「ひとり情シス」向けの営業アプローチが成功しない要因とその対策
調査設計/分析/執筆: 岩上由高
ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は「ひとり情シス」に向けた営業アプローチを成功に導くためには何が必要か?に関する分析を実施し、その結果を発表した。本リリースは「2024年版サーバ&エンドポイントにおけるITインフラ導入/運用の実態と展望レポート」から「ひとり情シス」に関する分析結果を抜粋/編集したものである。
<「ひとり情シス」の分類と特性を正しく理解すれば、小規模企業向けのITインフラ導入を拡大できる>
■「兼任型」ではなく「専任型」でないと、期待したツール/サービスの導入成果は得られない
■「従量課金」や「仮想化による統合」を小規模なサーバ環境向けに読み替えた提案が有効
■Windows 11移行の支援ツール/サービスは「専任型」が有望な訴求対象、他OS提案も可能
■「兼任型」ではなく「専任型」でないと、期待したツール/サービスの導入成果は得られない
左記の表が示すように、年商5億円未満の小規模企業の社数は120万社超に及び、全体に占める比率も非常に高い。そのため、日本企業の生産性を底上げするためには小規模企業におけるIT活用を支援する取り組みが欠かせない。その際に、IT企業が留意すべきなのが「ひとり情シス」の存在である。以下のグラフは小規模企業層におけるIT管理/運用を担う人員規模を示したものだ。IT管理/運用を担う人員が1名のみである「ひとり情シス」の状態が47.8%と半数弱に達していることが確認できる。
「ひとり情シス」のユーザ企業ではサーバやPCといったITインフラの管理/運用が負担となりやすい。そのため、こうした企業向けにはITインフラの管理/運用を支援する様々なツールやサービスが提供されている。 しかし、IT企業側からは「期待していたほどの導入成果を得られていない」という声が聞かれることも少なくない。その最大の要因は『ひとり情シスには、兼任と専任の2通りがある』という基本原則を十分理解していないことだ。総務/経理/人事や現場業務の傍らで対応している兼任型とIT管理/運用を主な業務とする専任型では状況が全く異なる。一見すると、兼任型の方が業務上の負担も大きくなりやすく、それだけツールやサービスの導入意向も高くなると思いがちだ。しかし、IT管理/運用を兼任の従業員に任せても企業が存続しているということは業務におけるITの重要度がそれほど高くないことを意味する。そのため、現場の従業員が負担を訴えることはあっても、経営層から見ればツール/サービス導入の決裁を下す判断には至らない。上記のグラフの左下に示したように、「ひとり情シス」の大半は兼任型が占めている。そのため、単に「ひとり情シス」に営業アプローチをかけても兼任型に遭遇する確率が高く、結果として経営層の決裁は得られない。大半を占める「兼任型ひとり情シス」も重要だが、IT企業としては専任の従業員を当ててIT活用に予算を投じている「専任型ひとり情シス」で成功例を積み上げることがまずは大切だ。次頁以降では両者の違いを踏まえながら、「ひとり情シス」のユーザ企業に対する営業アプローチのポイントについて述べている。
■「従量課金」や「仮想化による統合」を小規模なサーバ環境向けに読み替えた提案が有効
本リリースの元となる調査レポート「2024年版サーバ&エンドポイントにおけるITインフラ導入/運用の実態と展望レポート」ではオンプレミス/クラウドのサーバ環境における課題やサーバ活用における今後の方針について詳細な集計/分析を行っている。
以下のグラフは、オンプレミスのサーバ環境における課題について尋ねた結果のうち、「ひとり情シス」に関連の深い項目を中堅・中小企業の全体平均、兼任型、専任型の3通りで集計したものだ。 費用負担を軽減するために小型/安価なサーバ機器を提案したり、塩漬け状態となったサーバ環境の延命を図ったりといった支援の訴求対象としては「兼任型」を思い浮かべがちだ。だが、「サーバ導入時の初期費用が負担」と「サポート切れのサーバ環境を延命できない」のいずれの課題項目も「専任型」の方が顕著であり、全体平均と比較しても高い値を示している。 さらにクラウドについて同様の集計を行ったものが以下のグラフだ。
「業務要件よりもクラウド移行が優先している」や「知らないうちに通信費用が発生する」といった課題を挙げる割合も「専任型」の方が「兼任型」や全体平均よりも高い。つまり、オンプレミスのサーバ導入/運用で課題を抱えており、クラウド移行を急いだ結果として通信費用に苦慮している状況は「専任型」の方が顕著であることが確認できる。したがって、「専任型」に対しては、従量課金による初期費用の軽減(※1)や仮想化によるサーバ環境の統合(※2)などによって、オンプレミスのサーバ環境における負担を軽減することが先決だ。実際、サーバ活用における今後の方針を尋ねた結果では※1や※2に該当する項目の「専任型」における回答割合は「兼任型」のみならず、全体平均も上回っている。 ※1や※2は規模の大きなユーザ企業向けの提案と考えがちだが、従量課金や仮想化による統合をもっとシンプルに捉えれば「ノード単位の価格設定を行ったコンパクトなHCI」などが該当する商材となる。このように柔軟な視点で「専任型ひとり情シス」の課題/ニーズに即したITインフラ提案を行うことが大切だ。次頁では「ひとり情シス」におけるPC管理/運用について述べる。
■Windows 11移行の支援ツール/サービスは「専任型」が有望な訴求対象、他OS提案も可能
本リリースの元となる調査レポート「2024年版サーバ&エンドポイントにおけるITインフラ導入/運用の実態と展望レポート」ではPC/スマートデバイスなどのエンドポイント環境についても詳しい集計/分析を行っている。 以下のグラフはその中からWindows11の導入予定について、「導入時期は未定である」もしくは「可能な限り導入時期を遅らせる」と回答した割合をIT管理/運用の人員規模別に集計したものだ。
上記のグラフが示すように「ひとり情シス」のユーザ企業ではWindows 11への移行が遅れる可能性があるため、IT企業としては早期の移行を促す必要がある。そこで、Windows 11の導入を避ける/遅らせる理由を尋ねた結果のうち、「ひとり情シス」に関連の深い項目を中堅・中小企業の全体平均、兼任型、専任型の3通りで集計したものが以下のグラフである。
IT支出を抑えている「兼任型」では端末購入費用が大きな障壁となっていることが※3から確認できる。そのため、「兼任型」にでは端末に加えて更に出費が生じるWindows 11移行を支援するツール/サービスの導入は期待できない点に注意が必要だ。
一方、「専任型」では※3の値が全体平均よりも低い一方、動作検証に関する課題(※4)は「兼任型」よりも高く、全体平均と同程度となっている。そのため、Windows 11移行に伴う動作検証を支援するツール/サービスは「専任型」を訴求対象とするのが有効だ。また※5が示すように、Windows OS以外の端末(Chrome OS搭載PC等)との併用を訴求したいと考えるIT企業にとっても「専任型」は有力候補となってくる。
本リリースではITインフラをテーマとした調査レポートを元にして「ひとり情シス」に関する分析を行ったが、ノークリサーチが発刊する様々な調査レポートには全ての設問項目を以下に列挙したIT管理/運用の人員規模別に集計したMicrosoft Excel形式の集計データが収録されており、「ひとり情シス」に固有の傾向などを確認できる。(発刊済みの調査レポートの一覧は次頁に掲載)
IT管理/運用の人員規模
<<担当者が兼任>>
・兼任1名
・兼任2~5名
・兼任6~9名
・兼任10名以上
<<担当者が専任>>
・専任1名
・専任2~5名
・専任6~9名
・専任10名以上
<<外部の人材に委託している>>
・社内常駐の外部人材に委託
・非常駐の外部人材に委託
<<担当者が決まっていない、など>>
・IT管理/運用は全く行っていない
・都度適切な社員が対応
・その他:
ご好評いただいている既存の調査レポートなど
・2023年版 中堅・中小企業のIT支出と業務システム購入先の実態レポート
IT支出が活発な企業層や支出額の内訳は変わってきている、有効回答件数1300社のユーザ調査を集計/分析し、ベンダや販社/SIerが今後注力すべき顧客セグメントやIT商材は何か?を明らかにする必携レポート
調査レポート案内: (リンク »)
・2023年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート
今後はレイトマジョリティへの訴求が焦点。課題/ニーズの変化を捉え、市場拡大を阻む障壁を打開するためには何をすべきか?
調査レポート案内: (リンク »)
・2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート
ERP、会計、販売、人給、生産、ワークフロー、Web会議、CRM、BI、クラウドストレージといった10分野のシェアと評価に加えて、法制度対応やデータ分析/生成AIの動向を網羅
調査レポート案内: (リンク »)
・2024年版 サーバ&エンドポイントにおけるITインフラ導入/運用の実態と展望レポート
サーバはクラウドファーストの加速とオンプレ回帰のどちらに進むのか?PCでWindows 11移行を加速させるための施策とは?
調査レポート案内: (リンク »)
・2023年版 中堅・中小企業のDXおよびITソリューション選定の実態レポート
50項目に渡る具体的なDX/ITソリューションの導入状況、ユーザ企業が抱える課題とニーズ、選ぶべき訴求手段
を網羅した一冊
調査レポート案内: (リンク »)
・2023年版 中堅・中小企業のセキュリティ/運用管理/バックアップ利用実態と展望レポート
ランサムウェアの危険性を訴えるだけでなく、今後のIT活用方針とマッチした「ポジティブな守りのIT対策提案」が求められている
調査レポート案内: (リンク »)
・2023年版 中堅・中小企業におけるネットワーク環境の実態と展望レポート
今後不可欠となるネットワーク環境とセキュリティ対策を同時に考慮したITインフラ整備の提案ポイントを分析/提言
調査レポート案内: (リンク »)
『カスタムリサーチ』のご案内
カスタムリサーチとは、個別ニーズに応じてWebアンケートやグループインタビューといった様々な調査を設計&実施し、調査レポートよりも数段深い分析と提言を行うものです。調査レポートで市場動向を一通り理解した後、製品/サービスの開発や拡販、パートナ活性化、ユーザの理解など、各々の目的に応じたカスタムリサーチに進む流れが一般的です。
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