日本ヒューレット・パッカード 代表取締役社長執行役員 吉田仁志氏
米Hewlett Packardは、11月1日付けでエンタープライズ事業の「米Hewlett Packard Enterprise(HPE)」と、個人向けPC・プリンタ事業の「米HP(HP Inc.)」に分社化した。これに伴い、11月2日、HPEの日本法人である日本ヒューレット・パッカードの代表取締役社長執行役員 吉田仁志氏が会見し、エンタープライズ事業の戦略を説明した。
なお、日本法人は米国本社に先行して8月1日に「日本ヒューレット・パッカード」と「日本HP」に分社している。
分社の狙いは意思決定のスピード向上
まず吉田氏は、グローバルでの分社化の狙いについて、「一番の理由は、意思決定のスピードを速めて市場の変化に対応できるようにするためだ。また、事業責任を明確にし、例えばサーバの売り上げはサーバ事業に投資する体制にしていく」と説明した。
HPEの事業ポートフォリオは、(1)サーバ、ストレージ、ネットワークなどのハードウェア製品を中心とした「エンタープライズグループ」、(2)クラウドサービスやBPOサービスを含む「エンタープライズサービス」、(3)セキュリティソフトやSaaSなどの「HPソフトウェア」、(4)財務事業の「フィナンシャルサービス」――で構成される。
直近の決算では、エンタープライズグループの売上高は278億ドル、営業利益は40億ドルで、HPE全体売上の約50%、全体営業利益の約65%を占めている。そのほかの事業売上高は、エンタープライズサービスが203億ドル、HPソフトウェア38億ドル、フィナンシャルサービス33億ドルとなっている。
HPEの事業ポートフォリオ
HPEのハイブリッドクラウド戦略
吉田氏は、今後HPEが最もフォーカスする事業領域として「顧客のハイブリッドインフラへの移行支援」を挙げた。
ハイブリッドインフラ、つまりパブリッククラウドと顧客データセンターやプライベートクラウドが混在するインフラ環境への移行を推進する方針について、吉田氏は「パブリッククラウドは企業インフラの通過点。ビジネスデータの中には、それがどのサーバにあるのかまで特定できなければいけない種類のものがある。ゆえに最後はハイブリッドに到達する」と述べだ。
Hewlett PackardはパブリッククラウドのIaaSの提供を1月31日に終了し、今後はOpenStackベースのプライベートクラウド構築事業、顧客のプライベートクラウドを同社データセンターで運用するマネージドクラウド事業にフォーカスすることを10月に発表している。ハイブリッドインフラの推進にあたっては、「AWSやMicrosoft Azureとのパートナーシップを強めていく。国内クラウド事業者との提携にも柔軟に対応していく方針だ」(吉田氏)とする。
「変革のスピードとコストを鑑みて、プライベートクラウド事業はOpenStackベースで進める方針だ。パブリッククラウドのサービス終了後は、そのインフラを社内向けテスト環境として活用し、OpenStackの知見をためていく。また、パブリッククラウド周辺の製品サービス、例えばキャリア向けのネットワークやソフトウェアについては、従来通り提供を続けていく」(クラウドビジネス統括本部 統括本部長 春木菊則氏)
日本での事業戦略については、「国内企業からは“グローバル化のお手伝いをしてほしい”という要望が最も多い。グローバルカンパニーの一員である日本ヒューレット・パッカードの経営の知見を提供し、日本の顧客の変革を支援していく」(吉田氏)と語った。