イノベーションなどそうそう起こらない、ではどうする--元ローソンCIO横溝氏

怒賀新也 (編集部) 2012年10月18日 09時00分

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 各界のエグゼクティブに価値創造のヒントを聞く連載「ZDNet Japan トップインタビュー」。今回は2007年から2010年にコンビニエンスストア大手のローソンで最高情報責任者(CIO)を務めていたことで知られる横溝陽一氏に話を聞く。

 横溝氏は、三菱商事で情報産業に携わり、2002年からはいわゆる計画系のサプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェアを提供するi2テクノロジーズの日本法人社長を5年にわたり務め、NECや東芝の業務改革を推進したことでも知られる。現在は、X線や熱などの分析装置を製造するリガクの取締役を務める。NECや東芝の半導体システムのSCM導入経験で培った業務プロセス改革の知識を、後にローソンで存分に生かすことになった。今後日本企業が成長するために必要な考え方について、意見を聞いた。

ローソンでCIOを務めていた横溝陽一氏
ローソンでCIOを務めていた横溝陽一氏

 「製品のイノベーションというのは、そんなに簡単に起こるものではない」と横溝氏は切り出す。最近でいえば、キリンビバレッジの「メッツ コーラ」や、弁当のイメージが強かったコンビニで、デザートを買うという習慣を広めたといわれているローソンの「プレミアム ロールケーキ」などは、イノベーションに当たるとする。

 だが、もっと地道で確実な方法で、イノベーションと同等の効果を得られるというのが横溝氏の意見だ。それが、「オペレーション」および「顧客」との接点の改善だ。よく使われる三文字言葉としては「オペレーションがSCM、顧客との接点はCRM」(同氏)だという。

 横溝氏が基盤を作ったローソンの情報システムは、2011年4月のIR資料で「SCMとCRMの連動で増益を目指す」と説明。10月3日に発表した2013年2月期第2四半期の決算では、営業利益が前年同期比6%増の345億円となり、6年連続の過去最高益を達成した。

CRMとSCMの連動で連続増益へ

 原動力になったのが、ポイントカードでの取り組みだ。2010年3月に「私とロイヤリティマーケティングの長谷川剛社長が注力して実施」(横溝氏)する形で、既存のローソンポイントカードを三菱商事系のロイヤリティマーケティングが発行する「Ponta」に全面統合した。

Pontaカード
Pontaカード

 Pontaカードの会員数は6月時点で4500万人。消費者は、ローソンで商品を購入する際にポイント獲得のために利用する。これにより、ローソンは売れ筋および死に筋商品の把握、顧客ニーズの理解、プライベートブランドなどの新商品開発につながるさまざまなデータを蓄積するCRMの体制を構築したという。

 一方、Pontaカードから得られた情報と商品発注システム「PRiSM」を連携させることで、適切な商品を適切な数量仕入れるSCMの体制を築いた。良質な原材料を一括調達することなどが可能になった。小売業の2大ロスは、過剰な発注で発生する売れ残りによるロスと、逆に発注数量が足りない場合に起こる機会ロスの2つ。

 CRMとSCMの連動により、2つのロスの低減に成功した。結果として、売り上げの拡大と粗利益率の向上を実現し、営業利益が継続的に成長する原動力となった。

ITは山ほど新サービスをつくれる

 ローソンでは、顧客向けサービス機「Loppi」で、商品の割引などをするクーポンを発券している。当初、対象商品についてはローソンの各店舗で在庫を持つという取り決めにしていたが、その後、特にこだわらなくてもいいことにしたという。クーポンの利用期限を発券から30分以内にし、利用がなかった場合は自動的にクーポンが無効になる仕組みにしたことにより、消費者がLoppiでクーポン発券後、該当商品の在庫がないと分かった場合も、クーポンの使用権利を失うことを心配する必要がなくなったからだ。

 横溝氏は「こうした細かい仕組みが消費者の気持ちをとらえる」と強調。「深く考えれば、ITを活用して“サービス”を作り出す機会が山ほどある」(同)というのが持論だ。

これからは人のイノベーションを

 「よくITと経営戦略を統合するべきだという議論をメディアで見かけるが、実際に、“戦略”というものを具体的な形でイメージできている企業は意外に少ない」と話す横溝氏。

 「むしろ経営課題をベースに、IT戦略を練る方が現実的であることが多いと感じている」

 今後は「人のイノベーションがカギになる」と話すその意図は、CIOやIT部門の担当者に向けられている。社内のユーザー部門と社外のコンサルタントの間に挟まれ、ただの情報メッセンジャーになっているIT部門も多いという。

 「CIOがしっかりと優先順位を付け、IT部門の担当者が自分の頭でじっくり考えて、サービスなど新たなものを創り出してほしい」と日本企業にアドバイスした。

 現在58歳の横溝氏は、これまでの経験を生かし、X線などの分析装置では「日本で7-8割」のシェアを持つという、現在在籍しているリガクをグローバルカンパニーに押し上げることに注力したい、と話している。

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