満」という回答件数= H2」「A社の「どちらでもない」という回答件数= H3」「A社の「まあまあ満足」という回答件数= H4」「A社の「大変満足」という回答件数= H1」と定義した場合に、以下の計算式によって算出している。
A社の項目aに関する評価ポイント
= ( H1×(-5) + H2×(-3) + H3×0 + H4×3 + H5×5) ÷ A社の項目aに関する回答件数合計
(各製品/サービスの利用件数自体が少ない場合には、その点に留意が必要である)
■調査対象製品/サービス一覧
今回の調査対象として導入シェアや評価における選択肢として挙げた製品/サービスは以下の通りである。
ウイルスバスターコーポレートエディションまたはビジネスセキュリティ/トレンドマイクロ
McAfeeシリーズ/マカフィー
ノートンシリーズまたはSymantec Endpoint Protection/ シマンテック
ウイルスセキュリティZERO /ソースネクスト
ESET NOD32 Antivirus またはESET Smart Security /キヤノンITソリューションズ
Kaspersky Open Space Security /Kaspersky Labs Japan
エフセキュアクライアントセキュリティ/アンチウイルスワークステーション/エフセキュア
AhnLab V3 Corporate Edition /アンラボ
セキュリティプラットフォーム/ハミングヘッズ
ウイルスバスタービジネスセキュリティサービス(SaaS形態) /トレンドマイクロ
エフセキュアプロテクションサービスビジネス(エフセキュアビジネスセキュリティも含む) (SaaS形態)/エフセキュア
McAfee SaaS Endpoint Protection(McAfee Total Protection Serviceも含む) (SaaS形態)/マカフィー
Panda Cloud Office Protection(Panda Managed Office Protectionも含む)(SaaS形態)/Panda Security
Symantec Hosted Endpoint Protection (SaaS形態)/ シマンテック
AhnLab MySaaS (SaaS形態) /アンラボ
Windows Intune (SaaS形態) /日本マイクロソフト
Business Security Technical Service(BSTS) (SaaS形態)/ 富士通マーケティング
SHILDIAN NETservice またはMaLion Internet Security (SaaS形態)/ インターコム
上記以外のパッケージ製品またはサービス
独自開発システム(オープンソースをベースとしたもの)
独自開発システム(ベースとなるものがない完全なスクラッチ開発)
ここでの「クライアントPCセキュリティ」とは、PCがマルウェア感染防止を主な機能とした統合的なPCセキュリティ対策アプリケーションを指す。そのため、Webやメールにおけるフィルタリングやハードディスク暗号化といった特定のセキュリティ対策に特化した製品/サービスは除外している。
本リリースの元となっている「2011年版中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」の詳細は下記URLを参照
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