2012年中堅・中小企業における基盤サービスの活用実態調査報告

ノークリサーチは2012年の国内中堅・中小企業におけるIaaSやPaaSといった基盤サービスの活用実態に関する調査を実施し、その分析結果を発表した。

株式会社ノークリサーチ

2012-09-18 14:00

<基盤サービスによる責任範囲を明示し、外に預けることのメリットを訴求することも有効> ■IaaSとPaaSの融合およびユーザ企業が意識しない間接的な利用形態への留意が必要 ■ユーザ企業による自覚的な基盤サービス活用は年商100億円以上の中上位層が主体 ■コスト削減に加え、今後はモバイル/災害対策/他社連携などの導入効果も意識される ■基盤サービス側が提供する/しない範囲の明示やセキュリティ関連の事前説明が大切
PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2012年9月18日

2012年中堅・中小企業における基盤サービスの活用実態調査報告

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


ノークリサーチ(本社〒120-0034 東京都足立区千住1-4-1東京芸術センター1705:代表:伊嶋謙ニTEL:03-5244-6691URL:http//www.norkresearch.co.jp)は2012年の国内中堅・中小企業におけるIaaSやPaaSといった基盤サービスの活用実態に関する調査を実施し、その分析結果を発表した。本リリースは「2012年版SaaS/クラウド市場の実態と中期予測レポート」のダイジェストである。


<基盤サービスによる責任範囲を明示し、外に預けることのメリットを訴求することも有効>
■IaaSとPaaSの融合およびユーザ企業が意識しない間接的な利用形態への留意が必要
■ユーザ企業による自覚的な基盤サービス活用は年商100億円以上の中上位層が主体
■コスト削減に加え、今後はモバイル/災害対策/他社連携などの導入効果も意識される
■基盤サービス側が提供する/しない範囲の明示やセキュリティ関連の事前説明が大切


対象企業: 日本全国/全業種の500億円未満の中堅・中小企業
対象職責: 企業経営もしくはITインフラの導入/選定/運用作業に関わる社員
調査実施時期: 2012年6月初旬
有効回答件数: 1000社
※調査対象の詳しい情報については右記URLを参照 (リンク »)


■IaaSとPaaSの融合およびユーザ企業が意識しない間接的な利用形態への留意が必要
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、PaaS(システム開発/運用の環境がサービスとして提供されているもの)やIaaS(ハードウェアやネットワークがあらかじめ用意されているデータセンタサービス)といった「基盤サービス」の分野において導入/利用をしているまたは導入/利用を予定しているものを尋ねた結果のうち、主要な選択肢を取り上げたものである。(調査実施時に掲載した全ての選択肢は本リリースの末尾に記載)「基盤サービスは活用しない」の回答割合は80.8%となっており、「コラボレーション/顧客管理」「基幹業務」「運用管理」と比較した場合、中堅・中小企業が直接的にIaaSやPaaSといった「基盤サービス」を活用するといった段階にはまだ至っていないことがわかる。ただし、昨今ではSIerやパッケージベンダがこれらの「基盤サービス」を土台としてSaaS提供や顧客毎のシステム構築/運用を担うケースも出てきている。こうした中堅・中小企業が明示的に意識しない形で「基盤サービス」を利用しているケースなども含めると、実際の導入率は上記よりも高い数値になるものと推測される。
前頁のグラフで比較的多く挙げられているものは「PaaS」に該当するものが多い。一方の「IaaS」に関しては「Amazon WebServices(Amazon EC2/S3など)」や「ニフティクラウド」といった知名度の高いサービスであっても、中堅・中小のユーザ企業に尋ねた結果では上位に挙がってきていない。ただし、これはこれらのサービスの導入が中堅・中小企業において少ないわけではなく、SIerやパッケージベンダによる活用が早期に進んだ結果、ユーザ企業が「基盤サービス」を意識せずに利用しているケースが多いことが背景にあると考えられる。
「基盤サービス」を捉える上でもう一つ留意すべきなのは「IaaS業者、PaaS業者」といった観点での区別をつけるのが難しくなりつつあるという点だ。今回サービス業者を分類する上では、「最も主要なサービスがIaaSとPaaSのどちらに分類されるか?」を基準にして整理している。だが、「Windows Azure」では「Windows Azure Virtual Machines」が加わるなど「PaaS」が「IaaS」に近い領域に広がる一方、「Amazon Web Services」の「Amazon Relational Database Service」や「ニフティクラウド」の「C4SA」のように、逆に「IaaS」から「PaaS」に近い領域へと広がる動きもある。
このように中堅・中小企業における「基盤サービス」の活用状況を把握しようとする際には、「ユーザ企業が意識していない間接的な活用の存在」や「IaaSとPaaSの融合」といった点に留意しておく必要がある。


■ユーザ企業による自覚的な基盤サービス活用は年商100億円以上の中上位層が主体
以下のグラフは上述の結果を年商別および業種別に集計したものである。年商100億円以上~300億円未満の中堅中位企業層および年商300億円以上~500億円未満の中堅上位企業層においては活用割合が高い一方で、年商5億円以上~50億円未満の中小企業層においては活用割合が低くなっている。
年商100億円を越えると、専任のIT運用管理部門の設置率も高くなるため、情報システムの構築/運用の手段の一つとして「基盤サービス」を選択するといった余力も出てくる。一方、中小企業層はある程度の情報システムを有しているが、それらを管理/運用するための人材は不足しているケースが多い。そのため「基盤サービス」まで手段を広げることが難しい状況にあると考えられる。
また、本ダイジェストでのグラフ掲載は省略しているが、業種別に見た傾向では「Google App Engine」および「Force.com」
においてIT関連サービス業の占める割合が比較的高くなっている。


■コスト削減に加え、今後はモバイル/災害対策/他社連携などの導入効果も意識される
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、「基盤サービス」における導入効果を尋ねた結果である。
導入状況に応じて、以下のように分類をしている。
既に導入/利用している(導入前): 導入/利用済みのユーザ企業に対し、導入前に期待していた効果を尋ねた結果
既に導入/利用している(導入後): 導入/利用済みのユーザ企業に対し、導入後に実際に得られた効果を尋ねた結果
導入/利用の予定がある: 導入/利用を予定しているユーザ企業に対し、期待する効果を尋ねた結果
導入/利用を検討している: 導入/利用を検討しているユーザ企業に対し、期待する効果を尋ねた結果
まず全体を見ると「ハードウェアの維持費用を削減できる」「ソフトウェアの維持費用を削減できる」がいずれも35%前後で最も多く、「システムを素早く構築できる」が約30%で続いている。さらに「運用管理の人的作業負担を軽減できる」と「ネットワークの維持費用を削減できる」がいずれも20%強で続くといった状況となっている。
一方で、「初期投資を最小限に抑えられる」と「利用量に応じた課金体系になっている」は7~10%程度と低くなっている。
「基盤サービス」が登場した初期の事例では「定額給付金管理」「エコポイントサービス申請」といった利用期間が限られたサイトやソーシャルゲーム基盤のようにシステム負荷が大きく変動する用途での活用が比較的多く見られた。こうした用途では「初期投資を最小限に抑えられる」や「利用量に応じた課金体系になっている」といった導入効果が評価のポイントとなる。だが、中堅・中小企業全般においてユーザ企業が期待する導入効果では「ハードウェアの維持費用を削減できる」「ソフトウェアの維持費用を削減できる」といったコスト削減関連の項目が上位に挙げられるといった差異が生じている。
個別カスタマイズを施した基幹業務システムは「SaaS」の枠内で対応することが困難である場合も多い。そのため、OSから上のレイヤーでの自由度が大きい「IaaS」を活用し、ハードウェアやネットワークの管理/運用におけるコストを削減するといった手法は中堅・中小企業においても有効であり、実際そうした取り組み事例も見られる。しかし、「既に導入/利用している(導入前)」と「既に導入/利用している(導入後)」を比較すると、「ハードウェアの維持費用を削減できる」「ソフトウェアの維持費用を削減できる」の割合はいずれも低下している。このことから「所有」から「利用」へ切り替えることによってコスト削減効果を得ることは可能ではあるが、既に導入/利用しているユーザ企業は実際よりも高い期待を抱いているといえる。
一方、「システムを素早く構築できる」については「既に導入/利用している(導入前)」と「既に導入/利用している(導入後)」で大きな差がなく、比較的期待通りの効果が得られている。
ただし、今後は上記と異なる傾向になっていくことも予想される。「導入/利用の予定がある」と「導入/利用を検討している」においてはコスト削減関連の項目が低くなっている一方で、「スマートフォンや携帯から利用できる」や「災害(地震や停電など)への対策になる」といった項目が相対的に高い。「導入/利用を検討している」においては「顧客や取引先とシステムを共有できる」の高さも目立つ。このことから、今後はコスト削減効果だけでなく、システムを社外に預けることによって得られる効果を中堅・中小企業が「基盤サービス」の活用において意識するようになる可能性もある。


■基盤サービス側が提供する/しない範囲の明示やセキュリティ関連の事前説明が大切
以下のグラフは年商500億円未満の中堅・中小企業のうち、「基盤サービス」を導入/利用しているまたは導入/利用を予定/検討しているユーザ企業に対し、「基盤サービス」の課題を尋ねた結果である。
「運用管理の人的作業負担が減らない」「十分なコスト削減効果が得られない」「クラウド移行を主導する社内人材がいない」「外部からの攻撃にさらされる危険がある」といった項目が上位に挙げられている。
「IaaS」や「PaaS」は「SaaS」に比べると自由度が高い。逆に言えばサービスを利用する側の責任範囲は広いということになる。
そのため、サービス提供者側に任せられる範囲とユーザ企業側が担うべき範囲をあらかじめ明確にしておかないと、「運用管理の人的作業負担が減らない」といった課題に直面し、結果的に「十分なコスト削減効果が得られない」ことになってしまう。
ユーザ企業側としても導入前に自社の現状や要件を整理する必要があるが、IT関連人材が不足しがちな中堅・中小企業においては「クラウド移行を主導する社内人材がいない」という課題も抱えることになる。こうした状況を回避するため「サービス提供者側とユーザ企業側の責任範囲を明確にしておく必要がある。
「ここから先はユーザ企業側の責任範囲であり、各種作業もユーザ企業側で行う必要がある」といった内容を明確に伝えることはサービスを訴求する上ではマイナス効果になるという懸念もある。だが、導入後のトラブル発生や過剰な期待による幻滅感の蔓延を防ぎ、導入実績を堅実に積み上げていくためには「やらないこと」を明示することも「基盤サービス」の訴求においては重要と考えられる。
グラフの掲載は省略しているが、「基盤サービス」を利用しないと回答した年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、その理由を尋ねた結果では「クラウドによってもたらされるメリットはいずれも必要性がない」が最も多く、そこから15ポイント程度値を下げて「十分なコスト削減効果が得られない」が続いている。ただし導入効果に関するデータで見たように、今後はコスト削減以外の導入効果を期待するユーザ企業が増えていく可能性がある点を踏まえておく必要がある。
その次に続く理由が「社外にデータを置くことが不安である」という項目である。今後期待する導入効果では「スマートフォンや携帯から利用できる」「災害(地震や停電など)への対策になる」「顧客や取引先とシステムを共有できる」といったように社外にシステムを預けることで得られる項目が比較的多く挙げられている。この結果と「社外にデータを置くことが不安である」は相反するものといえる。ITソリューションを提供する側としては、社外にシステムを預けることのメリット/デメリットを中堅・中小のユーザ企業にわかりやすく伝える取り組みが今後さらに求められてくると予想される。
調査実施時に「既に導入/利用している、またはそれらを予定/検討している基盤サービス」における選択肢として挙げたものは以下の通りである。これらの選択肢は過去のアンケート調査において比較的多くの回答が見られたものや、取材調査などを通じて動きが活発であると判断されたものを含めるという方針に基づいて選定されている。
本リリース冒頭のグラフは導入状況を尋ねた設問の回答を集計し、回答件数が多かったものに絞った結果を集計したものである。回答件数が少なかったものは冒頭のグラフでは「その他」に含めている。


<<PaaS>>
Force.com[セールスフォース・ドットコム]
Database.com[セールスフォース・ドットコム]
heroku[セールスフォース・ドットコム]
Windows Azure[日本マイクロソフト]
Google App Engine[グーグル]
FGCP/A5[富士通]
kintone[サイボウズ]
IBM Smart Business 開発&テスト・クラウド・サービス[日本IBM]
CloudFoundry[ヴィエムウェア]
DotCloud[DotCloud]
no.de,nodejitsu[Joyend,nodejitsu]
PHP Fog[PHP Fog]
その他のPaaS
<<IaaS>>
Amazon Web Services(Amazon EC2/S3など)[アマゾンデータサービスジャパン]
ニフティクラウド[ニフティ]
FGCP/S5[富士通]
Bizホスティング[NTTコミュニケーションズ]
IBM SmarterCloud Enterprise ,IBM Smart Business Cloud Enterprise [日本IBM]
IDCFクラウド[IDCフロンティア]
IIJ GIO[IIJ]
BizXaaS[NTTデータ]
さくらのクラウド[さくらインターネット]
absonne[新日鉄ソリューションズ]
CLOUDiS/IaaS[電通国際情報サービス]
cloudage CUVIC OnDemand/TechnoCUVIC[CTC]
ホワイトクラウドIaaS[ソフトバンクテレコム]
サーバオンデマンドNEXT[ビットアイル]
ASクラウドサービス[インテック]
TIS Enterprise Ondemand Service[TIS]
Harmoneous Cloud[日立製作所]
GMOクラウドPublic[GMOインターネット]
KDDIクラウドサーバサービス[KDDI]
bit-drive[ソニービジネスソリューション]
KVH IaaS[KVH]
RIACUBE[NEC]
その他のIaaS
<<その他>>
基盤サービスの分野ではクラウドを活用しない


本リリースの元となっている「2012年版SaaS/クラウド市場の実態と中期予測レポート」の詳細は下記URL
を参照 (リンク »)
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