アクセンチュアと横浜市は12月2日、「オープンイノベーションの取組に関する包括連携協定」を締結した。(1)介護と子育てが同時進行する「ダブルケア」家庭の支援、(2)青少年への「STEM教育(理数系教育)」、(3)「子どもの貧困」と「若者の不安定就労」の解消——を3本柱に、アクセンチュアが有する社会課題解決のノウハウや、国内外のテクノロジ企業とのネットワーク、デジタル技術の知見を活用して市と協働で取り組むとする。
右から、アクセンチュア 代表取締役社長 江川昌史氏、アクセンチュア 取締役会長 程近智氏、横浜市長 林文子氏
アクセンチュアは、これまでも経済産業省の「横浜スマートシティプロジェクト」への参画、市民参加型で地域課題を可視化する仕組み「LOCAL GOOD YOKOHAMA」の構築など、横浜市のさまざまな行政活動に関わってきた。アクセンチュア 代表取締役社長の江川昌史氏は、「これまでの活動は、主に横浜市の“顕在化した地域課題”に取り組むものだった。今回の協定では、“潜在化する地域課題”を発掘して解決していくことを目指す」と語った。
ウェアラブルデバイスで介護の負担軽減
横浜市政策局 政策部政策課担当係長の関口昌幸氏によれば、横浜市はいわゆる団塊世代が多く住んでおり、今後急速に要介護人口が増加すると予想されている。さらに、女性の年代ごとの労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)が特定の年代に低下する“M字の谷”が深い傾向がある。
市では、介護と子育てが同時進行する「ダブルケア」が“M字の谷”を作る大きな要因になっているとしており、今回の協定ではデジタル技術を活用してダブルケア家庭の負担を減らすことを検証する。具体的な取り組みの1例では、市内の介護施設で、排泄を予知するウェアラブルデバイスを使って介護の負担を軽減する実証実験を行う。
小学校でロボットプログラミング教育
市内で科学やデジタル技術に強いSTEM人材を育成するための取り組みとして、これまでアクセンチュアがCSRの一環で実施してきた小中学生向けのプログラミングワークショップを、市内の小中学校の授業に導入する。第1弾として、横浜市立飯島小学校において「ドローン(無人飛行機)」を使ったロボットプログラミングの授業を12月8日から実施する予定だ。
ニート/フリーターと企業をマッチング
ニートやフリーターなど無業・不安定就労状態の若者の支援においては、「実際に企業と就労希望者をマッチングする“出口支援”が重要になる」とアクセンチュア マネジング・ディレクター オペレーション本部 インフラストラクチャーサービスグループの市川博久氏は指摘する。「ニートやフリーターをネガティブな存在ととらえるのではなく、“ナルシスト”や“アウトロー”といったポジティブな面も持つ人材に価値変換して、そのような人材と相性のよい企業を探していくことが有効だ」(市川氏)
アクセンチュアは、就職活動を途中で辞めてしまったニートやフリーター専門の就活サービス「就活アウトロー採用」や、自己愛が強すぎて就職に成功しないニート専門の就活サービス「ナルシスト採用」を運営するNPO法人をサポートしており、実際に市川氏は「就活アウトロー採用」で部下5人を採用している。
横浜市においては、今回の協定に基づき、より多くの若者に就労の機会を提供するための仕組み作りを行っていく。「例えば、“就活アウトロー採用”ではニートと企業のマッチングの成功例があるが、これを再現性のある形でシステムにしていきたい」(市川氏)