2025年 トランプ政権の関税引き上げが小規模企業に与える影響
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は日米間の関税交渉の行方が日本国内の小規模企業に与える影響を分析した結果を発表した。
<従来とは異なるビジネス環境を前提として、新たなIT活用提案を模索していくことも必要>
■日米関税交渉の難航によって、トランプ関税の影響を年初より厳しく想定する必要がある
■「価格転嫁の停滞」と「賃上げに起因する人材不足」が人材リスキリングの重要度を高める
■今は「小規模な製造業における極力コストをかけない業務改善」の支援が大切となる局面
■日米関税交渉の難航によって、トランプ関税の影響を年初より厳しく想定する必要がある
2025年1月5日、ノークリサーチでは企業の経営またはIT管理/運用に携わるビジネスパーソン(有効回答1304人)を対象として今年の業績およびIT支出の見通しに関する調査を実施した。 その分析結果は以下の年頭リリースとして公開されている。
【年頭速報:調査&分析】2025年 企業における業績とIT支出の見通しと要因 (調査対象のサンプル属性は4ページを参照)
前編 (リンク »)
後編 (リンク »)
上記のリリースでは 「トランプ政権による関税引き上げの影響が人材のリスキリングやIT内製化を推し進めるのか?」など、企業の業績やIT支出に影響する様々な背景/要因の関係性を予測している。それから半年経った現在、日米間の関税交渉は難航し、日本に課せられる関税率を巡っては年初の想定よりも更に厳しい結果が予想されている。そこで、本リリースでは年頭速報で用いた分析モデルにおいて 「トランプ政権による関税引き上げの影響」のパラメータを更に厳しく設定した場合に何が予想されるか?を検証している。 下図は上記の調査データにベイジアンネットワーク分析を適用して得られた確率推論モデルだ。年頭リリースで実施したのと同様に、このモデルによって様々な背景/要因の関連性を視覚的に確認し、「事象Aの影響が高まった時、事象Bはどうなるか?」を予想することができる。今回は赤色で示した「米国新政権(トランプ政権)の経済方針(関税引き上げなど)」 に着目し、同項目が今後の業績やIT支出に影響すると考える割合が年初の想定よりも高くなった場合、それが「価格転嫁の停滞」や「人材不足」などの経営課題にどう影響するか?また、そうした状況に対処する手段としてAIエージェントやIT内製化などは現実的なのか?について検証していく。
さらに、上記に述べた経営課題の影響を強く受けるのは小規模企業(年商5億円未満)なので、本リリースでは同年商帯の動向にも着目していく。
■「価格転嫁の停滞」と「賃上げに起因する人材不足」が人材リスキリングの重要度を高める
年初に実施した調査では、以下の選択肢を列挙して「業績やIT支出における増減の背景/要因となる事柄」は何か?について尋ねている。
<<ビジネス環境に関連する項目>>
A・価格転嫁の停滞(コスト上昇に見合う値上げができない)
・働き方改革や世代の違いに起因する企業文化の変遷
・海外企業による日本国内への工場誘致(半導体など)
<<社会環境に関連する項目>>
B・賃上げ要請や社会保障費の増加が足かせとなる人材不足
・少子高齢化による労働者人口の減少に起因した人材不足
・超高齢化社会の到来(5人に1人が75歳以上の後期高齢者)
C・人材のリスキリング(従業員の職能を開発/転換する試み)
・石破政権が少数与党であることに伴う政策運営の鈍化
<<自然環境に関連する項目>>
・温暖化や気候変動による自然災害の増加および激甚化
・GX(グリーントランスフォーメーション)に向けた取り組み
<<政府/行政の取り組みや法改正に関連する項目>>
・業種毎や地域毎の様々な規制を緩和する法改正の取り組み
・社会生活に関わる法改正(選択的夫婦別姓、入国管理など)
・大阪・関西万博開催に伴う観光客の増加や経済の活性化
<<諸外国や世界経済に関連する項目>>
※・米国新政権(トランプ政権)の経済方針(関税引き上げなど)
・台湾問題や貿易摩擦などに起因する米中対立の深刻化
・欧州(イギリス、フランス、ドイツなど)での政局の不安定化
<<ITの進化やIT関連の取り組みに関する項目>>
・個人レベルの仕事をAIが代行する「AIエージェント」の登場
・経産省が2018年にDXレポートで発表した2025年の崖
・「IT内製化」(企業が自力で情報システムを構築/運営)
<<その他>>
・現時点では判断できない
年頭リリースでは、上記に列挙された項目の中で「米国新政権(トランプ政権)の経済方針(関税引き上げなど)」と「台湾問題や貿易摩擦などに起因する米中対立の深刻化」を業績やIT支出の影響要因として挙げる割合が2~3割に増加した時、何が起きるか?を分析した。半年経過した現在では、後者と比べて前者の「トランプ政権による関税引き上げ」(※)の影響を懸念する声が多い。 そこで、※が業績やIT支出に影響すると回答した割合が2割の場合(年初時点における想定値)、5割の場合(昨今の交渉難航を受けた新たな想定値)、標準状態(年初に実施した調査データをそのまま集計した結果)の3通りについて「価格転嫁の停滞」(A)、「賃上げ要請に起因した人材不足」(B)、「人材のリスキリング」(C)といった経営上の課題/取り組みの回答割合がどう変化するか?を前頁の分析モデルを用いて推論(シミュレーション)した結果が以下のグラフである。
標準状態、2割、5割と変化するにつれて、A~Cの値も高くなっていることが確認できる。つまり、トランプ関税が発動した場合、大手メーカは下請けに対して値下げを求める可能性が十分考えられる。その結果、日本国内で多数を占める中小企業はAの課題に直面する。 一方で、政府は物価高対策を企業努力に負わせる形で賃上げ要請を進めており、これがBのように新たな人材採用を阻む要因となる。さらに、こうした状況下で限られた人材を有効活用するためにCが重要となってくるわけだ。特に小規模企業(年商5億円未満)はこうした影響を強く受ける。そこで、次頁では小規模企業に焦点を当てていく。
■今は「小規模な製造業における極力コストをかけない業務改善」の支援が大切となる局面
以下のグラフは「トランプ政権による関税引き上げ」(※)が業績やIT支出に影響すると回答した割合が5割に達した場合、前頁で触れたA、B、Cの割合がどうなるか?を全年商と小規模企業で比較した結果(青点線)ならびに小規模企業の中で業種別に比較した結果(緑点線)である。青点線が示すように全年商と小規模企業では顕著な差異は見られない。一方、緑点線が示すように、小規模企業かつ製造業ではAやBの値が高い。 そのため、トランプ関税が発動した際は小規模な製造業が「価格転嫁の停滞」によって収益が圧迫される一方、 「賃上げ要請に起因した人材不足」に苦慮する状況になると予想される。
今後のビジネス環境変化に対応していくため、年初のリリースでは全年商&全業種を対象に「AIエージェントによる業務効率化」(D)や「IT内製化による迅速で安価な業務システム構築/運用」(E)、それらを実践するための「人材のリスキリング」(C)について言及した。そこで※が5割に達した時にDやEの割合がどうなるか?を上記のグラフと同様に示した結果が以下のグラフである。小規模企業かつ製造業ではDやEの値が相対的に高いことが確認できる。現状では小規模な製造業が業務システムの大幅な更新/刷新を進めることは難しい。そのため、極力コストを抑えた形で生成AIを活かした業務効率化やノーコード開発ツールを用いたIT内製化を進めることが現実解の1つとなる。ただし、上記のグラフの緑点線が示すように、小規模な製造業におけるCの値は他の業種と同程度であるため、IT企業が人材のリスキリングを支援する取り組みも大切だ。IT企業から見るとこうした施策は手間を要する一方、顧客当たりの単価はさほど高いとは言えない。だが、生成AIやノーコード開発ツールには手軽に利用できるものも多く、逆に小規模企業の顧客層を開拓する好機となる可能性もある。IT活用の裾野を広げていくためにも、現在は小規模企業を支える労力を惜しまないことが重要な局面と考えられる。
次頁では本リリースの調査におけるサンプル属性ならびに本リリースで述べた分析/提言に関連する既刊の市場調査レポート(生成AIやノーコード開発ツールに関する調査レポートなど)を紹介している。
本リリースにおける調査対象のサンプル属性
本リリースの調査対象となったビジネスパーソン(有効回答1304人)が勤める企業および回答者のサンプル属性は以下の通り。
有効回答: 1304人(2025年1月5日調査実施)
対象職責:企業で経営またはIT管理/運用に携わる職責
企業年商:5億円未満/5~50億円/50~500億円/500億円以上
対象業種:製造業/建設業/卸・小売業/サービス業
対象地域:全国(北海道地方、東北地方、関東地方、北陸地方、中部地方、近畿地方、中国地方、四国地方、九州/沖縄地方)
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当調査データに関するお問い合わせ
株式会社 ノークリサーチ 担当:岩上 由高
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-13-10 武蔵野ビル5階23号室
TEL 03-5361-7880 FAX 03-5361-7881
Mail: inform@norkresearch.co.jp
Web: www.norkresearch.co.jp
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