オバマ政権は「Preparing for the Future of Artificial Intelligence」(人工知能の未来に備えて)と題された、人工知能(AI)に関するレポートを公表した。本記事では、そのなかから考慮しておくべき重要なテーマを紹介する。
このレポートは、AIが複数の業界に与える影響を、雇用の減少や倫理面、偏り、建設的な結果といったさまざまな観点から考察している。
同レポートの内容は盛りだくさんであり、さまざまなサイトでも採り上げられている。そこで本記事では、同レポートのなかから、AIの進化にともなって熟考すべき重要なテーマをいくつか選び出して紹介する。
AIは人間の仕事を奪う一方で、その問題に対するソリューションともなり得る。レポートは、AIが従業員の成長を支援するとともに、最終的にはビッグデータ時代への移行を促す手助けになり得るとしている。
米国防高等研究計画局(DARPA)は現在、米海軍の新兵に対するITスキルの訓練期間を年単位から月単位に短縮するために、AIを用いて専門家と初心者のやり取りをモデル化したデジタル講師の開発プロジェクトに資金を提供している。そして同プロジェクトの評価では、デジタル講師によるIT管理者教育を実施した新兵は、筆記による知識テストと現実世界における問題解決の双方で、7〜10年の経験を有する海軍の専門家をしのぐ場合もしばしばあるという結論が導き出された。また、デジタル講師のパイロットプロジェクトに基づく予備的証拠からも、デジタル講師を用いた訓練プログラムを終えた人材は、高度な技術を必要とする職に就く可能性が高いということが示唆されている(中略)。
現在のところ、デジタル講師の開発コストは高く、出来の良いデジタル講師を開発するための反復利用可能な方法論も確立されていない。ただ、デジタル講師といったAIによるアプローチを採用する業界の興隆につながるリサーチによって、需要の高いスキルの教育を支援できるようになる可能性もある。
AI時代の到来を知る術は?レポートには、AIが汎用の知能に向け急速に進歩しているため、そのマイルストーンを推し量るのは容易ではないと記されている。ただこういったマイルストーンとしては、体系化されていない幅広い作業の完遂や、さまざまなAI手法の統合、特定の技術的な課題の解決を挙げることができる。
現時点では、AIの基礎研究の大半は教育機関や民間の研究所によって実施されており、その成果が定期的に発表されたり、研究論文として公開されている。もし競合によって民間の研究所が秘密主義に傾くのであれば、進歩を把握するのが難しくなる可能性もあり、そうなれば大衆の懸念が増す可能性もある。